TSという非常にピュアでセンセーショナルな難題を、あふれんばかりの青春と想像力で描き、あたかも目の前にその光景が浮かぶように美しく書き連ねている様は圧巻という言葉で語るにはなお惜しく、今このレビューを書いている時点で既に大作となる片鱗を見せているように思われる。本作は淡々とした主人公の語りで話が進んでいくのだが、その文調に似合わず、いやその文調のおかげなのか、適切な語彙で語られる主人公の心情は我々読者を揺り動かし、まさに自らがTSしているような錯覚を与える。また、タイトルから分かる通り、この作品には幼馴染が出てくる。この人物がまた良い役回りをしているのである。主人公の語りだけでは冗長になってしまうような場面も、幼馴染がいることでしっかりとまとめ上げられ、可憐な女子の戯れる姿をあの源氏物語よりも巧く描き出している。見ているこちらが恋してしまいそうなほどだ。さて、ここまで読んでいただいたなら、この作品の素晴らしさが分かっていただけたはず。TS好きなら是非とも読んでもらいたい一作である。