第487話

 クソッ!! 俺達は、もしかして騙されたのか?


「デグさん、背後からまたモンスターの気配が増えたみたいです!」

「モ、モンスターだらけッス?!」

「アイツら許さない……」


 現在、俺達は小型の集団から逃げ回っている。


 事の発端は一時間前に遡る。早朝に起きた俺達は、手早く食事と準備を済ませてジャングルを歩き始める。


 これまで以上に慎重に行動する為に、歩き始める前にレギュがモンスター達の足音を聞く。


「デグさん……ベムさん……ちょっとヤバイかもしれません」


 顔を青ざめたレギュは、更に驚くべき事を口にした。、


「モンスターの気配が沢山します」

「なんだと? どれくらいだ?!」

「分かりません。数が多過ぎて判断出来ません! でも、今回に関してはモンスター達は私達の事を認知している見たいです!」

「そ、それは不味いッス! は、早く逃げるッスよ!!」


 ラバの言う通りだ。俺達はまだ目視出来ないモンスター達から逃げる為に走り出す。


「レギュ、どっちから来る!?」

「色々な場所から足音が聞こえています! モンスターの足音が聴こえないのはこっちの方角だけです!」


 そう言って、レギュは先頭を走り出し、俺達は後をついていく事にした。


「ッチ、これじゃドワーフの村と逆じゃねぇーか」

「仕方無い……今はとにかく奥に行くしかない……」


 と、まぁこんな感じで現在俺達は複数の小型に追われている状況である。


「こ、こんなに沢山のモンスターが居るなんて聞いて無いッス?!」


 暫く走って逃げていたが、レギュが言うにはどんどんモンスター達が集まって来ている様だ。


 俺にはまだ見えないが、ベムが言うには結構近くまでモンスター達が迫って来ている様である。


 表情はいつもと変わらない様に見えるが、ベムの手を見ると微かに震えているのが分かる。


 それ程までにモンスターの数が多いのだろう。


「ベム……戦って逃げ切るのは無理そうか?」


 レギュとラバに聞こえない様に質問すると、ベムは再度後ろを振り向きモンスター達の方を見る。


「戦うのは絶対無理……一体でさえ怪しいのに、何十体も居る……」

「ッチ……やっぱり俺達あの二人に騙されたか」

「恐らく、騙された……」


 俺はなんて馬鹿なんだ……あの村で優しくされて、舞い上がってしまい、対して疑う事もせずにここまで来てしまった。


「デグ……今は落ち込んでいる暇じゃ無い……」

「そうだな」

「デグが不安になればその分あの子達も心配になる……しっかりして……」


 ベムの言う通り、俺が不安な顔をすればレギュとラバも不安になる。

 俺は表情を引き締めて皆んなに言い放つ。


「後ろから追って来ているモンスターを倒す事は俺達には無理だ。だから、何としてでも逃げ切る、いいな!」

「「「はい」」」

「よし、まずは隠れられる場所を探すぞ」


 今の所、モンスターも俺達の姿が見えている訳では無いので、上手くやれば隠れてやり過ごせるかもしれない。


「デグさん、あそこなんてどうッスか?」

「ダメだ、仮に見つかった場合に逃げきれねぇ」

「デグさん、あそこはどうでしょうか?」

「そこも、ダメだ」


 俺達は走りながらも隠れられそうな場所を探すが、どうも良さそうな所が無い。


「不味いぜ……どうする」


 俺は、自分を落ち着かせる為に一度状況を整理する。


 落ち着け、俺。このスピードで移動していれば距離が詰められる事はねぇ。


 後は、どこか探せる場所を探すだけだ。だが、一つ気にしなければならないのはラバの体力だ。


 俺はラバの方を見ると、まだ余裕がありそうだが、ベム同様にこの状況に恐怖を覚え身体が震えている。

 あんな状態では体力も直ぐに尽きてしまうだろう。


「早く、隠れる所を見つけねぇーと大変な事になるな」


 しかし、どんなに走ってまも風景は変わらずひたすらジャングルが続いているだけである。


 そんな時に、ベムが口を開いた。


「デグ……上に隠れよう」

「上……?」

「うん……木の上だったら、モンスターに見つからないかも……」


 確かに、どこかの茂みに隠れるよりは良いかもしれねぇ。


「ベムの意見を採用するぜッ! レギュ! ラバ!」


 俺の呼び掛けに二人が近づいて来る。


「これから、丈夫そうな木を見つけて、木の上に隠れるぞ」

「わかりました!」

「了解ッス!」

「出来るだけ大きな木がいい……」


 それから、俺達は周囲に気を配り、出来るだけ大きな木を探す。


「デグさん、あの木はどうでしょうか!」


 レギュの指した木は、確かに他の木よりも大きく立派であった。


「良くやったぞ、レギュ。あの木に隠れるぞ!」


 こうして、俺達は他の木より少し大きい木に登り息を潜めるのであった……

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