第24話 人間族四人組 2
「木偶の坊、このままだと直ぐにモンスターが来るわよ、どうするつもり?」
かなり焦ったリサが俺に叫ぶ様に聞いてくる。
「まずは、隠れるぞ。四年前と同じで奇襲作戦でいく」
「いや、デグ。恐らくモンスターは僕達に既に気付いているようです。真っ直ぐこちらに向かってきて居ますし」
「ベムもそう思う。隠れても意味がない……」
どうする? 四年前は案外簡単に倒せたが、あの時は奇襲作戦の影響もあっただろう。
だが、今回は真っ直ぐに俺達の方に向かってきている。
「俺とカールで、まずはモンスターの一撃を防ぐぞ。それから、リサとベムで弓で攻撃してみてくれ」
「やれやれ、それしか無さそうですね」
「四年前の事を思い出すと、私達の弓程度じゃダメージを与えられないと思うけど、やってみるわ」
「ベムも頑張る……」
よし。まずは一撃を防ぐ! それだけを考えよう。四年前は俺の身体強化をした攻撃で倒した。リサ達の攻撃は全く効いてなかった。小型の注意を惹きつけるのが限界だったしな……
「デグ! そろそろ来ますよ……」
カールは自慢の双剣を構えて、身を低くしている。
俺も大剣を構えてモンスターが来るのを待つ。
先程までの振動とは違って、今では周りの木々なども揺れているくらいの振動になっている。
「木偶の坊、お酒と料理を奢るくらいじゃ割に合わないわね」
「ベムは新しい武器を買ってもらう……」
「良いわね! それでいきましょう」
リサとベムの声が後ろか聞こえる。
いやいや、武器なんて買ったら俺の儲けが無くなるじゃねぇか!
「か、考えとこう」
「デグも大変ですねー」
パーティ全員が、軽口を叩いている為俺自身も、なんとか平常心を保っていられる。
「デグ、お相手さんが来たようですよ?」
カールの言葉にみんながより一層警戒を強めた。
まずは、俺とカールでモンスターの体当たりを防ぐ!
自分自身に喝を入れてモンスターを待つ。
そして、ついにモンスターは姿を現した……。
「木偶の坊! 小型よ!」
「分かっている! カール! 抑えるぞ」
「はいはい。全く非力な僕には荷が重い作業ですねー」
俺とカールが小型と接触する。
「「──クッ!」」
なんて凄まじい威力なんだ!
全身が粉々になりそうになりながらも、なんとか小型の動きを抑えた。
俺は、自分のスキルである、身体強化を使用したにもかかわらず、腕が痺れて暫くは使い物にならなそうだ。
「カール! 大丈夫か?!」
「な、なんとか……。ですが僕では、キツかったらしいですね……」
「「「?!」」」
どうやら、カールの片腕が脱臼し、もう片方は折れてしまったらしい。
「リサ! ベム!」
「分かっているわ!」
「任せて……」
二人は弓を構えて、モンスターに攻撃を仕掛ける。
その際、リサの放った弓矢は炎が纏って小型に突き刺さる。
だが、小型には全く効いていないのか気にせず次の攻撃に移る準備をしている。
全く効いてない?! 流石に武器強化のスキルで強化した弓矢が全く効いてないのを目の当たりにしてパーティの士気が下がっていくのが分かる。
不味いな……。
「カール! まだ行けるか?!」
「脱臼した方は戻したので攻撃は可能ですが、防ぐのは難しいかもしれませんね」
「お前は避けるのに集中しろ! 隙あれば攻撃して小型の注意をひけ!」
「やれやれ、簡単に言ってくれますね!」
カールは身体強化(部位:足 Bランク)持ちだ。そこらの獣人よりも足が速いので避けるのは大丈夫だろう。
後はカール以外どうするかだな。
流石に、俺一人では小型の攻撃を受けきれない。かと言って、攻撃を避けられる程のスピードも持ってないからな……。
人間族は基本、身体強化の足持ちで無いと、小型の攻撃を避けるのは難しい。
この中で持っているのはカールだけか……。
そんな事を考えていると、小型が次の攻撃に移った。
「リサ! 狙われているぞ!」
「──ック!? なんで私なのよ」
カールとベムは小型を攻撃して注意を惹きつけようとしているが、小型はリサに集中して他の者達を気にしていない。
なんだ? なんでいきなり、リサを狙うようになった?
