第304話 発光する本 2
「お兄さん朝だよー、おはよう──ってあれ? 起きてたの?」
ロピが俺を起こしに来てくれた様だ。
「その本持ってどうしたのー? 読めないんでしょ?」
「あぁ……実はな……」
俺は昨日の夜に本が光った事をロピに話す。
「へー、なんで急に光ったんだろうね?」
「うーん、謎だな──とりあえず今日はシャレにこの本を読める者が居ないか聞いてみようと思ってな」
「この村に読める人がいればいいねー」
「あぁ」
「あ、そうだ──ご飯だよって呼びに来たんだよ!」
どうやら、ロピはご飯の用意が出来た為、俺を起こしに来た様だ。
「アトス様、朝で──姉さんに先越された……」
ショックだったのか、チルは、ややオーバーリアクション気味にその場で片膝を付く。
「ふふふ、チルちゃん──いつまでも私を寝坊助と思わない事だよ!」
ビシッと妹に対して人差し指を突きつけるロピに対して……
「悔しい……」
「あはははは、お姉ちゃんは常に妹に背中を見せるものなんだよ!」
ドヤ顔のロピと、その傍らで片膝を付き悔しそうに姉を見上げているチル。
「元気だな……」
少々枯れた感想しか出てこない俺は、そろそろ歳かね?
そんな事もありながら三人で居間に移動すると、既にテーブルにはリガスの料理が並べられていた。
「ほっほっほ。アトス殿おはようございます」
「あぁ、おはよう──今日も美味そうだな」
リガスの料理は何でも美味しいが、見た目もかなりこだわっている様で、常に食欲をそそられる。
「皆、おはよう」
すると、シャレが部屋から出てきた。
「シャレ殿、おはようございます──ご飯は出来上がっておりますぞ?」
「あぁ、リガス──いつも済まない。そして今日も美味そうだ」
シャレは自分の席に座り、俺達もそれぞれ座る。
「では、いただきまーす!」
「「「いただきます」」」
ロピの掛け声と共に一斉に食べ始める。
「そういえば、前から疑問だったんだが聞いても良いか?」
シャレが不思議そうな表情で聞いてくる。
「ん?」
「いつもご飯食べる時に言う掛け声はなんだ?」
掛け声……?
俺は最初何の事か分からなかったが、チルが教えてくれる。
「アトス様、恐らくシャレはいただきますの事を言っているんだと思います」
「あぁ……なるほど」
いただきますなんてこの世界で使わないもんな……
「この掛け声は俺が前に住んでいた所で使用してた言葉で、ご飯に対して感謝の言葉も込めて、食べる前に言う言葉だな」
「ほぅ……感謝か。それはいいな──いただきます」
シャレも俺達同様、手を合わせた後に食べ始めた。
それから、暫くは皆が黙々とリガスの作った料理を食べていく。
ある一人以外全員のお腹が膨れた頃に本に付いて俺はシャレに聞く。
「そう言えば、シャレに聞きたい事があるんだけどいいか?」
「ん、なんだ?」
「ちょっと待っててくれ」
俺は一度席を離れて自分の部屋に置いてあった本を持ってきた。
「これに書いている文字が読めなくてな──リガスでも読めないから、誰かエルフの中で知っている者はいないかと思って」
机の上に本を置く。
「ふむ、大分古そうな本だな……」
シャレは手に顎を乗せてじっくりと本の外装を見る。
「中を見せて貰っても良いか?」
「あぁ」
「それじゃ失礼して」
シャレは本をゆっくりと開き中を拝見する。
暫くの間本に目を通して、またゆっくりと本を閉じる。
「結論から言おう──私では全く分からん」
エルフ族の村長であるシャレなら、もしかしたらと思ったがやはり分からない様だ。
「だが、この文字を見た事はあるな」
「──本当か?」
「あぁ──だが思い出せん……」
こめかみ辺りに指を持っていき、何か思い出せる様にと、指で一定のリズムでこめかみを叩いている。
「シャレ、アトス様の為に頑張って思い出して」
「そうだよー、がんばれ大鎌さん!」
「──姉さんは、黙ってご飯でも食べてて!」
「──ッ!?」
チルに注意され、少し驚くロピ。
「…………」
だが直ぐに手を動かしてご飯を食べ始める。
ロピの奴、一体どんだけ食うつもりだよ……
そんなやり取りをしているとシャレがハッとする様に思い出す。
「──思い出した!」
「ふむ。どこで見たのですかな?」
「最古のエルフの家に確か、こんな風な文字が書かれている本があったな……」
「そのエルフに会えるか?」
俺の言葉にシャレは頷く。
「あぁもちろんさ──アトス達に助けて貰ってばかりだからな、直ぐに手配しよう」
そう言って、シャレは今から確認しに行くと言い家を出た。
「ふぅ……お腹一杯だよ──もう食べられない」
パンパンに膨れた腹を撫でながら幸せそうな表情のロピを見ているとチルが話しかけて来る。
「アトス様、本の件良かったですね」
「あぁ、実は昨日な──」
ロピに説明した事をチルとリガスの二人にも説明した。
「そんな事が……」
「ふむ。光出すとは不思議ですな」
俺達は改めて本をマジマジと見るがどこから見ても古びた本にしか見えなかった。
そして、その後すぐにシャレが戻って来て、午後には本を持って話を聞きに行ける様だ……
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