第3話:激突する正義 マルスVSレッドカイザー

 舞風まいかぜとマルスがゲームメーカーのビルを後にし、帰宅しようとしていた。

空を見ると、時間がさほど経過した訳ではないのが分かる。ビルの一室で話をしていたのは一時間も使っていないのだろう。

「結局、あの人物にあって何をするつもりだったのか」

 マルスの言う事は正論だ。舞風が若干舞い上がってしまったのもあるだろうし、話を急いでしまった箇所はあるかもしれない。

その一方で、瀬川せがわプロデューサーも七つの鍵や浮遊大陸の一件は個人で片付けられないレベルとも語っていた。

(プロデューサーは個人や小規模レベルで片付けられないと言った。そうなると、自然と芸能事務所等が絡んでいると思われがちか)

 舞風は足を止め、スマホで情報収集を始める。この周辺には様々なARフィールドや専用施設もあり、稀にバーチャルアイドルが姿を見せることだってあるだろう。

それを踏まえて別の場所へと寄り道を考えていた。しかし、その矢先に――。

『お前達か。あの騎士の言う七つの鍵の持ち主は』

 特撮で見るようなテイストのスーツ、それにデジタル的な周囲のエフェクトを見て警戒したのは舞風の方だった。

目の前の人物はマルスと似た存在である――と感じたのかもしれない。

(この声って、まさか?)

 舞風はサイズの違いに疑問を持ちつつも、その声を聞いて正体を察した。

一方のマルスは、既に大きさが五〇センチにも満たないような光の刃を構えている。

『そちらに戦う意思はなくても、こちらには戦う理由がある』

 舞風が察した人物の正体、それを踏まえると理由はどうあれ、マルスと同様に同じ人物が召喚したのか?

しかし、そうだとすると蒼流の騎士そうりゅうのきしが敵対するように仕向けるとはおかしな話である。

(戦うしか、ないのか)

 マルスが光の刃を投げようとした瞬間、突如として姿を見せた一団があった。

舞風もこのタイミングで彼らと遭遇するのはまずいと判断し、マルスに武器を仕舞うように指示、その後にスマホで検索完了したエリアへ走るように声をかける。



 舞風が誘導した草加市内のARフィールド、いつの間にかギャラリーの数は数十人規模まで増えていた。

フィールド自体は一プレイ百円で使用出来るので、ゲームとしてプレイ開始すれば不法占拠で警察に捕まる事はないだろう。

(これはあんまりすぎる展開だわ。どうして、このタイミングで――)

 先ほどの一団、その正体がガーディアンであると判断したギャラリーが自然と集まりだしたと言うべきか。

むしろ、フェイクニュースに誘導され続けていたユーザーにとっては、本物のレッドカイザーが見られる事自体が貴重なのだろう。

この光景に関して舞風は手で頭を押さえながら、想定外の出来事に立ち尽くすしかない。

(とにかく、ガーディアンに目を付けられた以上は――)

 マルスを狙っていた相手、それはSNS上で情報こそはあってもフェイクニュースとして拡散、その一件も沈静化していたはずのレッドカイザーだったからだ。

『私の名はレッドカイザー、SNSの未来は私が守る!』

 レッドカイザーは劇中でも使用していたカイザーセイバーと言う一メートル程の光の剣を構えている。

光の剣というとファンタジーな単語に聞こえるが、要するに『ビームサーベル』系統の武器と言った方が正しいか。

それもレッドカイザーの登場するジャンルが特撮に近いテイストであり、異世界ファンタジーとは程遠いからだ。

「こっちとしても、七つの鍵を集めなくてはいけない。だからこそ、ここでは引き下がれないんだ!」

 対するマルスはシステム的な関係で剣を展開する事が出来ない。ある意味ではピンチだろう。

しかし、次の瞬間に展開したのは西洋ファンタジーには不釣り合いな銃火器だったのである。

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