第435話
「な、な、な、な……」
「姉さんは、この中で一番役立たずって事」
普段姉のロピに揶揄われている仕返しなのか、チルはロピに対して絶対的優位に立った、この時を待っていたとらばかりにロピに向かって言葉を続ける。
「もちろん、姉さんも戦闘面ではかなり役に立つけど、今回の事を考えると、最終的には私の方が上みたい」
「そ、そんな事ないもん!! チルちゃんより私の方がお兄さんの役に立つもん!」
「残念ながら、次の場所が分からない姉さんに、勝ち目は無いよ?」
「ゔぅ……わ、わかるよ! 絶対解いて見せるよ!」
どちらが、俺の役に立つかで、言い争っている様だが、別に次の場所が分かった所で、どちらの方が優位なんて判断出来ないと思うんだけどな……
そんな事までは、今は考えられない二人は、お互いどちらが優位なのか言い争っている。
「ほっほっほ。本当に見ていて飽きませんな!」
朗らかな表情を浮かべて俺の隣に来るリガス。
「いやいや、またお前のせいで争っているんだからな……?」
「ふむ。これが面白くて、なかなか二人を揶揄うのをやめられませんな」
コイツ、チルの執事失格じゃね……?
先程まで、歩きながら喧嘩していた二人だが、とうとう歩みを止めてしまう。
「うぅ……次の場所……次の場所……」
「ご飯の事しか考えてない姉さんには絶対解けないよ?」
「次……次……次……」
「きっと、口では考えている風を装っているけど、頭の中には今日のお昼ご飯について考えているよ?」
「………………」
ロピはどうにかして、次の目的地を当てたい様で、頭を抱えながらブツブツと言いながら考える。
しかし、考えを邪魔するかの様にチルは姉の横に立って集中するロピの気を逸らしている。
「チルちゃんに関係ある所……ある所……」
「姉さん、もう諦めよ? 姉さんはバカなんだから、そんなに考えたら、頭が破裂しちゃうよ?」
「…………」
先に次の目的地を当てただけなのに、随分と姉妹の間に優劣ができた様だ。
「チルちゃん、少しあっち行ってて貰っていいかな?」
「ダメ、それは聞けない相談だね」
「ゔぅ……この時ばかりは自慢の可愛い妹が鬼に見えるよー」
それから俺達は色々話したりしながらジャングルを進む。
このまま行けば、数日以内に目的地に着くだろう。
「次の目的地……うぇーん、どこか分からないよー!」
「なら、私が姉さんより役に立つと認める?」
「嫌だよ!いくら私の可愛い妹でも、これだけは譲れないよ!」
そう言ってロピは再び目を瞑りながら、悩み始めるのであった。
ロピが悩んでいる側で、チルは何やら拳を握り、空手を練習する様な感じで正拳突きの練習などしている。
どうやら、次の目的地に着くまでに少しでも自分を高めようとしているのだろう。
「むむむむ……」
目をギュッと瞑っていたロピだったが、ふと妹が型の様な練習をしているのが目に入ったのか不思議そうに見る。
「チルちゃん、何しているのー?」
「訓練」
「でも、なんかいつもやっている様な訓練と違う様な……──ッ!?」
チルの練習を見て、ロピは何か閃いたのか、先程の難しそうな表情が一変して、いつもの笑顔になる。
「私、分かったよ!!」
「──ッ!? そんな筈ない……姉さんに分かる筈ない……」
「あはは、チルちゃん、お姉ちゃんを甘く見たらいけないよ?」
指を一本だけ伸ばし、左右に振るロピ。
「ほっほっほ。ロピ殿も次の目的地が分かったのですかな?」
「うん!」
「どこですかな?」
「ふっふっふ、それはね……」
ただ、目的地を口にすれば良いだけなのに、ロピは妹に優秀だと、いう事を見せつけたいのか、説明口調で語り出す。
「私は、いろいろ考えたんだよ!」
「……」
「チルちゃんの、馴染みのある所と聞いて、どこだろう? ってね!」
チルの方を向きながら、ロピは推理を続ける。
「最初はすこーしだけ、悩んだけど──」
「少しじゃないと思う」
「……すこーし、だけ悩んだけど! チルちゃんの行動で気がついたよ!」
ロピはビシッとチルに指を向けて言葉を発する。
「チルちゃんと関係があり、それを聞いたチルちゃんがいきなり普段やらない型の訓練を始めた! ここから導かれる場所は……リザードマンの村だよ!!」
最後にチルに向かってドヤ顔をするロピ。
「ロピ、正解だ。俺達が次に向かうのはリザードマンの村だ──そこでグイン達に一緒に戦ってくれる様に頼みにいく所だな」
「あっはっはっは! 名探偵である私に掛かればどうって事ない謎だったよ!」
チルより、大分時間が掛かった事はツッコ間ない方が良さそうだな……
それから、俺達はチルの先生であるグインが居るリザードマンの村に向かうのであった。
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