第169話 班編成

「皆の者、今から、とうとう我々はモンスターが蔓延る場所を突き進む」


 リンクスの脇にいつも居る副官が俺達に向かって叫ぶ。


「ここからは、命の危険がある事を十分理解して欲しい」


 この先で兵士達はかなりの人数やられたのだろう……。


「これから五つの班に編成する」


 五つの班?


「なんで、五つに分けるのかなー?」

「ふむ。恐らくこの人数で動くのは色々大変なのでしょ」


 確かに、百の人数が一斉に移動しても戦闘で邪魔になるだけだろう。

 五つに分けるとなると、一班で二十人程になるから、仮に中型が出現しても適正討伐人数だから問題無いだろう。


「それぞれ名を上げられた者は移動してくれ」


 そこから、班編成が行われて俺達のリーダーは誰かよく分からないが兵士の一人が担当する事になった。

 また、副官には何やら強そうなドワーフ集団がつき。リンクスには、あのエルフ集団のパーティが付いた。他のチームに関しては俺達同様、一般の兵士をリーダーに置いてある。


 リンクスや副官以外は俺達のチームみたいにメンバーが種族バラバラなんだな。


「それでは皆さん、このチームのリーダーを勤めさせてもらいます。私を呼ぶ時はリーダーとお呼び下さい」


 兵士の一人が二十人の前に立ち自己紹介をした。


「ねーねー、お兄さん。私達はあの人の指示に従うの?」

「いや、従う必要は無いだろ」

「ほっほっほ。アトス殿の言う通りですな」

「必要最低限で十分だと思います」


 他のメンバーも概ね同じ意見なのか各自で作戦会議などを開いている。


 そして、リーダーからの注意事項を聞いた所、五班編成し、各班は距離を少しずつ、等間隔に開けて突き進むらしい。


「なら、進む時は他の班の戦闘も目視出来るのかな?」

「うーん、どの程度、各班が距離を開けて進むかだよな」

「ふむ。どっちにしろ他を助ける余裕があるかどうかですな」


 確かに……。どれ程モンスターが居るかも分からないしな。


「それでは皆さん出発します」


 リーダーを先頭に俺達三班、総勢二十名は歩き出した。左右を見ると相当離れた距離にリンクス班である一班と副官のニ班も歩き始めるのが辛うじて見えた。


「あ、偉そうな人と副官さんが隣に居るね」

「ふむ。位の高い二人を残りの班が挟む形にしているのでしょう」

「私達は捨て駒班なのでしょうか?」


 てか、なんでコイツらは当たり前の様に見えるんだ!?


 それとリガスが話した事は恐らく当たっていそうだ。地位の高いリンクスと副官が率いる一班とニ班を挟み込んで守るように三、四、五班がそれぞれ間に挟むような編成にされている。

 そして、チルの言う通り、一班と二班は何故か少し後方気味なので、俺達の班は何かあった時の為の捨て駒班の可能性があるな……。


「これはますます注意して挑まないとな」

「アトス殿の言う通りですな」

「いざとなったら全力で逃げましょう」

「そ、そうだよね! 報酬なんて言っている場合じゃないし」


 周りのメンバーには聞こえない様にしながら俺達は呟いた。


 それから、十分もしないうちに一班と五班の前にモンスターが現れた。


「小型だぞ!」


 誰か叫び、見てみると、リンスク班の方では、あのエルフが対峙していた。


「お、おい。エルフ共、早く片付けろ!」


 演説の時に見せた余裕ある態度はどこに行ったのか、リンクスは狼狽える様に指示を飛ばす。


「何も出来ない人間族が……」


 聞こえはしないがエルフが何かを呟いている。

 そしてエルフ達は武器を構える。


 ん……? なんだアレ……?


 エルフ達はそれぞれ剣や斧、槍、弓などを構えていたが、例のエルフだけは異様な武器を構えていた……。


 その武器は自身の身長よりも大きく、どんな者、物、モノでも苅りとれそうな形状をしていた。


 あれは大鎌か?


 エルフの持っている得物は大鎌であった、通常は死神などが所持しているイメージである。だが色白で、造形の様に美しいエルフが持つ事により、大鎌を構えているエルフは、より一層不気味に見える。


「お、おいエルフ! そんな大きい武器でちゃんと振れるんだろうな?!」


 エルフはリンクスの言葉を無視して小型に向かって走り出す。


「シャレ様!」


 大鎌を持ったエルフを追う様に他のエルフも走り出す。そして他の者達は比較的に柔らかい部位を狙って攻撃を重ねていき、シャレと呼ばれたエルフは大鎌を大きく振りかぶりってから勢いよく振り下ろした。


 す、すげぇ……


 シャレと言うエルフの攻撃は小型の硬い外装を切り裂いたのである。


「お!? エ、エルフやるでは無いか!!」


 そこからはシャレというエルフが大鎌を振り下ろす度に小型に傷が増えていき、とうとう耐え切れなくなった小型は地面に倒れ込んだ。

 すると、先程までの慌てようは何処に行ったのか拍手をしながらゆっくりと、リンクスはエルフに近付いて行く。


「いやいや、お見事。お主名前は?」

「シャレと言う」

「シャレと言うのか。うむ貴様は腕が立つ上に、それに……」


 リンクスは醜悪な笑みをこぼしながら、シャレを上から下まで、ネットリと見回す。


「シャレよ、今日の夜どうだ?」


 ニヤニヤと笑いながらシャレに問い掛けるが、完全に無視をされているようだ。


「ねーねー。お兄さん、あのエルフさん凄いよ!?」

「……凄いです」

「あ、あぁ。ほぼ一人で倒した様なもんだな」

「ふむ。見事な武器捌きでしたな」


 俺達だけでは無く三班である他のメンバーも驚いている様だ。

 そして俺達が見惚れている内にもう一つの班も小型を倒した様だ。


「案外各班バランス取れているのか?」

「その様ですな」


 そして全班は再び先を歩き出した。

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