第374話

 昨日の夜は、どの様にしてラシェン王を殺害するかを話し合い、結局は城内忍び込むとしても、地形が分からない為、まずは城内の情報を集めようということになった。


 と、言っても一体どうやって城内に入るかだな……

 私達の様な奴隷を城内に入れるとも思えない。


 そんな事を考えていると、リッテが話しかけて来る。


「シク様、朝ごはんですわ」

「あぁ、ありがとう」


 私の席まで朝食を持って来てくれた様だ。


「リッテ、自分でやるぞ?」

「うふふ。いえいえシク様は座っといて下さい──身の回りのお世話は私とキャリにお任せください」

「お、お任せ下さい!」


 人間族の住処に奴隷として侵入した日から、私は二人に何もかもやって貰っているが、なんだか悪いな……


 少し、居心地の悪さを感じていると、他の者達も次々と起きて来た様で、居間にやって来る。


「ふぁー……眠いぜ……」


 半分寝ながら居間に入ってくるググガ。


「みっともない、しっかりしろ」


 弟とは違ってシャッキリしているガルル。


 二人以外にも、他の仲間達が起き出して来た。


「お? シク様の前にある料理旨そうだな!」

「ふむ──朝から食欲を刺激される匂いだ」


 二人は、席に座る──すると、リッテが二人に向かって言い放つ。


「アンタ達、何座っているのよ?」

「「え?」」

「朝食は作っといたから、後は自分達で用意しなさい」

「「……」」


 リッテは、当然でしょ! と言う様な表情をする。


「ど、どうせ一緒に食べるんだから、俺達の分も用意してくれていいだろう!」

「そ、そうだ。ググガの言う通りだ」

「アッ?」

「「自分で用意しまーす……」」


 リッテのひと睨みで二人は台所に逃げる様に向かって行く。


「うふふ、貴方達の分はテーブルに用意しといたから、席に座りなさいな」


 リッテは女性陣に向けて、満面の笑みを浮かべて話し掛ける。

 どうやら、女性に対しては私同様に料理を用意してあげていた様だ。


「ちきしょ! 傲慢な女だぜ!」

「その通りだ、俺達は副リーダーなのに納得いかん……」

「うふふ、聞こえているわよ!」

「「──ッ!?」」


 なんだかんだ、ここ最近はこんな感じである。


 すると、キャリがガルルの前まで歩いて行き、照れながら話し掛ける。


「あ、あのガルルさん……良ければ、わ、私が用意しましょうか?」

「ん? いいのか?」

「は、はい!」

「それじゃ──」

「──はーい、ストップ! うふふ、キャリダメよ?」

「え、え?」


 二人のやり取りに割り込む様にして会話に入って来るリッテ。


「こんなしょうもない男に料理なんて用意してあげる必要は無いわ」

「──ッしょ、しょうも無いだと……?」

「うふふ、アンタまさか料理は女性が作る物とか思ってないわよね?」


 リッテの言葉に若干言い淀むガルル。


「む、むぅ……そんな事は無い。俺も商人としての旅中は自分で作っていた」

「あら、そう? ならアンタも料理作りなさい──そうね……今日の夜はキャリとアンタで料理を作りなさい」

「な、なんで俺が!」

「うふふ、料理作れるんでしょ? なら見せてみなさいよ。それとも、まさか嘘だったとか言わないわよね……?」


 リッテはガルルを挑発する様な表情を浮かべる。


「だ、誰が嘘なんか!」

「そうだぜ! 兄貴の料理は絶品だぜ?!」

「なら、今日の夜頼むわよ? シク様に不味い料理なんて食べさせたらタダじゃ置かないからね?」

「言われなくても、分かっている! 俺が最高の料理をシク様に振る舞ってやろう──キャリよ、よろしく頼む」

「は、はい! 全力全身でサポートします!」


 そして、リッテはガルルとググガが見えない所で、キャリに向かってウィンクをする。

 それを見たキャリはニコリと笑い頭を下げた。


 ふむ……私は別に不味い料理でも大丈夫なんだがな……


 以前、大穴にレギュと閉じ込められてしまった時なんて、マトモな料理など無かったからな……アレに比べれば、何が出てきても問題無いと思う。


 そして、私達は朝食を食べ、準備も終わった頃に小屋の扉が叩かれカールが入ってきた。


「皆さん、おはようございまーす!」


 これから、訓練をする為か、昨日と違ってカールは防具などを身に付けていた。


 遊撃隊という事もあるのか、防具は必要最低限であり、急所を守る箇所だけしか、していなかった。


「昨日も言いましたが、これから訓練に向かいます──皆さんには俺の部隊の者達と戦って貰うので宜しく」


 そう言うとカールは私達に鎖を渡して来る。


「訓練中は外しますが基本、この小屋以外の場所では鎖の装着をしてもらうよ」


 ん……?


 カールが渡して来た鎖は首輪と手錠だけであり、足に装着させる鎖は無かった。


 これは私達にとっては都合が良い……


「それじゃ、部下も待たせているし行こうか」


 私達はカールの後を追って訓練場を目指すのであった……

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