第246話 新しい村人達 2

「あ、デグさん」


 村の入り口では門番が受け入れ希望の獣人と俺達の事を待っていた。


「待たせたな」

「コイツらが村移住の希望者達です」


 人間族の門番は獣人族に見下した視線を向けていた。


 はぁ……、なんでこうも他種族を……


 内心溜息を吐きながら俺は獣人族達に近付く。

 すると、ある一人が話しかけて来る。


「アンタがココの村長さんかい?」

「あぁ。デグって言うんだ、よろしくな」

「こちらこそ、ヨロシク。アタシはコナって言うよ。そしてこっちは旦那でアタシ達のリーダーのネークだ」

「よろしく頼むよ」


 二人は笑顔で俺に握手してくる。


 姉さん女房的な雰囲気のコナと、その旦那であり物腰が優しいネークの後ろには更に獣人達が居て、総勢二十人程がこの村に移住希望の様だ。


「それで、ここにはどうして?」


 理由は知っているが念の為再度確認する為にネークに質問する。


「あぁ、噂で獣人族も住まわせてくれる村があると聞いたんだ」


 ネークはチラリとシクさんを見る。


「アタシ達の村がモンスターに襲われちまってさ。必死に逃げて来たけどその際に大分仲間も失って、自分達で一から村を作るのは無理だと判断してどこか受け入れている所を探していたのさ」


 成る程……。やはりどこ行ってもモンスターの恐怖は付き纏うものだな……


「デグ、ここでは獣人族も受け入れてくれるんだろ?」


 ネークの質問にコナを含める全ての獣人達が俺の方に視線を向ける。


「一人ずつ面談して特に問題無ければ受け入れる」


 俺の言葉を聞いた獣人達は皆が笑顔を浮かべ始め、涙ぐんでいる者までいた。


「ありがとう……」

「デグ、ありがとうな!」


 仲間を必死に守りたいと思っている二人だからこそ、ネークとコナは本当に嬉しそうに感謝する。


 それから俺はネーク達を一人ずつ面談していく。

 獣人族だからと言って何も変わる事も無く人間族と同じ個々に性格や話し方などが違うなど、それぞれ個性があった。

 

 面談した結果、皆問題無いと判断した俺は全員を受け入れる事にした。


「デグ、本当にありがとう」

「アタシ達、獣人族はこの恩を一生忘れないよ!」

「いやいや、お前ら二人共大袈裟だろ」

「いや、そんな事は無い」

「あぁ、旦那の言う通りさ」


 どうやら、モンスター達に村を襲われた時の話を聞くと、相当酷い有り様だったらしい。


「最初は俺達の村に小型が一体現れたんだ……」

「一体なら、お前達でなんとかなったんじゃないか?」

「あぁ、一体なら直ぐに討伐出来た……。だけど、おかしな事が起きた」

「おかしな事?」


 なんの事だ?


「アタシらが小型を討伐する為、選りすぐりの戦士を六人引き連れて村に近付いて来た小型を倒したんだけど、その後に怪しい男が現れた……」

「怪しいってどういう事だ?」

「まず、格好だが顔や身体を隠す為に目深にフードを被り身体のラインも隠していたから、何の種族か判断出来なかったし、男か女かすら分からなかった」


 それは確かに怪しいな……


「その怪しげな者がいきなり変な玉みたいなのを投げ付けて来たんだが、そこから絶望が始まった……」


 ネークは悔しそうな表情を浮かべる。


「その玉が当たって少し経ってから、次は小型が六体現れた」

「六体だと!?」

「あぁ……一体だけなら、直ぐにでも討伐出来たが、六体ともなると俺の村では対処が出来なかった……だから村を捨てて逃げたんだ」

「そうか……」

「そこからはデグの想像通りだと思う。俺達は必死に逃げたが、やはり子供や年寄りもいるから、逃げ切るのは難しかった……そして、子供や年寄りを守る為に戦士達が次々と犠牲になり、なんとか逃げ延びられたんだ」


 気持ちは分かる……。俺達も人間族の住処から逃げ出した時はネーク達と殆ど同じ様に犠牲者を出しながら逃げた。


「その怪しい男はどうしたんだ?」

分からない……変な玉を投げ付けて直ぐに姿を消したよ」


 その玉に何か秘密がありそうだな……


「だから、こうして受け入れた事に本当に感謝している」

「このままだとアタシ達獣人族はジャングルを彷徨って、確実にモンスターの餌になっていたからね!」


 二人は改めて俺に感謝の気持ちを言葉に表した。


「はは、気にすんな! 困った時は助け合いだぜ!」


 俺の言葉に二人は笑顔で頷く。

 すると、二人はある方向に向き近付く。


「アンタがシク様かい?」


 コナがシクさんに話し掛ける。


「そうだが?」

「アンタにもお礼が言いたい」

「俺からもお礼を言わせてくれ」

「何故だ?」


 シクさんは不思議そうに頭を傾げる。


「シク様が、この村に住んでいると噂になったからアタシ達はこの村に行く事を決めたんだよ」

「シク様の話を聞かなかったら、流石に人間族の村には近付かなかったからね」


 コナとネークはシクさんにも頭を下げる。


 するとシクの横から声を掛ける者が居た。


「私はベム、この村の副村長をしている……」

「あぁ、アタシはコナでこっちは旦那のネーク。よろしく」

「わ、私はレギュと言います!」

「自分は、ラバって言うッス!」


 ベム達も挨拶を交わして一通り自己紹介も終わった所で、ネーク達に村の説明と住む場所を案内する事にした。

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