第280話 ロピ武器のお披露目会 2
「なんか、すげぇーワクワクして来たな」
俺達は少し開けた場所でロピの試し撃ちをする事に決めた。
「皆んな、少し離れててー」
ロピに言われた通り少し離れた位置に移動する。
「ロピ、それは?」
「これはね小型スリングショットだよ」
そう言うとロピは胸に付けていた小さいスリングショットを取り出した。
「メガネさんが言うには本当に近い距離しか飛ばないみたい」
ロピがスリングショットを構えている所を見て小型の意味が分かった。
「成る程、自分の指にゴムを引っ掛けているのか」
「そう!」
ロピは自身の親指と人差し指を90度に開き専用のゴムを装着した。
「メガネさんの説明ではこの親指と人差し指の間から小石を飛ばすんだって!」
小型スリングショットと言う名前だが土台となる木の部分を自分の指で代用してゴム部分だけを装着するって事か……確かに飛距離は出なそうだな。
「ヌルショット!」
ロピの指の間から放たれた小石が目の前の木に当たる。当たれば痛いくらいの威力はあるが、せいぜい少し相手を怯ますくらいだろう。
「今のは?」
「何もスキルを溜めないで撃っただけだよ! 近距離だと小石に電気を溜めている時間が無い場合もあるからね」
「ふむ。確かにそうですな」
「後は、一秒溜めて撃つアインスショットくらいしか、小型では撃てないって言ってた」
まぁ、近距離用だし威力は低くても手数が早い方が重要だもんな。
「次は、中型スリングショットの番!」
小型を胸に戻すと腰に装着していた中型スリングショットを取り出す。中型の色は暗めの黄色をしていた。
「また、暗めだとは言え派手な色だな」
「あはは、私もそう思う! なんかの素材を使用したらこの色になったらしいよー?」
「素材って確か特殊能力的なのが付くんだっけか?」
「そうー。この中型スリングショットには貫通力が追加されたって聞いた!」
すると、ロピは構えを取りカウントを数え始めた。
「1……2……3……4……5……」
カウントが進むに連れてロピの小石からバチバチと音が鳴る。
「フィンフショット!」
放たれた小石が少し遠い木に当たったと思ったらそのまま貫通して更に次の木にも貫通した後三本目でやっと石がめり込み止まる。
「ほっほっほ。これは以前のフィンフショットより威力が高いですな」
「それにアトス様のサポート無しでここまでの威力……姉さん凄い」
チルの言う通り俺のサポート無しでここまでの威力を出せるとはな──これが素人と武器職人の違いであり、素材の良し悪しの差でもあると改めて実感する。
「あはは、これ凄いね! 前よりも手に馴染む様な感じがするし、それに凄い貫通力!」
俺達は一度貫通された木を見る為移動した。
「ふむ。貫通した穴を見る限り中は真っ黒に焦げていますな」
「これが、小型や中型を一撃で葬れる理由か……」
「真っ黒です」
俺達四人はロピの開けた穴を覗き込むが貫通した二本共丸焦げだった。
「ロピ、これ人間に撃ったらダメだぞ?」
「あ、あはは──流石に分かっているよ」
ロピ自身も以前より更に威力が上がっている事に驚く。
「さ、さて次のメインのお披露目だよ!」
「そういえば、もう一つあったんだな」
「そうだよ! 今から試し撃ちをするのがメインなんだから」
「ほっほっほ。楽しみですな」
「次はどれくらいの威力があるのか楽しみです」
「ふふふ、任せて! きっと凄い事になるはずだよ!」
ロピは腰に手を当てて、根拠も確証も無い自信を持っている様だ。
「それじゃ、最後はコイツだー!」
背中から自身と同じ大きさの大型スリングショットを取り出した。
「か、かっけぇ……」
「ふむ。美しい色ですな」
ロピの取り出した大型スリングショットは漆黒であり、この世界で見た物体の中でも、ここまでの黒色は初めて見る。
「なんで、そんなに黒いんだ?」
「モジャモジャさんが言うにはこの世に数個しか無い程の珍しい素材を使ってくれたって言ってた!」
「モジャモジャ?」
「ふむ。ドワーフのキル殿の事ですな」
「大型スリングショットだけはドワーフ一番のキルが作る事になったんです」
成る程な……
「それで、その珍しい素材の効果は?」
「ふふふ」
ロピは勿体ぶる様に俺達三人を一度見る。
「それはこの威力を見てから教えてあげるよ! ──さぁ行くよ!」
そう言うとロピは漆黒のスリングショットを地面に突き刺した後にカウントを始める。
「1……2……3……4……5……」
恐らく中型を一撃で倒したツェーンショットを放とうとしている様だが、いつもより様子がおかしい。
「な、なぁ……なんかいつもと違くないか?」
「ふむ。そうですな──なんだか電気の溜まりがいつもより早いと言うか多いと言うか……」
以前はロピが五秒の時、ここまで電気が溜まって居なかった様に思える。
「6……7……」
そして、更にカウントが進むに連れて小石からバチバチと音が大きくなるが、既に余りにも大き過ぎて耳を塞ぐ俺達。
「こ、これ明らかにおかしくない無いか!?」
大きな声で叫ぶが、チルとリガスも耳を塞いでいる為聞こえない様だ。
「8……9……10……」
そして8秒を過ぎた辺りからロピが持っている小石から発生する光が強くなり目を開けて居るのも辛いくらいの発光が俺達を包み込む。
「ツェーンショット……」
そしてロピの大型スリングショットから放たれた小石は周りの何もかも巻き込みながら目の前の光景を一掃した……
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