第189話 マーズの評価
「モンスターが来るぞー!」
木の上で誰かが叫ぶ。俺達は直ぐに木の上に登ったが、逃げ遅れた者は木に登る事が出来ず、モンスターに見つかってしまったようだ……。
「お、おいどうする?!」
「も、もちろん助けに行くぞ!」
モンスターは二体現れて地面にいる者達を襲い始める。
木の上から次々と降りてモンスターを討伐する為に武器を振るう者達。
「ふむ。二体ならなんとかなりそうですな」
「リガスさんの言う通り、この場はなんとかやり過ごせそうです」
マーズは戦況を見てリガスと同じ意見の様だ。今現在、フィールとトイン班は食料調達に出てしまっているが、それでも大丈夫だと判断したのだろう。
だが俺達の認識が甘かったのか、更にもう一体小型が現れた。
「お、おいもう一体現れたぞ!」
「うるせぇ、とにかく手を動かせ!」
今、この場には十人程しかいない為小型が三体現れた事により討伐適性人数を超えてしまっている……。
「これは、私達も行かないと不味いです」
そう言って、マーズも地面に降りて戦闘に参加するが、流石に三体相手となると、防御で精一杯である。
「アトス様」
「よし、俺達も参戦するぞ」
「よーし、張り切っちゃうよー!」
「では、私から参ります」
リガスが勢い良く木から降りて、その落下を利用し持っている盾で小型一体に対して殴る様に叩きつけた。
「ほっほっほ。虫っころ、これでも喰らえ」
口調とは裏腹に普段は見せない鋭い目付きに切り替える。
盾で殴られた小型は地面に叩きつけられて少し沈むが、ダメージは入って無いだろうな……
「アームズ……」
「アタック!」
続いて、リガスの後に続く様にチルは拳を固めて小型に攻撃を喰らわすと、リガスの時とは違って小型はかなり沈む。
「まだ、余裕そうですな……」
「連続でいく」
チルとリガスは地面に着地すると、再びモンスターに攻撃する為に走り出す。
「アームズ……」
チルは得意の腹部に潜り込み一撃を与える。小型は怯まず尻尾による攻撃をチルに喰らわそうと振り切るが……
「カネル!」
リガスの盾により小型の攻撃を防ぐ。そしてチルは三発目の攻撃を同じ箇所に叩き込む。
かなりフラフラしているが、やはり生命力が強いのか、小型は更に攻撃を仕掛けて来る……
「チルちゃんに、手出しはさせないよ!」
ロピはスリングショットを構えて雷弾を放つ。
「アインスショット!」
「アタック!」
小石に一秒間の電気を付与した雷弾に対して俺は赤ラインを射線上に敷く。雷弾がヒットした小型は一瞬だけ身体が硬直する。
「流石姉さん」
「ほっほっほ。頼もしいですな」
その一瞬の硬直がある事によって小型の攻撃を難なく避ける事に成功したチルは直ぐ様四発目の攻撃を小型に放つ。
かなりの威力を持った攻撃を四発も受けた小型は耐え切れずに地面に横たわる……。
よし、まずは一体討伐したな。
「ふむ。流石チル様」
「ううん、四発も殴らないと倒し切れない時点でまだまだ……」
今の戦闘を見ていた他の者達は唖然としていた。
「お、おい噂には聞いていたがここまで強いのかよ……」
「一瞬だったぞ……?」
時間にしたら一分も掛かっていない戦闘に驚きの声が上がっている様だ。
「流石、アトスさん達ですね……只者では無いと思っていましたが、ここまでとは」
誰にも聞こえない位の声でマーズが呟く。
「皆さん! アトスさん達が一体倒してくれましたから、残り二体です!」
「「「「おう!」」」」
よし、後二体ならなんとかなりそうか?
「アトス様、このまま手伝いに行ってきます」
「ほっほっほ。チル様の事はお任せを」
二人は駆け足でもう一体の方に向かっていく。
俺は、他の者達に対してアタックとガードを振りまいてサポートをしていると、色々な所から驚愕の声や困惑の声が聞こえる。
「お、おい俺ってこんなに火力あったのか?!」
「俺こそ、小型の攻撃で吹っ飛ばされたのに少し痛いぐらいで済んでいるぜ?」
俺のスキルに戸惑いながらも、戦闘に参加している者達は小型に攻撃したり防御したりと対応している。
「こ、これは……凄い……」
マーズが一人で俺の方を見ながら驚いているのが分かる。
ふふ、優秀な男は俺の凄さが分かるんだな、やっぱり。
「これをアトスさんが……? 凄い……いや、これは危険だ……」
他の者達をサポートしていると、いつの間にか小型を倒していた。
「お兄さん、これで終わりかな?」
「そうだな」
チルとリガスも戻って来る。
「おう、二人ともお疲れ」
「アトス様、いつもの如く流石です」
「ほっほっほ。アトス様のスキルはやはり人数がいればいる程効力を発揮しますな」
俺達が話していると、他の
者達も集まってきた様だ。
「お、おいアトス」
「ん?」
「さっきの戦闘で急に力が湧いてきたりしたが、お前なのか?」
信じられない体験をした様な表情をして参加者の一人が訪ねて来た。
「そうだ。俺の能力上昇でサポートした」
「の、能力上昇だと?」
俺の言葉に更に驚きが広がる。
「能力上昇って、あの弱いで有名な?」
「そう言われているな、確かに。だがその能力上昇だ」
「信じられねぇ……」
俺のスキル効果があまりにも強力だったのか、皆から何回も聞かれてしまった。しかしその後は俺が思っていた反応とはいい意味で別の反応が返ってきた。
「お前すげぇーな!」
「ほんとほんと、アトスが居れば後二体くらい出ても平気そうだったよな!」
この場にいる参加者全員が俺の事を凄いと感心したり褒めたりしてくれたのだ。
「お兄さん、よかったね!」
「やっとアトス様の凄さに気が付き始めたか、遅い……」
「ほっほっほ。集団戦でアトス殿以上に凄い者などこの世に居ないでしょうな」
何やら、少し離れた場所で三人が俺の方を見ているが、生憎と参加者に揉みくちゃにされている為助けを求める事も出来ない。
「お前だけ二つ名が変だった理由が分かったぜ!」
「だな、これは口で説明出来ねぇーな」
「あはは、だからよく分からない奴なのか」
何がおかしいのかこの場に居る三班全員が声を揃えて笑っている。
すると、マーズが近付いて来た。
「アトスさん、貴方はとんでもないスキルをお持ちですね」
「まぁ、使用するのが、かなり難しいけどな……」
「何かの本で見た事があります。能力上昇は強いがとても難しいと……」
一人で何やら納得したのか、マーズは何度も頷いている。
「成る程、どう難しいかは分かりませんが、その効果は絶大ですな……」
「世間的には弱いの代名詞だけどな」
「私もそういう認識でしたし、この場に居る全員がそうだったでしょう」
「あはは、まぁしょうがねぇーよな」
「しかし、今日で最低でもこの場にいる者達の認識は覆りましたな」
「そうだと良いけどな」
「貴方のその能力はとても強いが危険だ……」
「危険?」
「ええ、貴方一人がいれば、数の差なんて簡単にひっくり返ってしまう」
「あはは、流石に大袈裟だろ」
マーズの戯言に俺は笑い流した。
それから、俺達はフィールとトインが戻るまでに全ての住居を完成させる事が出来た……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます