第348話

「お、おい隻腕よ……これはどうなっている?」


 ドワーフとエルフ達が木をある程度切り倒した後に戻って来た。


 そして、俺が発動したスキルに目を見開きながら驚いていた。


「俺も、今回初めて発動に成功したんだが、どうやら可視化出来る全体サポートぽい……?」


 俺の曖昧な返事に首を傾げている。


 い、いや、だって俺も初めての事でどんな効果があるか分から無いんだよな……


「多分、この円の中に居る味方の防御力が上がっている……はず」

「マジかよ……?」


 俺の予想について、周りで戦闘している仲間達を見る事で真実だと言う事が分かってきた……


「お、おい! なんか分からないが俺達の仲間が押し返して来たぞ?!」


 一人のドワーフが周りを見ながら大声で叫ぶ。


 その声に反応する様に俺も周りを見る。


「お、おー?! どうやら成功ぽいな!」


 スキルはしっかりと反応しており、敵側の攻撃を仲間がノーガードで受けても傷一つ付いて無かった。


「見て! 退却していくわよ!」


 エルフの一人が指を指す。

 すると、確かに人間族達が正門に向かって退却して行く所が見えた。


 ふぅ……シャレ達は、どうやら無事の様だな……


 シャレ、トラク、ニネットはどうやら無事の様で、こちらに向かって来るのが見えた。


「おい、こっちも退却していくぜ!」


 続いて、ゴブリン達も正門に向かって退却していくのが見えた。


「はは、一人だったのにギルの奴、流石だな」


 ギルも、こちらに向かって来るが、怪我の影響だろう……足取りは重く、いつ倒れてもおかしく無い状況だ。


 そんな様子を見たドワーフ達は急いでギルの方に向かっていく。


 そして、俺はチルとリガスの方を向く。


「あはは、大丈夫そうだな」


 確認すると、チル達の方も同様で、オーガ族達が退却していた。


 そして二人は直ぐにこちらに戻って来たのであった。


「二人共、怪我は無いか?」

「はい、アトス様のお陰で、なんとかなりました。ありがとうございます」

「ほっほっほ。流石アトス殿ですな──この青い円陣はアトス殿のスキルですな?」


 俺はリガスの問いにコクリと頷く。


「ふむ。これは本当に素晴らしいですな」

「はい、リガスの言う通りです──いつも通りの効果に、更には私達まで光が見えます」

「ほっほっほ。それにこの広大なスキル範囲ですからな──ますます集団戦特化になって来ましたな」


 一通り、お互いの無事を確認し合って、俺達はある方向に視線を向ける。


「よし、後は炎弾だけだ──今、ロピが一人で相手をしてくれている。助けに行こう」

「「はい」」


 俺達はロピを助ける為に、移動するが……


「──ッ!?」


 な、なんだ?


「足が動かない……?」

「アトス様、どうされましたか?」


 心配そうな表情でチルが見て来る。


「い、いや……足が動かないんだよ……」

「ど、どこかお怪我を?!」

「いや、そういう訳では……」


 地面に足が張り付いている様に動かない。


「ふむ。アトス殿、もしかしたら……」


 リガスが何やら難しそうな表情で俺の足元と青く光円陣を見る。


「恐らく、アトス様が今、発動しているスキルが原因かもしれませんな」


 確かに……リガスの言う事は合っているかもしれない。


「──ック……ど、どうする……まだ完全には退去してない」


 周りを見ると、かなりの数の敵が退去しているが、まだ完全には退却している訳では無かった。


 すると、チルが何かを決意する様に口を開いた。


「リガス」

「はい、なんでしょうか?」

「ここで、アトス様を守って」

「……チル様はどうするおつもりで?」

「私は、姉さんを助けにいく」


 俺もロピを助けたいが、この状況で、スキルを解く訳には行かない。


 だが、スキルを解かない場合はこの場を動け無いので、チルはリガスに残る様に言っているのだ。


「……アトス殿の事はお任せよ。命に換えてもお守り致します」

「うん。リガスなら安心して任せられる」


 それから、チルは俺とリガスに向かって……


「いってきます」

「ほっほっほ。お気をつけ下さい」

「分かっている」


 チルは全力で姉の元へ向かっていく。


「ほっほっほ。チル様もロピ殿も立派に成長されておりますな」

「あぁ……知らないうちにな……」


 チルの後ろ姿は直ぐに見えなくなる。


「ふむ。では私はアトス殿を全力でお守りします」

「あぁ、リガスなら俺も安心だぜ」


 そして、殆どの敵が退却していく中、ロピのいる方だけは、未だに激しい爆音が聞こえるのであった…… 



 

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