第100話 ガバイの目的とは……?
「デグさん今日はどうしますか?」
「ガバイからの報告がある日だな」
「水路の件ですかね!」
「あぁ。中間報告するとか言っていたな」
ガバイに水路を任せる事になってから一週間程経過した。村でガバイ達を村に置いとくのに反対と言う意見が多かったのに水路作りを任せていいのかと疑問に思う者が多く、結局は村の利便性を優先して任せる事になった。
その事を村人達に話すと、やはり難色を示す者達が多数だった。だが村には老人も居るので先の事を考えたりすると、やはり水路は魅力的な為なんとか同意を求める事に成功した。
「どんな感じになっているんですかね?」
「さぁな。これで全然出来てなかったら……」
「それはマズイっすよ。ただでさえ村人達はガバイ達の事嫌っているんですから!」
「だよな……」
ガバイ達は一日の大半を水路の為に働いてくれては居るが、夜になると食事などで村人達と接する機会がある。その時にガバイ達の息子である、サットとマットが村の若い女の子達にちょっかいを掛けているらしい。
村の男達が何度か注意をしたが、全然反省していないらしくてその場では不遜な態度ながらも頭を下げるらしいが少ししたらまた何人かの女の子に声をかけるの繰り返しの様だ。
だが面白い事が一つだけある。それはサットとマットの二人が特に気に入っている女の子が居ると聞いた俺はその女の子が心配になり誰かを聞いたら、なんとベムだった。俺はそれを聞いてその場で笑い転げてしまった。そしてベムの所に飛ぶように向かいバカにしたら顔面に二つ程青い痣が出来て俺は村人達にバカにされた……。
「それにしても、サットもマットも許せねぇっす!」
「お? あいつらが口説いた中に好きな奴でもいたのか?」
「い、いやいや。そんな人はいないっす!」
「そんな事言わずに教えてくれよー」
「む、無理っす!」
ガバイは三人では労働力が足りないので村人達を三人程借りたいと言ってきた。誰もがガバイ達と一緒に作業をしたくないと言って拒否していたが、それだと水路が完成しない為一人ずつ説得して村人の男達が持ち回りでガバイ達の手伝いをすると決まった。
「自分も手伝いましたが何をしているのかサッパリでしたっす」
「何したんだ?」
「土を運んだりとかしかしてないので実際の現場は見せてくれなかったっす」
他に手伝いをしていた者からも聞いたが、概ね同じ事を言っていた。ガバイに大量の土を運んでくれと頼まれて日が暮れるまでひたすら土を運んでいたらしくて、実際その土が出たであろう場所は一度も見た事無いらしい。
「あいつらやっぱ怪しいっすよ!」
「まぁな……。だが今日中間報告してくれるらしいから、その結果次第だな」
「絶対進んでないっす!」
どうやら、こいつはガバイ達の事を他の村人以上に良くは思ってないらしい。そんな事を話し合っているとガバイ達がいる所まで到着した。
「これはデグさんいらっしゃいませ」
「おう。水路の報告を聞きに来たが大丈夫か?」
「ええ。こちらにお入り下さい」
ガバイに通されて初めてガバイ達のテントの中に入った。そして入って驚いたのが中がとても広い上に暖かいのだ。
「あったけ」
「えぇ。私どもの財産なので立派なテントでしょー」
「そして広いな」
なんとテント内にはガバイ達三人のそれぞれの部屋があったのだ。俺も含めて村人達が住む建物でこんなに広い場所に住んでいる奴は居ないし、そしてテントな筈なのに俺達の誰よりも立派な所に住んでいる。
「こんな立派なら家なんていらねぇな……」
「ははは。デグさんは冗談が上手いですね。こんな所には一生住めないですよ」
どうやらガバイは本気でそう思っているのかとても可笑しそうに笑っている。少し話していると息子のサット、マットも席に着いて話す場が整った。
「それでは、ここ一週間の進捗報告になります」
「おう」
ガバイが何やら図などが記載されている紙を渡してくれる。
「これが今の進捗状態です。この川から大体これくらいまで掘り進めました」
ガバイの説明を見ていると、とても六人で掘ったスピードとは考えられない早さで水路が出来上がってきている。
「六人でこんなに?」
「えぇ。これが私の得意とする事です」
「いや、とても立派な技能だな」
「恐れ入ります」
この調子で行けば半年から一年以内には水路が完成するな。
「この調子で頑張ってくれ」
「えぇ、もちろんです。そこでデグさんにお願いがあります」
「ん?」
「労働力をもう少し増やす事は出来ないでしょうか?」
「何人くらいだ?」
「もう三人ほど。そうすれば更に早く水路を完成させる事が出来ます」
「うーん。確かにとても魅力的だが他に人数を入れる余裕がこの村には無いんだ」
「そうですか……。では、次この村に訪ねて来た者達は優先的に水路の方に回して頂く事は可能ですか?」
それなら今の労働力が減るわけでは無いしいいか。
「それなら構わない」
「ありがとうございます。それでは次の報告は一ヶ月後になりますので」
「分かった」
こうして、中間報告が終わり席を立とうとした時に息子達が話しかけて来た。
「親父、話し合い終わったか?」
「あぁ。終わった」
「オッサン! ベムちゃんを俺達の作業に参加させてくれよ」
「それゃ良い考えだ。ベムちゃんには力仕事させないからよ!」
コイツらまた俺の事をオッサンと……。俺はサット、マットにまだ若いと言ってやろうかと考えていると横から急に会話に参加して来た者が居た。
「そんなのダメに決まっているっす!」
「あ? お前誰だよ?」
「自分はデグさんのサポートをしている者っす」
「なんで、お前がそんな事決めるんだ?」
「ベムさんをお前達のいる所に寄越す訳無いっす!」
「あ? なんでだよ?」
「ベムさんに何するか分かんないし危険っす」
なるほど。コイツベムの事好きだな? あんな奴のどこが良いか分からないがここはサポートしてやるか。俺的にはベムがコイツらの所に行くのは面白そうだからアリだが。
「まぁ、お前ら落ち着け。ベムはこの村の副村長的な立場だから水路の件には関われねぇ」
「デグさん、うちの息子達が申し訳ないです」
本当に悪いとは思っていないのだろうけど、ガバイは最後に申し訳無さそうに謝り出す。
「いや、構わない。それと村の女の子達にちょっかいを掛けるの止めろ」
「「!?」」
俺は少しだけ殺気を出して二人に注意する。これくらいしとけば少しの間は収まると思っての行動だ。
「その件も息子達に言って聞かせます」
「頼んだ。それじゃ、俺達は戻る」
「えぇ。本日はありがとうございました」
「いや、こちらこそ。この調子で水路の件は頼む」
「お任せ下さい」
そして俺達はガバイ達のテントを出た。息子達も含めて外まで見送ってくれたがサットとマットは俺達に殺気を含んだ目付きで睨みつけていた。
「いやー、デグさんマジでカッコいいっす!」
「お前もしっかりとベムの事守ったじゃねぇーか」
「え、え!? いやいや自分なんて押し負けていたっす……」
「そんな事ねぇよ。あのバカ息子二人に対して負けてなかったぜ?」
「そうっすか?」
「あぁ」
ベムの事について突いてやろうかと思ったが、ここは茶化さないでおこう。
「よし、この事を他の村人にも伝えに行くぞ」
「ハイっす!!」
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