第457話
アトス様の作戦で姉さんがモンスターの子供達を一掃した。
「流石姉さん。やっぱり姉さんは凄い!」
姉さんの凄さを目の当たりにして、自分のことの様に嬉しい気持ちになる反面、自分の力の無さに絶望する。
「今は、そんな事よりアトス様に言われた事を実施しないと」
私は、一体何が起きているか理解出来てない先生達の所に到着する。
「先生!!」
「チ、チルか? どうしてここに……」
「助けに来ました!」
「こ、こんな危険な所まで……?」
先生は信じられないと言う様な表情を浮かべている。
そんな先生を今まで見た事無かったので、少し面白い。
いや、こんな事を考えている暇は無い。
「先生、そんな事より早く逃げましょう! 今、アトス様達が、モンスターを惹きつけています!」
「あ、あぁ!」
私の呼び掛けで、先生も頭が回転して来た様で、他の仲間達に呼び掛ける。
「皆んな、アトス様達が助けに来てくれた。今すぐ逃げるぞ!!」
先生の仲間達は、とても喜んでおり、嬉しさのあまり、涙を流している者までいる。
「まだ、油断は出来ませんので早く逃げましょう」
「あぁ、チルの言う通りだな──皆んな、行くぞ!」
私が先導して、アトス様達の方に向かおうとすると、後ろから大きな声で助けを求める者が居た。
「ま、待ってくれ!! グ、グイン……俺も助けてくれ……」
助けを求めて来た相手はトッポである。トッポは足を怪我している為、一人で私達のスピードに着いて来るのは無理だろう。
そんなトッポにリザードマン達がキレた。
「ふざけんなッ! お前、一体自分が何をしたか忘れた訳じゃ無いだろうな?!」
「そうだ。テメェーのせいで、俺の嫁はよッ!!」
次々とトッポに対して憎しみの感情をぶつける者達。
「わ、悪かった。べ、別に殺そうとは思ってなかったんだ──本当だ信じてくれ!」
「オメェーは此処でモンスター食われればいいだよ!」
「そ、それだけは勘弁してくれ!!」
僅かな時間でもこの場所に居るべきでは無いんだけど……
私は先生の顔を見る。すると、先生はトッポに近づく。
「グ、グイン……た、頼む……助けてくれ……」
「……」
「あの時は本当に悪かったよ……」
「……」
「グインさん、そんな奴置いて行って早く行きましょうよ!」
「そうだぜ!」
仲間達は見捨てるべきだと言うが先生は……
「グ、グイン……お前……?」
なんと、先生はトッポに肩を貸したのであった。
「お前がした事を許した訳では無い──ただ、始末をするなら、皆んなの目の前でしないと、村人も納得しないと思ってな」
嘘だと、私は直感で思った。こんな生きるか死ぬかの状況で、そこまで気にしている暇なんて無い筈だ。
では何故先生はトッポを助けるのか……それは親友だからだろう……
「グ、グインさん、そんな奴置いていきましょうよ」
「そ、そうだぜ!」
「ダメだ。トッポは村人の前で罰を受けるべきだ──コイツは村まで連れて帰る。お前達は自分達が生き残る事だけ集中するんだ」
そう言うと先生は私の方に顔を向けて頷く。
「チル、モタついて悪かった。先導してくれ」
「……分かりました」
先生に言われて、私は極力モンスター達にバレない様に静かに、そして迅速にアトス様達の居る場所に向かって走り出す。
モンスター達はアトス様達が上手く惹きつけてくれている為、こちらには見向きもしない。
このまま、アトス様達の所まで突き進む!
すると後ろの方で先生とトッポの会話が聞こえて来た。
「グイン……ありがとうな」
「……気にするな」
「はは、お前は相変わらずだな」
「……ここで、死ななくてもお前は、どうせ死ぬ」
「あぁ……分かっている」
二人は声をひそめながら話しているが、獣人族である私には聞こえる。
「お前は死ぬが、此処では無い。もっと相応しい死に場所は俺が用意してやる」
「はは……ありがとよ……」
聞く人によっては、先生の物言いが何を言っている分からないかもしれ無い。
モンスターに殺されるのは最も苦しい死に方の一つである──恐らく先生は親友であるトッポを、そんな死に方では無く、もっと名誉ある死に方が出来る様にとの配慮だろう。
他人からしたら、あれだけの事件を起こしといて、そんな必要があるのか? と思うかもしれないが、先生に取ってトッポはそれ程重要な存在だと言う事なんだろう。
そして私達は二十体程の小型の死角を上手い具合に移動してアトス様と合流したのであった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます