第170話 リーダーはやり手?
大鎌を持ったエルフが小型を倒してからと言うものの、次々とモンスターが現れた。
「お兄さん、モンスター凄い現れるね」
「流石にここまでだと思ってなかったな……」
「ですが、私達の所はまだ現れてなくて運がいいです」
チルの言う通り、俺達三班の前にはまだモンスターが現れていないが時間の問題だろう。
「ふむ。あのリーダーはなかなかの者の様ですな」
「どう言う事だ?」
「モンスターが三班の前に現れない様に事前に察知して他の班に擦りつけております」
「「「え!?」」」
全然気付かなかったな……。
だが改めて思い出してみると、確かに時折変な方向に進んだりしていたが……。
「ほっほっほ。誰も気付いていませんが、あの者がリーダーだった事は我々に取ってはラッキーですな」
「リーダーさん凄い人だったんだね」
「はい。私達より気配察知が上手いなんて」
「人間族で、あそこまで気配を読めるって事はスキルか何かか?」
本来、人間族は他の種族と比べて五感がそこまで鋭く無いのでモンスターなどの気配察知は苦手だとシクに習ったな。
「ならこのままモンスターが出ないで進めるかもね!」
ロピが笑顔で言うと、奥の茂みが揺れ三班の前に小型が現れた……。
「あーあー、ロピのせいだな」
「え!?」
「姉さんのせい」
「また、このパターン!?」
「ロピ殿のせいですな」
「酷い!」
流石にモンスターが多過ぎた為リーダーでも避ける事が出来なかったらしい。
三班はモンスターと遭遇するのは初めての為参加者の体力はまだ有り余っている。
「よっしゃ! 俺が手柄を上げてやるぜ」
「まてまて、お前だけ良いカッコさせねぇーよ!」
十人程の参加者が小型に向かって飛び出す。
「俺達の出番は無さそうだな」
「この先どこまで進むか分かりませんからな。体力は出来るだけ温存しておいた方が良いでしょう」
俺とリガスが話していると、チルがロピの方を見つめて呟く。
「姉さんは、もう喋らないで!」
「チ、チルチャン?」
「姉さんは黙ってた方がいい」
「そんな酷い事言わないでよー」
ロピはチルに抱き着き涙目になっている……。
「二人共、集中しなさい」
「「はい」」
「ほっほっほ。この先は更にモンスターが出そうですしな」
俺達が話している内に小型は討伐されていた。
「リーダー見ていてくれたか!?」
「俺が一番活躍したよな? 見ててくれたか!?」
報酬の為なのか必死にリーダーに向かってアピールする者達。
「えぇ。しっかりと見ていました。ですが報酬の分け前に関しては我々は一切関与しませんので、参加者様達でお決め下さい」
それだけ言うとリーダーは絶え間なく辺りを確認して、再び歩き出した。
他の班は出発してから既に五体程出現している様だから、俺達三班のリーダーがどれ程優秀なのか分かるな……。
だが、その事を理解してない者も居た。
「おい、なんで俺達の班だけモンスター出て来ねぇーんだよ!」
「これじゃ、報酬の分け前が減っちまうぜ」
「他の班なんて五体くらい倒したらしいぞ!」
「やべぇーな。俺達はまだ一体だけだし……」
参加者の会話を聞いてもリーダーは一切気にせず絶え間なく辺りを確認しながら慎重に進んでいる。
それから日が沈み野宿する事になった……。
「なぁリーダーさんよ。今日でどれくらい進んだんだ?」
「まだ、全然進んでいないですね」
「前はどれくらい行ったんだ?」
「前回は三日目で進むのを断念しました」
リーダーは暗い表情を浮かべる。
「心配するな。俺達は強いから余裕だって!」
参加者の一人がリーダーの背中をバシバシ叩き元気付けている様だ。
「はは、ありがとうございます」
リーダーは苦笑いしながらお礼を言う。
そして、俺は気になる事を教えて貰う為リーダーの周りに誰も居なくなった所を見計らい話し掛ける。
「リーダー、今良いか?」
「えぇ。どうされましたか?」
「今日はリーダーのお陰でモンスターの遭遇が少なくて助かったよ」
まずはお礼を言うとリーダーは驚いた顔をした。
「変な方向とかに偶に進んだりしてたのはモンスターと遭遇しないようにだろ?」
「気付いていたのですね」
本当はリガスが気が付いた事だが黙っとこう。
「前回は三日目に断念したと言っていたが、その時点で全体のどれくらい進んでいたんだ?」
「……」
言い辛い質問だったのかリーダーは黙り込んでしまう。
だが、その反応で全然進んで居なかった事を理解してしまった。
「ちにみに、リーダーの考えではこのまま行けば目的地まで行けると思っているのか?」
「……正直言って、全く予想が出来ません……」
小さい声ではあったがしっかりと応えてくれる。
「確かに人数は多いですから、前回よりは進めると思っています。ですがその先で一体どれくらいのモンスターが現れるか未知数なので全く分からないんですよ……」
これは……無理そうだな……。
「あの偉そうなリンクスって男の班と副官の班以外は捨て駒班か?」
「──ッ!?」
そして再びリーダーは驚いた表情で俺の事を見る。そして苦笑いしながら言う。
「はは……貴方は凄いですね」
「俺のパーティには有能な者が多いからな」
「それは頼もしい……」
「何かあった際は他の班が囮役って事か」
「確かに、そう言う命令はされていますが、安心して下さい。私は全力で三班が生きて帰れる様に立ち回るつもりです!」
リーダーの瞳は今までで一番力の入ったものであった。
「分かった。リーダーの事を今は信じよう」
「ありがとうございます」
リーダーは安堵したのか軽く胸をなでおろした。
「だけど、少しでも不満や怪しいと思ったら俺のパーティは離脱して逃げさせて貰うぜ?」
「そうならない様に精一杯努力します」
ここまで奥に来てしまったら、俺達四人で戻るのは危険なので、単独で逃げる気は無いが、念の為変な行動をしたら戦力が減るという事を知らせる為に言っとく。
「なら俺は戻る。リーダーも何かあれば俺にも教えてくれ」
「分かりました」
こうして、一日目が終わった……。
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