「──ッくそ! 考えている暇はねーか!」
俺は小型に向かって駆け寄り、横腹に大剣を叩き込む。
「──オラッ!!!!」
岩などは簡単に粉砕出来るような一撃を小型に食らわせた。
すると小型も流石に俺の攻撃は無視出来ないのか、尻尾のなぎ払いが俺を襲う。
「──ッこんチクショ!!」
小型の攻撃に対して大剣を振って応戦するも受け止める事が出来ずに、吹っ飛ばされる。
──ッ効くぜ……
吹っ飛ばされた先に大木が有り背中からぶつかる。
やはり、一人で受け止めるの無理だな……
「デグ、大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。だが、流石にもう受けきれねぇぜ……」
「デグは頑丈だから、もう一撃くらいは余裕だとベムは思う……」
勘弁してくれ……。
「そんな事より、あんた達早く私を助けなさいよ!」
小型は俺に攻撃した後は、またリサを狙っている。
「不味いな……。四年前と違って今度の小型は俺の攻撃が通用しねぇーぜ」
「かと言って、ベム達だと逃げても追いつかれる……」
そうだ、俺達人間族は逃げ切れない。唯一、カールだけは逃げ切れるだろうが、助けを呼びに行って戻って来る時間なんて無い。
「ベム! 弓矢で再度小型を狙え。カール小型の意識を俺に向かないようにしてくれ」
「分かった……」
「やってみます」
そう言って、ベムとカールは各々散らばる。
よし、集中だ。ただ、スキルで強化して攻撃しても、あの小型には効かない。
柔らかい部分に一撃を与えるしかねーな。
「ふぅ……」
一度、大きく深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
──よし! 行くか!
俺はスキルを発動して大剣を持ち小型に向かって再び走り出す。
ベムは弓矢で注意を惹きつけ、カールも常に小型の死角から攻撃をしているが、小型は全然気にした風でも無い。
俺は一際大きい木に登り、飛び降りる。
真下には小型が居る。
「──ッ喰らえや!!!!!!」
木からの落下の反動を利用し小型に向かって大剣を振り下ろす。
すると、俺の大剣が小型に突き刺さす事に成功した。
──ッよし!! そう思った瞬間。小型が暴れ出し大剣が抜けて俺は吹っ飛ばされる。
カール達の方を見ると、カールも小型が暴れた拍子に尻尾の一撃を喰らい吹っ飛ばされている。
ベムは少し離れた場所で弓を放っているが、小型が暴れ出したのを見て怯えたのか攻撃の手を止めている。
「──ッ?! リサ……?」
……そして、リサは小型に食われていた……
「──ッイヤぁー!! デグッ! 助けてッ! 痛い!」
下半身は既に小型の口の中に入っているのか見えない。
そして、俺は吹っ飛ばされたダメージからか、動けず黙ってリサが食われている所を見ている事しか出来ない……。
「デグ! カール! ベム! 助けてッ! あぁあぁあッッッーー!!」
あれだけ、騒いでいたリサが急に静かになり、そして上半身も小型の口の中に入っていった……
そして、リサを捕食した小型の体が光始めたと思ったら、とてつもない気配が辺り一面に広がった。
「「「──ッ!!!!????」」」
今まで何度かモンスターに遭遇した事や遠目から見た事はあるが、ここまでの気配を感じた事は今までに無い。
これが、人間を捕食した事による成長……。
そして、とてつもない気配は一瞬で収まったものの、小型は成長して先程よりも一回り大きくなっていた……。
「リ、リサ……?」
ベムは枯れた声で呟く。
「やれやれ、ここまでですかね?」
そう言って、カールは物凄いスピードで逃げ出した。
「──ッカ、カール! お前! フザケンナッよ!?」
カールは俺達の事を一切見ずに去っていった。
クソ! ベムの方を見ると状況についていけないのか放心状態である。
──ベムだけでも、助けねぇと!
俺は痛む身体に鞭を打って起き上がり、ベムの元に走る。
吹っ飛ばされた直後は身体が動かなかったが、今は普通に動く! 自分自身の頑丈さに若干呆れながらも感謝した。
「ベム! 大丈夫か?!」
「デ、デグ……。リサが……。カールは……?」
相当動揺している。当たり前か。俺も頭がついていかない。
「──ッリサは食われた! カールは逃げ出した! 今は俺達も逃げるぞ!」
「む、無理……。腰抜けて動けない……」
「チッ! しょうがねーな!」
俺はベムを肩に背負い逃げ出す。
今は成長中なのか小型は動かない。
今の内に早く逃げないと。
「ベム、逃げるからしっかり捕まっとけよ」
「デ、デグごめんね……」
「気にすんなッ!」
俺はベムを肩に背負い全力で小型から逃げ出す。
だが、非情な事に小型が動き出す。
ここまでか……。
そう思っていたら、何故か小型はカールが逃げていった方に向かった。
なんでだ……?
俺達は訳も分からないまま、しばらくその場から動けなかった……
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