第275話 ロピの新武器

「ジャーン──お兄さんこれみて!」

「ん? ──お?!」


 ロピの手にはスリングショットがあった──しかもその大きさはロピ自身と同じくらいの大きさである。


「で、でけぇ……」

「ドワーフの村で作ってくれたんだよ!」


 ロピは嬉しそうな表情をしていた。


「誰が作ったんだ?」

「ドワーフの中で一番凄い人って言ってた!」

「あぁ……ならキルか?」

「はい。アトス様の予想通りキルが姉さんの為に作りました」

「どうやら、最高級の素材をこれでもかと言う程──惜しみなく使った様ですな」

「そりゃ、すげぇーな」


 ロピの持つスリングショットは漆黒であり、ますます俺の厨二病心を掻き立てる。


 俺も欲しい……


 俺が武器に釘付けな事を確認して更にもう一つ見せてくれようとする。


「ふふふ、メガネさんにも作って貰ったんだよ?」


 すると、大きいスリングショットでは無く腰に取り付けているスリングショットを取り外して見せてくれる。


「この中くらいのスリングショットはメガネさんが再び作ってくれたの!」


 ロピの手には前に使っていた物と同じくらいの大きさのスリングショットがあり、こちらはロピの特性の雷の様に黄色い色であった。


「おー、二つ持ちなのか!!」


 なんだよ──カッケェーな。俺が更に羨ましそうに見ているのがロピにとって気分が良いのか更にある物を見せてくれる。


「ふふふ、これだけじゃ無いんだよ!」


 すると、次は更に小さいスリングショットを見せてくれた。こちらは普通の木の色合いである茶色であった。


「それは?」

「小型スリングショットって言うの! ──これは接近戦の時に使って見てはどうだって事でメガネさんが作ってくれた!」


 ほぅほぅ。ならアレか要は三つの大中小のスリングショットを状況に合わせて使用していくって事か──カッコよすぎだろ!


「ふふふ、お兄さんもこのロマンが分かる?」

「あぁ! 早速試し打ちを見せてくれよれ!」

「そう来なくちゃ──お兄さんと一緒に性能とか見たかったからまだ一度も試し打ちをしてないの!」

「おほー、ますます楽しみだ。ロピ、行くぞ!」

「ラジャー!」


 俺とロピが試し打ちに心躍らせていると、チルが俺の肩に手を置く。


「ダメです。アトス様は起きてまだ一日も経過しておりません」


 チルの雰囲気が何故か怖い……


「で、でも何処も痛く無いぞ……?」

「それは、シャレがくれた薬のお陰です。本来片腕を無くしたのに一ヶ月で治る訳が有りません」


 チルのとんでもない威圧に押し負けそうになり、俺は助けを求める様にロピに視線を向ける。


 すると、ロピは任せて! と言う様にウィンクをするとチルに話し掛ける。


「まぁまぁ、チルちゃん。お兄さんは痛くないって言っているんだ──」

「──姉さんは黙ってて!」


 チルの叫びに一発で黙らされる姉のロピはシュンとなり頭を下げる。


「わ、私はお姉ちゃんなのに……妹に怒鳴られた……妹はお姉ちゃんに逆らっちゃダメなのに……」


 ブツブツと呟いているがチルは一切気にしていない。


 クッ、ロピに任せた俺が馬鹿だった。ここは俺がビシッと父親代わりとして威厳を持って言ってやる。


「チルよくきき──」

「アトス様、いいですね──今はまだ絶対安静にして下さい!」

「……はい」


 ロピ同様、チルの叫ぶ様な注意一発で俺はゆっくりと後ろに倒れ込みベットで休む事にした。


「べ、別に娘に怒鳴られて、怖かったから諦めるわけじゃ無いから……皆んなに心配させない様に休むだけだから」


 ロピ同様、俺もブツブツと言い訳がましく呟く。


 俺とロピが落ち込んでいるのに気が付いたチルは最後にフォローして来れる。


「ア、アトス様の容体が問題無いと判断されたら、皆んなで姉さんの試し打ちに行きましょう。私も姉さんのスリングショットは気になるし」


 チルは俺にフォローした後にロピの方を向いて姉にもフォローを入れる。


「チルちゃん!」


 先程まで落ち込んでいたロピは直ぐに回復し、妹のチルを抱きしめている。


「可愛い妹だ──好きだよー!」

「うん、私も姉さんの事は好きだけどアトス様を危険な事には誘わないでね?」

「うん! 私、お兄さんが治るまで我慢する!」

「ありがとう」

「ほっほっほ。美しい姉妹愛ですな」


 チルが俺の事を心配しているのは痛い程分かるので安静にしていよう──それにしてもロピの武器はスゲェー気になるな!


 すると、部屋の扉からノックする音が聞こえた。


「私だ、シャレだが入っても良いか?」


 どうやら、この村の村長が来た様だ。恐らくロピが先程からバタバタと走ったりした為噂が伝わったのだろう。


「どうぞ」


 リガスが扉を開けると、そこにはシャレともう一人女性のエルフが居た。


「アトスが目を覚ましたと聞いてな──おぉ、アトス目が覚めたのか」


 笑顔でこちらを見て来るシャレに俺は一瞬だけ表情が緩む。


 綺麗過ぎだろ……


 エルフと言う事もあるかも知れないがシャレはエルフ族の中でも特に美しく見えるのは俺があまりエルフ族を見た事が無いからか?


 知らず知らずに又もや鼻の下が伸びていた様なので俺は慌てる。いつかの様にロピとチルに制裁されるかもしれない為直ぐに表情を引き締める。

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