第80話 魔族の助太刀
「ディング、何故小型に集中的に狙われている?」
「分からん!」
ディング達に合流してからは、再びその場で止まりオーク達は戦闘を開始した。
「お兄さん、どうする?」
「ロピはスキル使用できる石を集めるんだ」
「分かった!」
ロピは、意識を小型に向けながらも地面に落ちている小石を集め始める。
それにしても、どうする……?
俺のスキルで対処出来るのか?
「とりあえず、サポートしてみるか」
俺はディングやオークの動きに合わせて、青いラインを合わせる。
「ガード!!」
小型の尻尾による攻撃をモロに喰らいそうなオークに対してスキルを発動させたが、何故かスキルの効果が反映されていない。
「!? なんでだ?」
確かに、青のラインの上にオークが居るのにオークの防御が上がっていない。
そして、尻尾による攻撃がモロに当たった一人のオークは、吹っ飛ばされて地面に倒れこむ。起き上がろうとしているが、当たりどころが悪かったのか起き上がる事が出来ない様だ。
「お兄さん、拾ってきたよ!」
「……」
「ど、どうしたの?」
ロピは俺の焦りを感じたのか心配そうに聞いてくる。
……ロピに心配させてはダメだな。
「いや、何でもない! よし、早速だがロピのスキルを小型に試してみよう」
「うん!!」
オーク達は連携の取れたコンビネーションにて先程怪我したオークを庇いながら戦闘を継続している。
「準備出来たよ!」
「よし、いけ!」
「いっくよーー!」
ロピは握っている石に対してスキルを発動させた。
「雷付与!」
石からバチバチと音が鳴り始めた。アレを触って俺は意識を刈り取られたからな……。
「よいしょ!!」
ロピが10メートル離れた位置にいる小型に向けて雷付与を施した石を投げつけた。
小型に当たり電気が走る。そして小型は一瞬だけ動きを止めたが直ぐに動き出した。
「お兄さーん、全く効いてないよ……」
確かに小型には何も効いてないな……。
そして、何故か小型はこちらに向かってくる。先程までディングの事を執拗に追い回していた筈なのに……。
「お兄さん! 小型が来るよ!」
「あぁ! 避けるぞ」
小型は大きい音と振動を発しながら向かってくる。
そして俺達に体当たりをして来るが、流石に直線的な攻撃の為、日頃の訓練をしている俺達は、難なく避ける事が出来た。
だが、一つ誤算があった……。
「なんでロピの方を狙っているんだ!?」
小型は先程のディングと同様、次はロピを執拗に狙う様になった。
「!? ヤバイ!」
ロピが足を滑らせ体勢が崩れている。そこに小型が追撃の体当たりのモーションに入る。
「クソッ! 次は発動してくれよ!」
俺はロピの下に再度青のラインを敷く。
「ガード!!」
スキル発動と同時くらいに小型がロピに体当たりをするが、どうやらスキルが発動したらしく、吹っ飛ばされたがロピは直ぐに起き上がった所を見ると、無事らしい。
「お兄さん、ありがとう!!」
「大丈夫か!?」
「うん! 衝撃が凄くて痛いけど、なんとか」
「ふぅ……」
いくら、Sランクでもノーダメージとはいかないか……。
そして、小型は次にロピから俺に標的を変えたらしくて、俺に向かってくる。
「──ッ次は俺か!?」
……なるほど。あくまで仮説だが、どうやら小型はスキルの珍しい者を狙う習性があるらしい。
一番最初は身体強化を発動させたディング。二番目に武器強化のロピ。そして最後に能力上昇の俺って事か……。
「お兄さん、小型に狙われている!」
「あぁ!」
俺は先読みして小型の攻撃を避ける。
そして、これも仮説の域を出ないが恐らく先程オークに俺のスキル効果が効かなかったのは、俺自身が仲間認定をしてないからだと思われる。能力上昇の使用者が仲間だと思わなかったら発動しないんだな……
そんな考察をしている間にも小型の猛追が続く。
常に自分の直ぐ後ろにいるモンスターは恐怖の何にでも無いが、今の所は先読みで攻撃を避け来れている。
「えい!」
ロピが再び雷付与の石を小型に投げるが、やはり一瞬動きが止まるだけで効いている感じはしない。
「フンッ!!!」
続いてディングがスキルを発動した蹴りを小型に放つ。
だが、小型の頭部分が若干向きを変えただけで、直ぐに正面を向き俺を狙い始める。
「ちくしょ……。俺の攻撃が全く効かん。やはり外皮が柔らかい箇所を狙うしかねぇーな」
ディングのスキルランクはBの為、攻撃箇所によっては倒せるって事か?
「ディング、今まではどうやって倒していたんだッ?」
小型の攻撃を避けながらも大声でディングに問い掛ける。
「後何人かの主要なアタック担当と同時攻撃で毎回倒していたんだ。だが、ゴブリン共にやられた」
ゴブリン達も余計な事をしてくれる……。
このままだと、俺の体力が先に尽きるな。
「ディング! 他のオーク達も含めて同時に攻撃は出来ないのか!」
「やってみよう! 聞いたかッ同胞達よいくぞ!」
ディングの掛け声と同時に複数のオーク達が攻撃をするが小型は先程よりもヨロケ程度である。
やはりアタック担当では無い者が攻撃をした所で大したダメージは無いように見える。
「はぁはぁ、このままじゃ少しヤバイな」
普段ならこの程度の動きで息切れはしないが、やはり緊迫した状況で避け続けるのは体力を相当使うらしい。
どうするか、考えていたその時!
小型から何かが衝突した様な大きい音が響いた。
その何かがぶつかった威力はスキルで強化されたディングの蹴りには及ばないにしても相当なものだと窺える。
「ほっほっほ。さすがにこの程度だと効きませんか。さてどうしましょうか」
そこには何故か牢屋に居るはずの魔族が俺を守るかの様に目の前に立っていた……
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