第455話
「アトス様ッ、先生が!」
「分かっている!」
グインがトッポの方に向かって、走る。
「行かせて下さいッ」
「まだだ!」
「でもッ!」
今にも飛び出そうとするチルをリガスが制する。
ロピッ……まだかッ!?
すると、俺達が乗っている木の幹にコツンと音が鳴る。
来たッ!
「チルッ! リガス!」
「「はい!」」
俺の声にチルとリガスが木から降りて、走り出す。
そして、案内役もまた全力で走り出しモンスター達の前へと躍り出た。
心の準備が出来たといっても、恐怖感が無くなる訳では無い。
案内役は震えた声でありながらも、精一杯大きな声で叫ぶ。
「おいモンスター共! ここに美味そうな獲物が居るぜ?」
案内役の声にモンスター達が一斉に身体を向ける。
それは、小型もモンスターの子供も全員だ。
「オラオラ、俺を捕まえて見ろよッ! 早く来ないと追い付けなくなるぜ?」
モンスターに果たして人間の言葉が果たして、理解出来るかは分からない。
だが、これまでの知能の高さから、案内役はモンスターが人間の言葉が理解出来ると思ったのだろう。罵詈雑言を投げまくった後、モンスターに背中を見せて逃げ出す。
案内役を追い掛けろ……
しかし、小型達は案内役の行動が何らかの罠だと直ぐに気付いたのか、追い掛けようともせずにその場に留まる。
だが、俺達の本当の目的は小型では無い。
確かに小型は案内役を追い掛けずに、その場で逃げ出す様子を伺っているだけであった。
しかし、モンスター達の子供は違った。小型達みたいに知能が発達して無いのか案内役の姿を視認した瞬間、一斉に追い掛け始めた。
その様子に慌てたのか小型が奇声を上げるが、モンスターの子供達は止まらない。
「よし、全員食いついて来たな?」
目新しい獲物、もしくは元気な獲物に目を惹きつけられたのか先程までトッポを追いかけ回してたモンスターの子供も含めて、全個体が案内役を追いかける。
その様子は圧巻であり、綺麗に列を成して追い掛ける。
よしよし……これでいい。小型も一緒になって追い掛けてくれれば完璧だったけど、モンスターの子供が全員釣れただけでも十分だ!
その光景は、俺達に取って好条件であり、有難い。
だが、モンスターの子供を全員釣れた所でこの状況を一体どうすれば解決出来るかと、普通なら考えるだろう。
パッと見て百体程は居るんじゃないかと思われるモンスターの子供達。
本来であればひたすら、逃げ続けて、グイン達から少しでも離れる事によって、皆んなを助けるくらいしか方法は無い──しかし、それだと誰か一人は犠牲に成らなければならないだろう。
「でも、そんなの嫌だよな」
誰かが犠牲になるなんて、考えたく無い。
この世界では甘い考え方だが、もし全員助かる方が良いに決まっている。
なら、どうすればいいかと考え、俺はロピを頭の中で思い浮かべる。
俺達には遠距離最強の名を持つ雷弾ことロピが居るんだ。
俺はロピの方に視線を向けると、既に準備が出来ている様子。
ロピは自身の背丈程ある大きな漆黒のスリリングショットを構えており、武器からは目を瞑ってしまう程の光を放っている。
「はは、今日はいつにも増して眩しいな。それに耳を塞ぎたく成る程うるさいな」
かなり遠くに居る筈なのに俺の耳には電気が放電する音が聞こえる。
更に、ロピが現在使用している大型のスリリングショットは、ドワーフ族のキルが作った特注製だ。
その効果は使用者のスキルランクを一つ上げるという、とんでもない効果である。
今まで、大型スリリングショットでツェーンショットを撃った事あるのは、試し撃ちの時だけだったな──あの時は電車一台が走り抜けた様に通った跡には雷弾によって丸焦げであった。
「それに、あの時は俺のサポートが無い状態だったからな……これで俺のサポートがあったら──はは、どうなるんだろうな!」
今、ロピは大型のスリリングショットを列を成して案内役を追い掛けているモンスターの子供に狙いを付けている。
一体どうなるかは、想像が付きそうだが想像したく無い。
それは、モンスターに感情、あるいは母性などがある事が分かった今、尚更である。
だが、やはり一番に優先する事は家族や友達だ。
だから、俺達は誰が相手でも容赦しない。
「……ツェーンショット!」
そして……ロピが雷弾を放った……
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