第120話 ロピの希望

 しばらく待っているとガルルが戻って来た。両手で小さめな箱を持っている。


「お待たせしました」


 そう言って取り出したのは俺がリガスに頼んでいた代物だ!


「おー! これこれ!」


 俺はその代物を触ったり叩いたり持ったりなど色々試していた。


「おい、クソ人間! 商品をそんなに触るんじゃねぇーよ!」

「あ、使えない方の商人さんがなんか言っている」

「なんだと!?」

「べー」


 ロピ達が何やら騒いでいるが今はそれどころじゃ無いな。俺がロピの為に作ろうとしている武器にはコイツが必要になる。だが実際に前世では気軽に手に入る代物だったがこの世界では作れるか微妙だった。なのでリガスに大体の特徴を伝えると同じ様な物があると聞いたので、もしかして作れるかと思い探し回ったが、やっと見つかった……。


「お兄さんどう?」

「あぁ。多分大丈夫だと思う」

「よーし! そしたらこんな場所早く離れよう」

「お前失礼だな……」

「だって、獣人族ってうるさいんだもん!」


 いやいや、お前も獣人族だからね?


「ガルル、この材料を売ってくれ」

「勿論。ですが今回、代金は要りません」

「「「え?」」」


 俺とロピだけでは無くググガまでが驚いた顔をする。


「あ、兄貴流石に金は取ろうぜ」

「いや、今回は全面的に俺達の勘違いから始まった訳だし貰うわけにはいかん」

「ありがとうー!」

「う、うむ」


 ロピは最高の笑顔でガルルにお礼を言う。こっちとしては大してお金など持って無いので助かる。


「どっかの獣人商人とは大違い」

「おい、なんでこっちを見やがる」

「別にー」

「これに関しては商人として俺が正しいからな! その材料結構高いんだからな」


 今回の材料は南部でしか手に入らないと聞く。実際には他の場所にもあるかもしれないが、リガスは生きてきて見た事が無いと言っていた。


「ガルルいいのか?」

「えぇ。その代わりと言ってはアレですが今回の件は許してもらいたい」

「勿論だ、今は全く気にして無い。なぁロピ?」

「うん! 商人さん、こんな高価な物をありがとう!」


 俺とロピは自分達の寝床に戻る事にした。ロピは少しずつだが自分の武器になる材料が集まって来たのが嬉しいらしく、ニコニコ鼻歌を歌いながら歩いている。


「お兄さん、いつ完成しそうー?」

「うーん、後は武器の土台作りとかだけだな」

「木を使うんだっけ?」

「そうだな。そっちは明日かな」

「えー」


 ロピ的には直ぐにでも作りたかったのか口を膨らませて抗議してくる。


「今から探しに行こうよ」

「もう、大分暗くなって来たからだーめ」

「ケチー!」


 先程までの上機嫌ぶりが嘘の様に次は不満そうな目を先に向けて歩いている。だがロピの手はしっかりと俺の手を握っている。それが何故が可笑しくて俺は笑ってしまう。


「ん? なんで笑っているの! 私は怒っているの!」

「すまんすまん」

「むー!」


 ゆっくりと歩いていてもそこまで広くない休憩所なので直ぐに着いた。


「アトス様、姉さんお帰りなさい」

「チルちゃーん!」

「?」


 ロピがチルに抱き着いた。そしてチルはそれを受け入れ抱き締めていた。


「チルちゃん、材料あったの!」

「良かったね」

「うん! 後は明日土台になる木を見つける為にジャングルで探しまくるよー」


 ロピは力こぶを作っている。どうやら頑張る事を表しているらしい。俺はそんな様子を少し離れた場所で見ていたらリガスが話しかけて来た。


「ほっほっほ。アトス殿見つかったのですか?」

「あぁ。なんと昨日絡んで来た獣人の商人達が持っていたよ」

「ふむ。なかなか面白い展開ですな」

「あそこでチルを止めといて良かった」

「ほっほっほ」


 チルのやつ本気であの二人を火炙りにしようとしていたからな。


「それでロピ殿の武器は作れそうなんです?」

「大丈夫そうだ。後は明日土台になる木を探すだけだな」

「そうしましたら、ジャングルに入るので明日は全員で行動の方が良さそうですな」


 これで近々ロピの武器が完成するだろう。後はその武器でロピがどれくらい強くなれるかだな。まぁ武器を変えただけで劇的に強くなれるとは思わないけど今よりは強くなれると思う。


「チルちゃん明日はジャングルだよー」

「おー」

「私も強くなるよー」

「おー。でも姉さんは私が守るよ?」

「なんて、可愛い妹なの!」


 再度ロピは妹を抱きしめる。チルも姉に抱き締められて満更でも無いのか笑っている。


「お兄さん明日はいつから出発?」

「ほっほっほ。気が早いですなー」

「姉さんは楽しみなんだよ」

「うん!」

「なら、朝早くから行くか?」

「「いくー!」」

「ほっほっほ。では明日の朝ご飯は早めに準備ですな」


 それからは、チルの訓練をロピが手伝っている。やはり組手になると、チルの方が一歩も二歩も上手の為、直ぐ転ばされたりしている。


「チルも大分強くなったよな」

「ふむ。そうですな」


 何故かリガスはチルの組手の様子を見て歯切れの悪い回答をした。


「最初の頃なんてロピと変わらなかったと思うんだけどな」

「スキルも近接よりですし」

「確かにな。ロピは遠距離タイプのスキルだよな」

「ロピ殿のスキルは使い方がなかなか難しいですな。ですがアトス殿が考えた武器ならピッタリです」

「ロピの為に頑張らないとな!」

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