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 夜の掲示板に拡散していたガーディアンの動向、それは草加市内で活動しているガーディアンだけではない。

その他にも様々な場所で活躍している動向が拡散していた事実、それは他の勢力にも影響を及ぼしているのは言うまでもないだろう。

「あの人物は、確かにそう言っていた」

 女性の部屋とは思えないような本棚に並ぶ書類の数、整理はされているが――その内容は大半がARゲームに関する資料と言える。

それだけの資料がありながら、彼女はARゲームに更なる高みを求めようとしていた。その人物の名は、ビスマルク。

プロゲーマーと呼ばれるような実力を持ち合せつつも、SNS炎上は放置できないと協力を始めた。

メイド服姿の普段では考えられないような、赤いジャージ姿の彼女は――いわゆるギャップ萌えなのかもしれない。

外出用の服は別に用意しているようだが、今は洗濯中だろう。洗濯物を乾かしているのは風呂場であり、さりげなくだが洗濯乾燥機を稼働させているようだ。



「それで構わない。デンドロビウム、改めて君に聞きたい。七つの鍵の真相を――」

「鍵ではないが、蒼流の騎士と同じようにアバターを召喚している人物に心当たりがある」

 彼女が思い出していたのは、ゲーセン内である人物が語った七つの鍵の真相だ。

デンドロビウムと名乗る人物から聞いた物だが、それはガーディアンの情報網からなのか、独自調査なのかは言わなかったのである。

「アバターを召喚? ゲームシステム的な意味なのか、それとも――本当に魔法なのか?」

「現代に魔法を持ちこむ方こそあり得ないだろう。そうだったら、日本は既にハイファンタジーの舞台として有名になっているはずだ」

 デンドロビウムが冗談交じりにスマホに表示された動画を再生し、それをビスマルクに見せた。

その内容は、蒼流の騎士とデザインは似ている様な騎士が何かを呼びだしている場面だったのである。

使用している触媒は分からないが、何か小さな駒のような物が見えた。ARアバターのガジェットキーよりは小さいだろうか?



(どちらにしても、放置していいような物ではない)

 あの時の動画で見えた物、それは将棋の駒位に小さな――実際に将棋の駒だったのかは定かではない。

小型のARガジェットキーが開発されている様な話も聞かないし、本当にARガジェットなのかの謎もある。

ビスマルクが思うのは、些細な物でも軍事転用されれば危険だと言う事だ。さすがに生物兵器の路線はないだろうが。

(バーチャルアバターのシステムを転用した無人人型兵器――それこそ小説の見過ぎか)

 ふと思いついた事があり、ビスマルクはWEB小説サイトで作品を探り始めた。

ランキング上位の作品は大抵が異世界転移や異世界転生物が多く、自分の探している様な物は――と思われたが、まさかの発見をする。

(明らかに不自然なランキング上昇――さすがに二次創作のような晒しでもないし、一体何が?)

 スマホを駆使して発見した小説、それは数日前から注目されている作品である。

題材はSNS炎上やコンテンツ流通であり、明らかに異世界転移などのような異世界舞台の作品と比べると――目立ち過ぎている気配さえするだろう。

(登場人物の名前――まさか?)

 ビスマルクは最初に目撃した登場人物の名前を見て、見覚えがあると思った。

それもそのはずだろう。ガングートと言えば、他のWEB小説でも使われている名前で、ビスマルクと同じく由来となるのは――。

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