7-5

  団長と呼ばれた層流の騎士、彼は遂に蒼流の騎士のガジェットを手に――鍵を力強く握って変形させた。

その後、変形した鍵をガジェットにスキャンさせる事で――ARアーマーを呼び出し、装着していく。

お互いに距離は数メートルほど離れているが、そのまま銃撃などで攻撃して倒しても――と思われがちだ。

「過去の栄光にすがり続ける事、それから脱却する事には否定をしない。しかし、ガーディアンのやり方は褒められたものと言えるのか?」

「ここまでやらなければ、彼らは理解しようとしない。一次創作こそ、日本のコンテンツ流通には必須なのよ」

「一次創作者を優遇し、その他は切り捨てる。まるで、WEB小説の炎上勢力と変わりない」

「まとめサイト勢力と我々は違う。圧力を使うのは他の業界でも一緒だ」

 両者ともにARアーマーを装着するまでは手出しをする気配がない。下手に手を出せば、お約束破りと思われるのだろう。

蒼流の騎士は、そこまでルールを破ろうとは考えていなかった。さすがに守るべき箇所は守ると言う事の様である。

殺人キリングでなければ、それは犯罪ではない――それが通じると思っているのか、ガーディアンは!」

 このタイミングで団長と呼ばれた事、それに加えて一連の発言の数々は蒼流の騎士にとってもプレッシャーになっていた。

鍵を持つ者を選ぶのも神経を使うのに、ここでガーディアンと対立するのは事態の混乱を意味している。

ある意味でも、彼の緊張の糸は切れたと言ってもいいような、衝撃の一言である。



「その台詞はお前が考えた作品の台詞ではないのか? 蒼流の騎士よ」

 特撮風のARアーマーを装着したガーディアンの女性は、先ほどの台詞を生み出したのが団長だと発言した。

これは予想外のブーメランが投げられたと言ってもいいだろうか?

「その通りだな。過去の作品に縛られているのは、どちらだと言うのだ――」

「何だと? どういう事だ。今は、あの作品に未練がないと言うのか?」

 蒼流の騎士は開き直っているような返事をした事で、ガーディアンの女性は驚く。

「確かに、あの作品は自分がWEB小説で様々な反応を受けた結果で生み出された。しかし、それに依存し続けるだけでは――新しい扉は開けない」

 発言後、蒼流の騎士は右腕に何かの武器を呼び出して、それを手に持つ。どうやら、蒼流の騎士の武器とは違うようだ。

明らかに原作で使ったような武器ではない外見に、ガーディアンの女性は声が出なくなったのである。

(あの武器は、明らかに作品が違う。そのような事があるのか? 武器のデータもガーディアンに――)

 完全な詰み状態にあった。自分が煽ったのも最大の原因で、事実上の自滅と言ってもいい。

ちなみに、蒼流の騎士が右手に持ったのは長さが六十センチにも満たないような県に見えるが、実は――。

「新しい扉を開く事は、こう言う事だ!」

 一度、鞭を振るう様なしぐさで右腕を動かすと――その剣は、まるで鎖のような形状の武器へと変化したのである。

蛇腹剣とも呼ばれている武器で、フィクションだからこそ扱えるような武器であるというのはネット上でも言及されていた。

 しかし、それを余裕に扱う彼は――フィクション上の人物ではない。間違いなく、ガーディアンの女性の目の前にいるリアルの人間である。

圧倒的と言えるようなスピードで、ピンポイントにガーディアンの動きを封じ、文字通りの完封でガーディアンを倒した。

蒼流の騎士の新武器を披露する為に倒されたような気配がしないでもない流れだが、それを両者とも把握している。

(そう言う事か。倒すべきは、旧世代の考え方――可能性の問題か)

 ガーディアンの女性は可能性を捨てた訳ではなかった。単純にガーディアンの指示や同調圧力等に負けていたのだろう。

ソレに反逆するかのように発言し、優越感をえていただけ――それではバズで優越に浸る炎上勢力等と同レベルだ。

「結局、今回の争いもレベルの事を言えば――イースポーツ関係で争った一件などと同じだ。争いの元となった題材が違うだけで、やっている事に変わりはない」

 蒼流の騎士も若干の後悔がある。炎上勢力がマルスを呼びだした事実を知ったあの日、それと同じ事が出来ると知ったあの日――。

結局、自分も似たような者同士だった。誰かから指摘されなければ気付かないような状態ではなく、自分で気付く事が出来たのが救いかもしれない。


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