第336話
「ロピ、また来たぞ!」
「3……4……5……」
俺の言葉にロピは、こちらに飛んできている赤い炎に包まれた大木に狙いを付けた。
「フィンフショット!」
「アタック!」
ロピ放った雷弾が大木に当たり爆発した。
「よくやった!」
「えへへ、任せてよ!」
俺とロピはハイタッチしてお互いを称え合う。
「それにしても、沢山攻撃が来る様になったねー」
「あぁ、ロピが居て本当に助かったぜ……」
先程、ロピが黄色い炎に包まれた、向こうの攻撃を迎撃した瞬間から、頻繁に攻撃が来る様になった。
「──ッお、お兄さん!」
ロピが慌てた様子で俺の事を呼び、何やら遠くを指差す。
「ん?」
「あ、あれ見て!」
ロピの指先を追う様にして、視線を動かすと……
「ッ!? おいおい……勘弁してくれよ、まだ、あんなに居るのかよ……」
遠くの方では人間族が軍を成して、こちらに向かって来ている。
「あ、あんなに相手出来る……?」
ロピは戸惑いながら俺の方に顔をむけた。
「さ、流石にあの人数は……無理だろ……」
ただでさえ、今村の中に入り込んだ敵の人数でさえ、多いのに、目の前の集団が加わったらと思ったら…………
「ど、どうする?」
「手が空いている奴を集めて対処するしか無さそうだな……」
「でも、そんな手が空いている人なんて、居なそうだよ?」
周りの様子を伺うがろぴの言う通りだった。
皆んなが、誰かしらと戦っている。
や、やべぇ……どうする……
「お兄さん、また攻撃が来た!」
どうすれば良いか考えていたが、ロピの声で現実に引き戻された。
前方では、炎の光が上がる。
「1……2……3……」
どうやら、向こうの炎弾もロピ同様に直ぐには技を発動出来ないのか、何かしらを溜めている。
そして、暫くすると、また、炎に包まれた大木が、こちらに飛んで来た。
「ロピ!」
「4……5……フィンフショット!」
「アタック!」
今回も、問題無く迎撃出来たが、その分向こうは、こちらに近づいた。
そして、同じ様なやりとりを得て、ヘラデス達が門の目の前に到着した。
「な、なんで壊れた門から入って来ないんだ?」
「な、なんでだろうねー?」
炎弾を先頭に門の前で立ち止まる一同。
そして、炎弾が口を開いた。
「エルフ共、潔く降参して我々のラシェン王の元に来ないか?」
炎弾と思わしき人間の声に反応するエルフは居なかった──いや、その場にエルフ自体がいなかった。
「ッち。誰もいねぇーんじゃねぇーか?」
「恐らく、我々の仲間か奴隷達と戦っていて手が離せないのでしょう」
「──ッハン! 雑魚でも役に立つ事があるもんだな」
「ヘラデス様の仰っている通り、奴隷などは案外使えますな」
そして炎弾達は壊れた門から、堂々と村に入ってきた。
「お、お兄さん、村に入って来ちゃったよ?!」
「や、ヤバいよな……」
村の入り口から炎弾達がぞろぞろと入って来る。
そして、炎弾は周囲をグルリと見廻し、何かを探している様子である。
「あの人って……私の事探している感じなのかな……?」
「あぁ、恐らくロピ狙いだろうな……」
最初に門を破ったオーガ族よりも、更に凶悪な笑みを浮かべて、炎弾はキョロキョロと何かを探すと。
そして……
「「あ……」」
炎弾の顔が俺達の居る矢倉を見て、ピタリと顔が止まり、固定された。
そんな様子を見ていた俺とロピは慌てて身を隠す様にしゃがみ込んで炎弾からは見えない様にした。
「バレたかな……?」
「恐らくな……」
俺とロピはゆっくり、慎重に顔だけ出す。
すると、炎弾はまだこちらを見ており、ロピの姿を視認した瞬間に更に口元の口角が上がっていた。
「完全にバレちゃっているね……」
「あ、あぁ、確実にこっち来るな……」
「な、なら逃げないと」
「そうだな、せめて矢倉から降りるべきだよな
こうして、急いで矢倉から降りたが俺達を出迎えるみたいにして、目の前には炎弾が居た……
「よぅ、お前が雷弾か?」
炎弾はロピを見ながら問い掛ける。
その問いロピはビビったのか、首がもげるのでは無いかと言わんばかりに、全力で首を振る。
「ち、違うよー! 私は雷弾でも、何でもないよーだから、ここは見逃してね?」
「がはは、雷弾は面白い事を言う──その武器を見て雷弾なのは一目瞭然では無いか?」
ロピの武器は特徴的であり、背中には自分の背丈と同じくらいの真っ黒な大型スリリングショット、腰には黄色の中型スリリングショットで、胸には、小型のスリリングショットがある。
そんな特徴的な人物が他に居ないため、炎弾は直ぐにロピが雷弾だと確信した様だ。
「雷弾よ、さっきの私からの攻撃を迎撃したのは見事であった──それになんと言っても黄炎を迎撃するなんて素晴らしいの一言しか思いつかん!」
炎弾の言葉に戸惑いながらもお礼を言うロピ。
「あ、ありがとう……」
「雷弾よ私と勝負してくれ」
「い、いや……それはちょっと……」
敵である炎弾の相手にしたく無いロピは断る。
「ははは、まぁ断られても、無理矢理勝負するがな」
そう言って、炎弾は大木を持ち上げて赤い火をに纏わせるのであった……
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