第11話 ピンチの先には……

 「五メートル級……やっぱり小型か」


 シクが呟く。


 こうして小型を見ると教えてもらった大きさよりも、ずっと大きく見える。                

 前の中型よりは確かに小さいが、今回の小型と言えど五メートルの大きさだ。


 下手するとバスくらいあるな……?


 バスくらいの大きさがあるイモムシを実際見ると迫力が有り、足が竦むのを感じる。


 俺達は、そのまま小型が通り過ぎる事を祈りながら息を殺して待つ。

 だが、小型は俺達がここら辺にいる事が分かっているみたいに、進行を止めて辺りを探っている様子だ。


 「……シク。どうする?」


 小さくシクに問い掛ける。


 「……完全には私達の居場所が分からないらしいな。このまま待機だ」

 「わかった」


 小型は俺達が隠れている正確な場所が分からないらしく、手当たり次第木に体当たりをして何か居ないか探しているらしい。


 小型が木に体当たりする度に大きな音がジャングルに響き渡る。


 あの体当たりをこの木にされたら振り落とされるな。

 シクなら問題無いかもしれないが、今の俺では耐える事が出来ないだろう……


 小型は徐々に俺達が居る木に向かって来ている。


 「シク、流石にあの体当たりをされたら耐えられないよな……?」

 「確かに……。だがここで逃げても無尽蔵の体力をもっている小型からは逃げられない」

 「なら、やっぱりこの木でやり過ごすしかないか……」


 しばらく待つがとうとう小型が俺達が居る木に目標を定めていた。


 「シ、シク……?」


 不安そうな顔でシクを見る。


 「私にしっかり掴まっとけ」


 シクは片手で俺をしっかりと抱き寄せ、もう片手は木から落ちない様にと枝を抱いていた。


 そして、とうとう小型が木に体当たりをして来た。


 「「──ッ?!」」


 木が予想以上に揺れる。

 体当たりの瞬間、俺とシクの身体は一瞬浮いていた。


 む、無理だ。

 こんな揺れは何度も耐えられるものじゃ無い!


 後、何回かされたら間違えなく木から落ちるだろう。


 そんな俺の心配を余所に小型は再び木に体当たりをする。


 シクは必死に落ちないようにしているが、次の体当たりには耐えられそうだ……。


 小型もこの木に俺達が居ることを確信しているのか、もしくは次で決める気なのか、体当たりする為先程よりも勢いがつく様に助走距離を大きく取っている。


 「シク、このままだと俺もシクも食われちゃう。シクだけでも逃げてくれ」


 ただでさえ、人を食って成長するし、今の状況は非常に危険な状態だ。


 「何を馬鹿な事を言っている! お前を置いて私が逃げると思うのか?」

 「でも、シク! 俺が囮になればシクのスピードなら逃げられるだろ?」


 赤の他人である俺を五年間も育ててくれたシクに俺は感謝している。


 「そういう問題ではない。いいからしっかり捕まっていろ」


 木の揺れに振り落とされない様にと必死に掴まっている為、シクの表情を見られないが、声色から今言った事について怒っている事が分かった。


 そんな事を考えている内に小型は準備が整ったのかこちらに向かって走って来るのが見えた。


 あぁ……これで終わりだ……あの体当たりがこの木にぶつかったら次は落とされる。


 小型なんかに食われたくないな。シクも俺も絶望状態だったが……


 「みんな行くぞッ!!」

 「「「おうッ!」」」


 ん?! なんだ?


 急に俺とシクでは無い声がジャングルに鳴り響いた。


 人間の声なんて、この世界に来てからシク以外に聞いた事が無い。


 一体誰だ……?

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