第77話 ゴブリンの反乱 3

「お兄さん! とうとう戦闘が始まったね……」


 オーク族とゴブリン族の戦いが始まった。俺は一瞬で勝負がつくと思った。オーク族がゴブリン族を一掃して終わりの未来を予想していたが、ゴブリン族が思っていたより奮闘している様だ。


「同胞達よ、突っ込めー!!」

「「「「「おう!!」」」」」

「皆さんッ! 低脳達が来ます、毒矢を放って下さい!」

「「「「「「「おう!!」」」」」」」


 オーク族はゴブリン達に向かって走り寄るが、流石のオークでも毒矢を食らうと厳しいのか、しっかりと避ける。それにより、思ったよりもゴブリン達に近づけ無いでいる。

 逆にゴブリン達は毒矢を放ちながら少しずつ後ろに後退している、その距離実に五十メートル程だ。


 だが、オーク達の進行を妨げる事は出来ても倒す決定打が無い為、このままではジリ貧だな。


「クソ! 忌々しいゴブリン共が!」

「ディング様、絶え間なく放ってくる毒矢の所為でゴブリン達に近づけません」

「毒矢には気をつけろ! いくら我らでも食らったら動けなくなる」


 ディングはゴブリン達の連携に翻弄されてイラついている様だ。


「皆さん、その調子です! オーク達に近づかれない様少しずつ後退していきますよ!」

「グダ様! 偵察隊より時間通りと連絡がありました!」

「分かりました」


 このままではジリ貧の筈だがグダ達は一向に諦めるつもりは無いらしい。


「お兄さん、ゴブリン達の連携凄いね……」

「あぁ。ここまで連携が取れているとディング達も攻めきれないな」


 そんな事をロピと話していると、何人かのオークが盾を持って来た。どうやら盾を使いゴブリン達に近づくつもりらしい。盾はオーク一人を丸々、隠すくらいには大きい。


「ディング様、大盾持ってきました!」

「よし! 盾を構えながら進め!」

「「「おう!!」」」


 オークの中でも比較的体格の良い三人が盾を構えて平行に並び早足程度でゴブリン達に向かう。そして、その後ろにディング達が速度を合わせて進む。


「グダ様! オーク達が盾を持って進んで来て毒矢が効果ありません!」

「皆さんッ! 毒矢を引き続き放ちながら、例の場所に向かいますよ!」

「「「「「おう!!!!」」」」」

「同胞達よ! 逃すな!」

「「「「おう!」」」」


 グダ達は何か考えがあっての行動なのか、村の外れに少しずつ向かっている。


 だが、予定よりもオーク達の進行が早く、思ったより近づかれているのか、グダの表情には苦悩の色が見える。


「クッ……。低脳の癖に勢だけはありますね……」

「グダよ! 諦めろ! そろそろ捕らえるぞ!」


 恐らく、村の外れに着く前にオーク達に追いつかれるな……。


「これは、ちょっと無理そうだね……」


 ロピから見ても、そう見えるのか。


 それから、ゴブリン達の頑張りも虚しく一人のゴブリンがオークと接触した。


「非力なゴブリンめが!」


 一人のオークがゴブリンに目掛けて棍棒を振り下ろす。その一撃は当たればタダで済まない威力だろう。

 ゴブリンは危な気に避けるが、戦闘に慣れていない為体勢を崩しヨロける。


「皆さんッ! フォロー!!」


 グダの掛け声と共に五人のゴブリンが短剣を構えて、それぞれ攻撃してきたオークの急所を突いてくる。


「「「「「フンッ!!」」」」」

「クッソ!」


 オークの身体の二、三箇所に傷を負わせたが全く効いてない様子だ。

 そして短剣の傷を物ともせず棍棒を振り回す。

 その振り回した棍棒にゴブリン二人が当たり、後方に吹っ飛ばされていた。


「馬鹿力め……。皆さん、再度フォロー!!」

「「おう!!」」


 吹っ飛ばされたゴブリン二人は骨が折れた様で腕を抑えながら最後尾に移動して、その代わりに新しい二人のゴブリンがスイッチしてオークに攻撃をし始める。


「ええい! 面倒だ! 代われ」


 ディングが前に出て持っていた棍棒を一振りする。


「フンッ!!」


 ゴブリン達五人が吹っ飛ばされる。

 ディングによる棍棒の攻撃はゴブリン達に当たっていない……。


 なら何故ゴブリン達が吹っ飛ばされたのか?


 ディングが攻撃したのはゴブリン達の目の前にある地面であり、そこを力一杯棍棒で叩きつけた事により地面が盛り上がり弾けたのだ。それにより近くに居た五人のゴブリン達も吹っ飛ばされる。


 「クッ……これだから力で物を言う者達は嫌いなんですよッ! なんて馬鹿力なんだ……。皆さん大丈夫ですか!?」

「グダ様! 我々に怪我は御座いません!」


 どうやら、直接攻撃が当たった訳では無い為吹っ飛ばされたゴブリン達にダメージは無いらしいが、先程までの勢いが、ここに来て初めて陰りを見せ始めた。


 それは、実際に吹っ飛ばされたゴブリン達よりも、後方で見ていたゴブリン達の方がより顕著に出ている様だ。


「や、やっぱり無理だ……。俺達がオークに勝てる訳が無かったんだ……」


 一人のゴブリンが弱音を吐く。


「皆さん! 気持ちで負けてはなりません! 私達には、まだ残された策があります! 諦めずに行きましょう!」


 グダの鼓舞により、表情に陰りを見せていたゴブリン達が再び希望に満ちた顔付きに変わり始める。


「ふむ……。流石にゴブリン族を纏め上げている男だな。今の一撃で心をへし折ったつもりだったんだがな……」


 ディングの一撃はどうやらゴブリン達の戦意を喪失させる狙いで放った一撃だったのか……。


「まぁいい、もう何度かやれば折れるだろう」


 ディングは再び重心を落とし構えを取る。

 そして、ディングが発光し始めた。どうやらスキルを使用するのだろう。


「皆さん! また来ますよ! 諦めず少しづつ後退をします。あと少しです!」

「同胞達よ、再度突っ込むぞ!!」

「「「「おう!!」」」」


 再び、突っ込むオーク、そしてゴブリン達も毒矢を放つ。

 オークとゴブリン達の距離はディングの一撃により再度少しだけ開いたが、ゴブリン達側は何人か負傷している為先程より連携が拙くなっている。


 そして、双方の距離が近づき二度目の接触が目前となっている時……。


「!? お兄さん……。どうやら戦闘に惹かれてモンスターが来たっぽい……」

「!? 近いか?」

「うん。戦闘に夢中で気付くのが遅くなったけど、もう目の前まで来ている」


 地面から振動を感じる。そしてその振動は徐々に大きくなっていく。

 オークとゴブリン達は戦闘中の為この振動には気付いていない様だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る