第35話 人間族の住処へ到着
デグとベムと人間族の住処に入ったのだが驚いた。
シクが言っていた様に、本当に大岩で囲われていたのだ。そして内部から見るとその大きさは想像以上だった。
岩の高さが数十メートルくらい無いか……?
しかも、人間族の住処は発展しており、屋根付きの家や露店、劇場などの娯楽施設などもあったり、道が整備されたりと、今までシクと俺が住んでいた場所に比べると、天と地の差がある。
「でか?! デグ! ベム! なんだこの大きさ!」
「これがモンスター達から俺らを助けてくれる砦だ!」
「アトスが騒いでいる……。可愛い……」
確かに、これくらい大きいなら小型なら余裕だろ。もしかしたら、中型の攻撃も耐えられるかもしれないな。
俺が中型を見たのは、今から十年前くらいだな。あの時はこの世界に来て赤ん坊になってビックリした記憶がある。その時に中型に食われそうになった所をシクに助けられた。
あの時の中型はかなり大きかったし、頭に一本の角が生えていたな。
それと今見ている大岩くらいあった気もするが、あの中型が本気で攻撃しても、果たして耐えられるのだろうか?
そんな事を考えているとデグが俺に話しかけてくる。
「どうだ? 人間族の住処は!」
「メチャクチャ凄い! こんなに発展していると思わなかったよ!」
「まぁ、唯一この人間族の住処くらいだな、こんなに発展している場所は。後はアトスが暮らしていた様な生活を送っているぜ」
「そうなの?」
「あぁ、ここはこの大岩のお陰でモンスター達に家や施設を壊されないから、どんどん建物を建てられるからな」
人間族の住処以外は、やはりシクの講義通り、少人数が集まり、ちょっとした家を建てて暮らしているらしく、モンスターなどが近づいて来たら、家などを捨てて逃げる為、しっかりとした作りの家は作らないらしい。
「とりあえず、飯でも食べようぜ! 話は食べながらでも出来るしよ」
「アトスご飯も美味いから、早くいこ……」
ベムに手を引かれ俺達は飯屋に向かった。
飯屋に入って感動した事がある。
「おー。メニューの種類が豊富だ!」
「ここは、安くて美味いからな!」
「アトス、いっぱい食べると良い……」
「シクの料理は美味かったけど、いつも肉肉肉だったから、なんか新鮮だな」
「シクさんの料理は絶対美味いに決まっている……。私も食べたかった……」
そんな事を話しながら俺はメニューを見た。
え?! 魚料理もあるのかよ! 驚きと同時に俺は魚を中心にした定食にする。
そして定員が持って来てくれた定食を早速食べると……
「これは美味い! デグ、この魚美味いよ!」
「そうだろ、そうだろ。どこで獲れた魚かは知らんけど、新鮮だよな!」
「アトス、私の料理も少しあげる……」
「いいの? ありがとう!」
この世界に来てからは初めて食べる料理ばかりだ。俺はお腹いっぱいになるまで食べ尽くした。
「ふぅ……。お腹パンパンで、もう食べられないな」
「アトス、沢山食べてたね……。どっかのバカはまだ食べているけど……」
「おい、それは俺の事じゃないよな?」
デグの目の前に中身が空の大皿がいくつも並んでいた。
「デグ、そんなに食べて大丈夫なの?」
「あぁ、俺は昔から良く食うんだけど、冒険者になってからは身体を動かすから余計に食う様になったな!」
「デグの食費のせいで私達のパーティは全然お金が貯まらなかった……」
「お前も、酒はかなり飲むだろう! 俺だけのせいにしているんじゃねぇ!」
デグの話を聞き流すベム。
──さて、ご飯も食べたしスキルだな!
「デグ、スキルの儀式を受けたい!」
「そうだったな。ただ、今日はもう時間的に微妙だから明日の朝からだ」
「アトスのスキル何になるか楽しみ……」
明日か。
「なら、デグここら辺に子供一人でも住める場所とかってある?」
「何を言っているんだ? 俺と住めばいいだろ?」
「そうそう。デグみたいな臭いのと一緒が嫌なら私と住んでもいい……」
「──ッ臭くねーよ!!」
デグの文句もベムは一切気にしないでこちらを見ている。
デグも大変だな……。
「いや、ここに来るまでに考えてたんだけど、俺は一人で暮らしてみたいんだ」
ここまで、連れて来てくれて更に生活の面倒まで見てもらうのは悪いしな。
それに、いずれ俺はここから他の場所に行こうと思っているから、すぐ出ていける様に、デグ達に依存はしたくない。
「そんな事を言ってもよ……。ここも子供一人で住むには結構危険な場所だぜ?」
「そう。ここは危険……。私か臭いのかと一緒に暮らすべき……」
デグとシクが俺の事を心配しているのが凄く伝わってくる。
「心配してくれて、ありがとう! でも決めたから!」
「「……」」
二人は複雑な表情をしたが、直ぐに笑顔になる。
「そうか! 分かった! ただ、これだけは約束してくれ」
「なに?」
「何か困った事があれば絶対に俺達に言え! それだけは約束してくれ」
「デグに賛成。困ったら私と臭いのに言うべき……」
ベムの言葉に先程まで頼れる兄貴的な笑顔だったデグの表情が若干崩れたが、直ぐに戻す。
「デグ、ベム、ありがとう!」
二人の暖かさに涙が出そうになるが、ここは笑顔で返す。
「まぁ、同じ場所に住んでいるんだし今後も会えるしな! アトスがもう少し大きくなったら一緒にパーティ組もうぜ!」
「私はアトスに会いに行く……」
こうして、俺はデグから紹介された中心部からはかなり外れた、スラム街寄りの小さな小屋に住むことになった。
よし! 明日はスキル儀式だ!
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