第488話
「お、多すぎるッス……」
「あぁ……こんなに居るとは思わなかったぜ……」
木の上に登り息を潜めた俺達だったが、直ぐに木が小刻みに揺れるのが分かり、下を向くとモンスターの大群が木の下を通過するのが見える。
「こ、怖いッス……けど、どうやら自分達には気が付いて無い様ッスね」
「油断は出来ないけど……どうやら大丈夫みたい……」
「間一髪でしたね。少しでも遅かったら、登る前に追い付かれていたかもしれませんでしたし」
レギュの言う通り、間一髪だったな。少しでも移動スピードが遅かったりしたら、恐らく見つかっていただろ。
ガバイに謀れてモンスターに追われた事があったが、今はそれ以上の数のモンスターが居るし、今度は俺達を守ってくれたシクさんやネークは居ない為、見つかって居たら食べられていただろうな。
「こんなにモンスターが居るなんて……聞いてなかった……」
俺達の下を通過するモンスター達は何体居るか数えられ無いほど居る。
それから、一体どれくらいの時間が経過したのだろうか想像付かないが、やっと俺達の下を通過するモンスターが居なくなり、胸を撫で下ろした。
「ふぅ……撒いたか?」
「もう、モンスター居ないし大丈夫ッスか?」
俺とラバの言葉にベムとレギュがそれぞれスキルを発動させた。
「……目視出来る範囲には居ない……」
「良かったぜ……レギュの方はどうだ?」
俺は耳を済ませたレギュの方に向く。
「ダメです。気配は消えてないで、あっちこっちでモンスターの気配がします」
クソ……ベムでは目視出来なくて、レギュで感知できるくらいの範囲には居るってことかよ。
「デグ、これからどうするつもり……?」
「そうだな。村に戻りたいと考えているが。レギュ、ドワーフの村に帰るまでの道のりにモンスターは居るか?」
ちょっと待ってくださいと言われ、待っていると、確認が終わったレギュが答える。
「デグさん、ダメです。村の方面にモンスターが居ます」
この案は使えねぇーか……
「レギュ、モンスターの気配がしない箇所はあるか?」
「やっぱり、奥に行く道だけモンスターの足音が少ないです」
「奥か……ここに来るまでも、結構奥まで来たが、これ以上奥に入って大丈夫か……?」
モンスターの気配は確かに奥の方が少ないかもしれないが、実際には奥に行けば行くほど俺達を追いかかて来るモンスターが増えて来て無いか?
「デグ、どうする……? このまま奥に行く……?」
「そうだな……。村に戻る道は塞がれちまった様だし、奥に行くしかねぇーな……」
このまま、ここに居てもいずれ食料や水が無くなり移動しないと行けなくなる。
「よし、先に進むぞ」
「分かりました!」
「りょ、了解ッス……」
「慎重に行く……」
移動スピードがかなり遅くなってしまうが、俺達は木の上をサルみたいに、木から木へと移動することにした。
「そういえば……」
ベムが思い出した様に呟く。
「モンスターには知能があると最近聞いた事がある……」
「知能ですか?」
「うん……村に来た商人が、そんな噂をしていた……」
「知能があるってどういう意味ッスか?」
どうやら、ベムが聞いた話によると、モンスターには本能のまま行動するモンスターと考えて行動するモンスターがいる様だ。
それも、考えて行動するモンスターは人間達を罠に掛ける程賢いとも言われているらしい。
「流石に嘘くせーな」
「私もそう思う……」
「モンスターが自分達みたいに考えて行動したら人間が敵わなくなるッス!」
確かにそうだぜ。モンスターに考えて行動する力があったら俺達人間は果たしてモンスターを倒す事が出来るのか……?
「あ、あの……」
すると、レギュが何かを言いたそうに口を開く。
「どうしたの……?」
「もしかしたら、ここら辺に居るモンスターも、知能があるのでは無いでしょか?」
「どういう意味ッスか?」
「私達は、モンスターの居ない方に移動していますが、それすらもモンスター達に誘導されている可能性とか無いでしょうか?」
レギュの言葉に皆がハッとする。
「レギュの言う事は一理あるかも……」
「あぁ。俺達はどんどんジャングルの奥に誘導されているかもしれねぇ」
ドワーフ達の村に戻る道は塞がれ、徐々に俺達という餌が逃げられない様にジャングルの奥へと誘導しているかもしれねぇーな……
「さ、流石に考えて過ぎじゃ無いッスか?」
「ラバの言う通り……私達の考え過ぎかもしれない……けど、頭の隅には置いといた方がいいかも……」
それからその日は一度も木を降りないで移動し、木の上で夜を明かした……
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