第245話 新しい村人達
「デグさん、おはようッス」
「おー、ラバ。今日はどんな感じだ?」
今日も、ラバが俺に一日の予定を伝えてくれる為に朝から家に来た。
「今、新しい住人希望の方が来たので面談をお願いしたいッス」
「分かった。何人だ?」
「それが……」
俺が人数などの詳細な情報を聞くと、ラバの表情が曇るのを感じる。
「どうした?」
結局は言わないといけない為、ラバは話し出す。
「今回は結構人数が多くて、二十人ッス!」
「おー、いいじゃねぇーか。これで村が更に活気付くぜ」
俺が作った村も、今では結構な人数が住んでおり規模も百人に近づく勢いなので、今回の受け入れで百人を超えるだろう。
「ただ……今回の種族が人間族じゃ無くて獣人族ッス……」
ラバが何故言い辛そうにしていた理由が分かった。
「そうか……」
「どうしますか?」
「もちろん、面談して問題が無ければ受け入れる」
シクさんがこの村に来てからと言うもの、今では大分村に馴染んだ様に見える。
だが、実際はまだまだ獣人族のシクさんを良く思って無い奴らも大勢居るのが現状だ……
そんな時に、獣人族二十人か……
俺は先が思いやられる気持ちを抑える。
「俺が目指している村は全種族が平和に仲良く暮らせる村だからな!」
言葉にして、決意を呟く。
「はは、さすがデグさんッス!」
俺の言葉を聞いて、ラバも先程の暗い表情から笑顔に戻る。
「よし、面談しに行くか」
「オッス!」
二人で、村の入り口に向かっていると前方からシクさん達がやって来る。
「シクさん、どうしたんだ?」
「住人希望が来たと聞いてな」
「あぁ。それで」
恐らく、同じ獣人族の為一緒に来てくれるのだろう。
優しいぜ……
「シク様が手伝ってくれる……。デグは感謝するべき……」
「そうです! デグさんは山神様に感謝するべきです!」
ベムだけなら言い返せるがレギュまで一緒になって言ってくる為、俺はシクさんに軽く頭を下げる。
「むっ……別に感謝などいらん……」
表情からは読み取れないが少し照れた声色で否定すると入り口に向かって歩き出す。
そういえば、アトスが言っていたがシクさんは同族である獣人族を毛嫌いしているとか──やはり記憶が無くなったから平気なのか……?
シクさんは表情を一切変えない為、どう思っているか読めない。
「シク様、そろそろです……」
「山神様と同じ種族なら絶対皆んな好い人ですね!」
シクさんを挟んで歩いているベムとレギュの二人が村の入り口に溜まっている人影を見て話し出す。
「デグさん、仮に受け入れるにしても住む場所とかは考えないと大変な事になるッス」
「あぁ……とりあえずは面談して判断だな……」
俺達が歩いていると、横から声を掛けられた。
「デグさん、少々よろしいでしょうか?」
声のする方を向くと、そこには丸々とした体格を揺らす様に歩いて来たガバイが居た。
「どうした?」
ガバイの登場で誰もが嫌そうな表情を隠しもせずに浮かべる。
「これはなんの集まりですかな?」
ガバイは俺に向かって聞いている筈なのに、シクさんをまるで汚物を見る様な視線で下から上まで見た後に俺に視線を戻した。
「新しい住人希望が来たから面談しに行くんだよ」
「それは、とても良い事ですね。この村に新しい仲間が出来るのは歓迎ですよ、えぇ」
ガバイは作った様な笑顔で俺に笑い掛ける。
「ですが、それはあくまで人間に限っての話です」
そう言ってガバイはもう一度シクさんを見る。
「あぁ、ここで言う人間とは二足歩行して話すだけの存在を人間とは言いません。ましてや頭に獣の耳を付けていては……ねぇ?」
ガバイの言葉でベムが飛び掛かる様に動こうとした時にラバが止める。
「ベムさんダメっす!」
「ラバ離して……アイツはシク様を……」
「わ、分かっているッス。だけどここで手を出したら思う壺です!」
ラバの言葉にベムは悔しそうにして暴れるのを辞めた。
「山神様……なんで、ベムさんはいきなり怒り始めたんですか?」
「さぁ……私にも分からん」
二人のやり取りを聞きガバイが笑い出す。
「ハッハッハ。野蛮人の側に居ると脳まで退化する様ですな」
「それは違う……」
ベムがガバイに否定する様に呟く。
「レギュは元々そこまで脳が発達してないだけ……」
ベムの言葉にガバイは少しの間戸惑っていたが、無視する様に俺の方を向き直るが……
「山神様! 今のは分かりました。私、絶対ベムさんにバカにされたと思います!!」
少し、頬を膨らませてベムに抗議するレギュ。
「レギュは可愛い……」
ベムはレギュの頭を撫でて自分の心を落ち着かせている様に見える。
「そんな事しても許しませんよー?!」
「後で、美味しい物作って上げるね……」
「へへ、ベムさん大好きですー!」
「私も……」
簡単に丸め込められたな……
そんな様子を見ているとガバイが話し掛けて来る。
「私が言いたいのは、人間族を仲間にするのは大いに結構! ですが野蛮人共をこの村に入れるのは反対です」
「ガバイ達がここの村に入る前に言ったと思うが、ここは多種族が大勢集まって暮らせる村にしたいんだ。だから獣人族だからと言って差別はしねぇ! 面談して問題無さそうならこの村に住まわせる!」
俺の言葉に苦々しい表情を浮かべてガバイは立ち去る。
「どうなっても、知らないですよ……?」
その言葉は村の事を心配して言ってくれているのか、それとも俺に対しての脅迫なのか。
恐らく後者だな……
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