第365話
私は扉の叩く音で目を覚ました。
「シ、シク様、朝ですが起きていますか?」
どうやら、キャリが起こしに来てくれた様だ。
外を見ると、まだ少し薄暗く完全には日が昇っていない。
「今日は気合を入れないとな……」
身体を起こし、素早く着替えを済まして部屋から出る。
「シ、シク様、おはようございます!」
「あぁ、おはよう」
「ガ、ガルルさん達、全員集まっています」
「分かった」
キャリと一緒にガルルの部屋に行くと既に全員が集まっていた。
「うふふ、シク様。おはようございます」
キャリに聴くとリッテは昨日の夜遅くに部屋に戻って来た様だ。
パッと見はいつもと変わら無いので少し安心だな。
「シク様、おはようございます」
「シク様、昨日は良く寝れたか?」
ガルルとググガ達全員に挨拶を済ませて椅子に座ると、副リーダーのガルルが口を開く。
「皆んな、今日はコロシアム当日だ。もしかしたら、今日でラシェン王を殺害する事が出来るかもしれない──だから各自自身の仕事を完璧に遂行してくれ」
「「「「「おう!!」」」」」
詳細な作戦は昨日の夜に話し合った為、私も含めて皆んな完璧に頭に入っている。
「うふふ、兄貴の方は少しだけカッコいいわね」
「は、はい! そ、そうなんですよ──ガ、ガルルさんは頼りになってカッコイイです!」
「そんなに、好きなら付き合ったら良いじゃない?」
「つ、付き合う?! そ、そんなお恐れた事、とてもじゃ無いですが無理です!」
リッテがキャリに何やら話していると、キャリの顔が真っ赤になる。
「シク様も、好きなら相手に、好きだって事を伝えるべきだと思いますよねー?」
リッテの問いに私は一瞬だけ考えで応える。
「私は誰かを好きになった事が無いからよく分からん──しかし誰かの事が好きなら伝えるべきだと思うぞ?」
「ほら、見なさい。シク様も、こう仰っているわよ?」
ニンマリとするリッテ。
そんなリッテに囃し立てられキャリも前髪の奥からチラチラとガルルの様子を伺っているが、結局は恥ずかしいのか声を掛けられ無い様だ。
「わ、私は見ているだけで満足です!」
更にキャリを揶揄うつもりなのか、近付こうと足を動かすリッテだったが──その時、扉をノックする大人部屋内に響いた。
「皆様、そろそろお時間でございます。準備してコロシアムに向かいますので一度食堂に来て下さい」
それから私達は一旦食堂に移動した。
すると、テーブルの上には鎖の首輪が十人分程置かれていた。
「プブリウス様はお優しい方なので、普段屋敷では首輪をする必要は無いと仰っていますが、外では装着して頂きます」
説明してくれた執事長の首にも鎖の首輪が付けられている。
「うふふ、また付けないと行けないのかしら……」
「しょ、しょうがないですよ……」
やはり、首輪と言うものを首に装着したくは無い。
首輪を付ける事によって、見た目から優劣を認識させられて自身が惨めな気持ちになる。
だが、そんなワガママを言っている暇でも無い為、しょうがなく装着する。
「皆さん、付け終わりましたね?」
「なぁ──今日は執事長も来るのか?」
ガルルの不躾な質問に首を頷いた。
「えぇ、私も今回は皆さんと一緒に参ります」
「一体何人でコロシアムに行く気だよ……」
「プブリウス様を含めて総勢十五人でコロシアムに向かいます」
十五人もか。
「めちゃくちゃ多いじゃねぇーか!」
「いえ、そんな事はありません──プブリウス様はこの街で五本指に入るくらいなので、これでも少ない方です」
それから、服装などを奴隷らしくすると、丁度プブリウスが食堂に登場する。
「皆さん、おはようございます──そして、シクさんもおはようございます」
食堂に入って来たプブリウスは一度獣人達の首元を確認して納得した為か首を上下に動かした。
「シクさん、すみません──貴方には鎖が似合わないのは重々承知ですが、こうしないと外に出られないのです」
プブリウスが、一つ一つ丁寧に取り付けられているかを確認する。
「おや?」
すると、リッテの所で一度止まる。
「ふふふ、リッテさん昨日の夜は、とても素敵でしたよ?」
「……」
「私があんなに責められたのは、初めてです──またよろしくお願いしますね」
「──ッ……」
何の事か分からないが、リッテの表情を見る限り、いい事では無い様だ。
その後執事長から、注意点などを聞き、コロシアムに向かうのであった。
「周りを興味深く観察するのはいいですが、目線を他の人間族達に向けるのはやめて下さいね?」
珍しさのあまり、我々獣人族を見ようと人間族が見て来るが、逆に我々獣人族が人間族を見返すと罪に問われる可能性があるので注意が必要だ。
こうして、主人であるプブリウスと執事長からの話を聞き、私達はコロシアムに到着した……
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