過酷な場所で生き抜く為に

第47話 Sランクの力……

「ロピ、チル、俺の事信じてくれるか？」

「お兄さんは何度も助けてくれたから私は信じるよ！」

「姉さんを助けてくれましたので、信じます」

　二人は男に目線を離さずに俺の問いに答える。男はまだ警戒が取れないのか、すり足で徐々に俺達に間合いを詰めてくる。

　両拳を痛めても、俺達相手ならいけると思っている様だな……

「よし、ロピ、チル、アイツに突っ込んで、殴れ！」

「「はい！」」

　流石双子、息ぴったりで二人は男に向かって走り出す。

　身体能力は若干妹のチルが高いのか、チルは先行して男に殴りかかる。

「おい！　ロピ！　テメェ俺に逆らう気か？」

「……」

　ロピは一切答えない。ひたすら男に向かって走る。

「ハッ！　上等だ！　ボコボコにしてまた調教してやるぜ！」

　男は拳を引き上げ、先行して来たチルを殴る。

「ガード！」

　チルの走るライン上に青ラインを敷く。

　チルに攻撃した男は先程と同じ感触なのか顔をしかめた。

「──ックソ！　なんでこんなに硬いんだよ！」

「ヤァ！」

　チルが声を出して男を殴った。

「ギャハハ！　防御は一級品かも知らないが、攻撃はクソじゃねぇーか！」

「クッ……」

　チルは悔しそうにしていたが、直ぐに男と距離を取るために後退した。

「何となく、分かってきたぜ？　お前ら獣人が固い理由は、三人のガキ供の誰かのスキルだろ？」

　男は先程の焦りとは打って変わって表情に余裕が見られる。

「しかも、メチャクチャ珍しいスキルの能力上昇だな？　ここまで強い効果があるなんて、思いもしなかったが、確か能力上昇は自分自身には効果が適用しないんだよな」

　徐々に、男の口元はつり上がってくる。

「だから、スキルの能力者をヤっちまえばいいだけだよな？」

　男は汚い笑みを浮かべて俺の方を見た。

「ガキ！　お前だろ？」

　そう言って、男は走ってこちらに向かってくる。俺は先程のダメージがまだ残っている為、立ち上がる事が出来なさそうだ。

　あれ、試してみるか……。

「ロピ！　チル！　アイツを攻撃しろ！」

「でも、お兄さん！　アイツに私達の攻撃が効かない！」

「……」

　確かに、先程チルが攻撃した時は男に全くダメージを与えていなかった。

「信じろ！」

「「はい！」」

　二人は俺の言葉を疑う事なく、男に向かって走り出す。

　男は一瞬獣人姉妹を見たが、気にする事無いと思ったのか、直ぐに俺の方を見て向かってくる。

　よし！　やっぱり男はロピとチルをナメて意識は全部俺に向かっている。

　最高のシチュエーションだぜ！！

「ガキが！　一撃でぶちのめしてやる！！」

　俺は男の言葉など気にせず集中する。

　ロピとチルは男の目の前まで迫っており、二人とも攻撃のモーションに入っている。

　男は先程の攻撃で、自分自身には効かないと高を括っている。

　集中……。集中……。集中……。

　俺は集中した後に唱える。

「アタック！」

　俺が唱えると、赤のラインが浮かび上がる。

　そして、ロピとチルの走るライン上に赤いラインを敷く。

　その光景は俺にしか見えないが、まるでレッドカーペットの様だ。

「「ヤァ！！！」」

　二人の拳が男を捉えた……

　そして男は……吹っ飛んだ？！

　二人の同時攻撃を受けた男は信じられない勢いで壁に激突するまで吹っ飛ばされる。

　そして、男は動かなくなった。

　お、おい……能力上昇ってメチャクチャ凄いんじゃ無いか……？

「お兄さん、凄い！！」

「流石です」

　男をぶっ飛ばせた事が相当嬉しかったのか、二人は俺の事をべた褒めしてきた。

「あはは、ありがとう。これで少しはスカッとしたな」

「だねー。私もスカッとしたよ！」

「はい。私もあなたのお陰でスカッとしました」

　とりあえず、この場は離れた方が良さそうだな……。

「一旦、ここから離れよう。コイツの仲間達がいつ来るか分からないしな」

「そうだね。チルちゃん、また引越しだけど！　その前に聞いとかないといけない事があるの！」

「なに？」

「その前に、ここ離れよう」

　俺達は安全な場所に移動した。