第253話 日常 2

 ある日、ネーク達が自分達の家を建てたから、是非遊びに来てくれと言われたので皆んなで行く事にした。


「シク様、疲れていませんか……?」

「あぁ。問題無い」

「山神様、荷物持ちましょうか?」

「いや、問題無い」


 隣を見るとシクさんを挟む様にベムとレギュが居る。シクさんも大変そうだな……


「デグさん、ネークさん達の家楽しみッスね!」

「あぁ。この村に来てから、そんなに日も経ってないのにな」


 クソ……、俺も恩人のシクさんと話したい。だが、話そうとするとベムがいつも邪魔して来る。


 そんな、こんなで俺の家から直ぐ近くにある、獣人族スペースに到着する。


「凄いな」


 シクさんの言葉に皆が頷く。


「シクさんの言う通りだぜ……よくあの短期間でこんなに出来上がったな……」


 俺達の目の前には10棟程の小規模な住処が出来上がっていた。造り的には永住型と言うよりかは、簡易型に近い形をしているが、簡易型よりは全然しっかりした造りになっていた。


 アホみたいに口を開けて見ているとネークとコナがやって来た。


「デグもシク様も、そして皆んなもよく来たね」


 笑顔で出迎えてくれた二人に俺は質問する。


「お前ら、良くこんな短期間で家を10棟も作れたな……」

「あはは、デグ達みたいに永住型じゃ無いけどね」

「いやいや、立派なもんだ……」


 すると他の獣人族達が家から出てきた。


「お? シク様達が居るぞ」

「ネークが言ってただろ? デグ達が来るって!」

「おい、皆んな! 早く出迎えるぞ」


 笑顔で獣人達が出迎えてくれる。


「あはは、デグ達が来るって言ったら皆んなが妙にはしゃいじゃってさ」

「歓迎されるのは嬉しいが……」


 周りを見ると、皆が笑顔で手を振ったりしているし、子供達なんかはジャンプしながら手を振るのが見える。


「デグとシク様のお陰でアタシ達はこの村に住めたもんだからね。この反応は当たり前さ!」


 すると、獣人達が俺達の手を引っ張り色々と案内してくれる。


「シクさま、こっちです! きてください」

「わたしたちが、あんないします!」


 獣人族の子供達を先頭にネーク達が建てた家を見て回る。


「そして、デグ達から最初に頂いたこの大きな建物が俺達の家になった」

「二人だと大きすぎるけどね」


 コナが自分の家を見ながら苦笑いする。


「あはは、問題無いさ。直ぐに家族を増やそう」

「アンタ……」


 皆が居るというのにネークとコナが二人の世界に入りそうになるのを俺は慌てて止める。


「二人共、そういうのは俺達が帰ってから頼む」


 俺の言葉に二人は少しだけ気まずそうにして居たが、直ぐに話を変える。


「あはは、実は皆んなを出迎える為に料理を用意したから入ってくれ」


 建物に入ると、そこには決して豪勢では無いが俺達の為に用意してくれた果物などが沢山あった。


「まだ、農業も何もして無いから果物だけになってしまったけどね」


 少し申し訳無ささうにするネーク。


「さぁ、座った座った!」


 コナの掛け声に全員が席に案内される。


「レギュ、ここすわって!」

「私の隣空いているよ?」

「はい! ありがとうございます!」


 子供達に直ぐに好かれたレギュはシクさん同様に子供達の間に座り、また他の者達も各々座る。


「デグは俺達の隣に座ってくれ」


 俺は、ネークとコナの隣を勧められたので座る。


「みんな、聞いてくれ」


 全員が席に着くのを見てネークが話始める。


「今日俺達がこうして楽しく生きているのも、デグとシク様、そしてこの村の人達のお陰だ」


 ネークの言葉に、獣人達が同意する。


「デグ達は俺達に優しくしてくれるが、他の村人達は俺達獣人族をあまり良く思っていないのが現状だ」


 ネークの言葉に子供達はよく意味が分かっていないのか首を傾げているが、大人の獣人族は分かっているので、表情が曇る。


「だが、それは人間族だけでは無く俺達獣人族も同じ事だろう」


 獣人族もまた、過去に自身や友人、家族などを人間族の奴隷にされたり、酷い事されたり、殺されたりなどしている。


「お互い思う事は沢山あると思う。だが! これからは歩み寄る事が大事だ。そして、人間族であるデグがまず最初に俺達に歩み寄ってくれた」


 ネークが言っている歩み寄ったとは、恐らく村に受け入れた事だろう。


「だから、次は俺達が歩み寄る番だ。最初は邪険に扱われたり酷い事を言われたりすると思うが、めげずに歩み寄ろうと思うがどうだろうか?」


 ネークの問いに、暫く周囲は静寂に包み込まれる……しかし一人の獣人が拍手をすると、波紋が広がる様に拍手も広がった。


「そうだ! 流石俺達のリーダーだぜ!」

「確かに、俺の兄貴は人間族に殺されたが、ネークの言う通り俺達も歩み寄る必要があるよな!」

「そうさ! 人間族は嫌いだが、この村の人間族とは仲良くやっていく努力はするべきだ!」

「デグ達みたいな優しい人間族が居るのも分かったし頑張りましょう!」


 ネークの考え方に共感を持ったのか他の者達まで歩み寄る事に賛成している。


 この村の村長として、とても嬉しいし、そしてネーク達の考え方や懐の大きさに感心してしまう。


 こんなに、いい奴らなんだ……なんとしてでも村人達と仲良くなって貰いたいぜ!


 俺は少しでも早く、ここにいる獣人族の者達が村に馴染める様に全力を尽くそうと心に決める……

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