第121話 ロピの武器

 朝日が昇り始めた時間に俺達はロピに起こされた。ロピは既に準備万端で俺達を急かしてくる。


「お兄さん、チルちゃん早く! もう行くよ?」

「ほっほっほ。ロピ殿早いですな」


 そう言っているリガスもロピ同様準備が整っているのか、朝ご飯の準備まで終わらせており机には既に全員分のご飯が並べてある。


「ふっふ! 当たり前だよ魔族さん。今日でやっと私の武器になる材料が揃うんだからね!」

「ほっほっほ。そうですな」


 それから俺は眠い目を擦りながら準備する。その横ではまだ完全に目が覚めて居ないチルの着替えをロピが手伝っていた。


「チルちゃん、次はこっちに足を入れて」

「うん」

「イイ子だねー! なら次はこっち」

「うん」


 そこまで急ぐ必要は全然無いのだがロピ自身が早く手に入れたい為朝日が出るタイミングで出発する事になった。俺とチルも準備が完了し、全員で朝ご飯を食べてから出発する事にする。


「よーし、ジャングルに行くぞー!」

「「「おー!」」」

「私の武器を見たいかー?」

「「「おー!」」」

「私に付いてコーイ!」

「「「おー!」」」


 そう言ってロピが肩で風を切るように堂々と進んで行く。


「ロピ殿、進むべき道は逆ですな」

「!?」


 ロピは恥ずかしそうに顔を赤らめて逆の道を歩き始める。


「リガス、そういう時は分かってても言わないの!」

「ほっほっほ。かしこまりました」

「私にコッソリ教えてくれれば、姉さんを軌動修正するから」

「そこ! 私に聞こえる様に相談しない! チルちゃん、そんなフォローはお姉ちゃん嬉しくないよ!?」

「そうなの?」

「ほっほっほ。姉としての意地でございましょう」

「姉さんって大変なんだね」

「二人ともうるさーい!!」


 何やっているんだあの三人は……。俺は辺りを見回すがどの木材も立派でどれを材料にしても良いとさえ思ってしまうな。


「お兄さんどの木を材料にするの?」

「うーん、改めて見るとどの木も立派だから、どれでもいいぞ?」

「えー? そんな適当で平気?」

「大丈夫だ。後はロピが選びな」

「私が!?」

「だって、ロピが使う武器になるんだし」

「そうだよね……」


 そう言うとロピはキョロキョロと周りを見て回る。だがロピから見ても、どの木も立派に見えるらしくて選べないでいる。


「うー。どれにするか迷うー」

「姉さんの好きなのにするべき」

「でもでも、チルちゃんこんなにいっぱい木があるんだよ?」


 チルも改めて周りを見る。


「どれでもイイと思うよ?」

「チルちゃん! そんな適当に言わないでー」


 ロピはチルの襟首を持って大きく揺さぶる。そして更に奥の道を進み探す事にした。悩みに悩みロピが出した結論は人の手が入って居ない所程良い木があるはずだと言う事で俺達は険しそうな道を敢えて進む事にした。


「おい、ロピ流石にこんなに奥に行く必要ないんじゃないか?」

「ある! お兄さんは甘いよ!」

「どうせなら最高の武器作りたいもんね」

「流石チルちゃんだよ! よく分かっている」


 ロピは両手を組みウンウンと頷いている。気持ちは分かるが流石に険し過ぎてキツくなってきたぞ……。


 すると、急にチルが険しい表情になり、声を上げる。


「アトス様モンスターの気配です!」

「えー、まだ私が強化されてないよ!」

「ふむ。どうされますか?」

「いや、普通に逃げようよ」

「ですが、今向かっている場所の先なので逃げる事になると……」

「えー、ダメダメこのまま進みたい!」


 ロピは俺に懇願する様な眼差しで見てくる。


「お兄さん、私達ならモンスターなんて余裕だよ! ッイタイ!」

「油断禁物だ」

「うー。だって……」


 気持ちは分かるけど危なく無いか……?


「ほっほっほ。アトス殿実は試したい事があるので出来れば私は戦いたいです」

「アトス様私も先生に鍛えて貰いどれ程強くなったか試して見たいです!」

「チルちゃん、魔族さん……」


 はぁ……。俺も含めてなんだかんだ皆んなロピには甘いな。


「分かった……」

「ほんと!? お兄さん大好き!」


 ロピが抱きついて来る。


「!? アトス様、やはり危ないので止めましょう」

「チルちゃん酷い!!」

「姉さん、アトス様にくっ付かないでっていつも言ってるでしょ!」


 チルがロピを引き剥がしに掛かる。


「うー。チルちゃんやーめーてー」

「姉さんが離れれば済むこと!」


 俺は二人を引き剥がす。


「モンスター倒すなら真面目になりなさい」

「「ごめんなさい」」


 それから、俺達はモンスターが居る場所に近づく。足音や気配を極力消し近づくがやはりモンスターも気配察知が出来るらしくて気付かれる。


「ふむ。モンスターに気付かれましたな」

「えー。まだ姿すら見えてないのに?」

「モンスターの中には敏感なのもいるんだね」

「とりあえず戦闘準備だな」

「「「はい」」」


 俺達はより一層気を引き締めてモンスターに近づく。姿自体はまだ見えないが距離にしたら相当近い。


「アトス様、いつも通り私とリガスでモンスターに突っ込みます」

「チル様の事はお任せ下さい」

「分かった。サポートは任せてくれ」


 そして俺達はモンスターの姿が見える場所まで移動する。するとロピが小さい声だが力のある声で話し出す。


「私、あの木がいい!!」


 ロピが指を指した先を見ると、モンスターの近くに周りの木とは違う色をした木が一本生えて居た。


「なんだあれ?」

「ふむ。私も見たことありませんな」

「赤茶色?」


 チルが言った様に木の色は赤と茶色が混じった色をしている。


「私あの木にする!」

「ほっほっほ。ではロピ殿の為にモンスターを倒しますか」

「「「おう!」」」


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