第34話 人間族の住処へ向かう

 デグとベムと人間族の住処に向かってから、数日が経過した。


 どうやら明日には着くらしい。


 この数日で木々が生い茂っているジャングルを進みながら、色々話して、俺も二人に大分慣れてきた。


 人間族の住処に着いたらスキル儀式が出来る為楽しみだ!

 スキルについて人間族の住処に着くまで色々聞いてみようかな。


「デグ達のスキルって何?」

「俺はこれだ」


 そう言うと、首に下げていたペンダント的なのを見せてきた。その表面には、【身体強化(部位:腕 Dランク)】と書かれていた。


「このペンダントは何?」

「これは、スキル儀式を行うと貰えるペンダントで自分のスキルが記載されているんだ」

「そうなのか。デグは身体強化なんだね」

「そうだぜ! まぁDランクだから落ちこぼれだけどな」


 デグが苦笑いしながら、見せてくれた。

 シクの講義で習ったが、もっとも多いランクがCランクらしい。


「ならデグはスキルの20%の力を引き出せるのか」

「お?! アトス詳しいな」

「アトスは天才かもしれない……。デグとは大違い……」

「シクに習ったんだ!」

「さすが、シクさん……」


 何故かベムがドヤ顔をしている。


「ベムのスキルは何?」

「私はこれ」


 ベムはそう言ってペンダントを見せてくれた。

【身体強化(部位:目 Cランク)】


「身体強化に目もあるのか。これはベム自身の視力が上がるって事?」

「そう。だから、あんまり戦闘とかでは役に立たないかも……」


 この世界は、ほとんどジャングルで木々に覆われている為木が邪魔して遠くまで見えないのだ。なので、視力が上がったとしてもあまり戦闘では意味を成さない。


「二人ともスキルいいなー。俺も早く欲しい」

「あと少しだぜ! アトスなら、どんでもないスキルをゲット出来るかもな」

「アトスなら確実に良いスキルを得る事が出来る……」

「アトスは何のスキルが欲しいんだ?」

「俺は、武器強化がいい!」


 やっぱり、俺はシクと同じで武器強化が欲しい!

 武器強化は見た目カッコイイしな!


「武器強化は珍しいからな。そこは運だよな」

「アトスならいけるはず……」


 何の根拠も無いはずだが、随分自信を持ってベムが言う。


「まぁ、俺たち人間族は身体強化の足が一番無難だけどな」


 デグがシクと同じ事を言う。恐らく、モンスターに追いかけられた際、逃げる時に役立つからだろう。

 確か、デグ達を裏切った奴は身体強化の足でBランクだったらしい。


 Bランクは凄いな……。


「俺は、絶対武器強化! それか稀に出るスキルがいいな」

「流石にそれは難しいかもな。稀に出るスキル。最近で言えば人間族の聖女様の回復だな」

「回復?」

「詳しくは分からないがポーション以外で回復が出来ると聞くぜ」

「本来はポーション以外で回復は出来ない筈だけど、聖女はそれが出来ると聞く……」


 ベムが説明してくれたが、この世界では基本ポーションでの回復しかない為、ポーションの需要が高い。だが、ポーション自体珍しい為、高位の冒険者か金持ちくらいしか持っていない。

 その聖女は稀に出るスキルで回復をする事が出来るらしい。

 

 ……チートか? 羨ましい!


「まぁ、珍しいけど能力上昇のスキルは、得たくないよな」

「能力上昇は使い勝手が悪いと聞く……」


 二人が三つある中で一番珍しいスキル能力上昇について言う。


「そんなに、使い勝手悪いの?」

「能力上昇なんて使っている奴見た事無いから分からないが、本とかで見る限り、あまりの使い辛さにスキル無いのと同じって記載がどの本にも載っているな」

「えぇ……。それは流石に言い過ぎなんじゃない?」

「まぁ、実際使用している奴なんていないから分からないけどな。ただ、世間的にはめちゃくちゃ評価が低いな」


 俺的にも能力上昇は三つの中で一番欲しくないスキルだな……


「心配しないで大丈夫……。稀に出るスキルと同じくらい珍しいらしいから、まずスキル儀式で得る事は出来ない……」


 俺が難しい顔をしていたのか、ベムが気を使ってくれた。


「まぁ、スキル儀式してみれば分かるぜ。ほら、見ろ! アトスあれが人間族の住処だ」


 そう言って、デグが指差す先を見ると、いくつもの大岩で囲まれている空間があった。

 あれがシクが言っていた大岩か。あの大岩のお陰で人間族はモンスターからの進撃を防げている。

 なので、人間族は全種族の中で最も人数が多い。安全な場所がある為人口が増え続けているのだろう。


「よーし! 着いたらまずは飯でも食おぜ!」

「珍しくデグに賛成……。アトス、お昼はデグが奢ってくれるから、いっぱい食べるといい……」

「ぐぅ……。あの約束覚えてやがったのか」

「当然……」


 こうして、俺は無事に人間族の住処に辿りつけた。

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