異世界【機関】

サカヤン(sakayan)

エージェントアーロンの冒険

1・僕はエージェントアーロン

僕はエージェントアーロン-1 夢違え

これで30日目。

これ程長い間「夢」を見ないのは初めてだ。

身体がとても軽い。きちんと睡眠がとれている証拠だ。

この状態は10日を超えた辺りから続いている。何とも気分が良い。まるでコカインをキメて、効果が切れることなく持続してるような気分、と言えばいいか?(やったことはないけどね。)

半年前にはあり得なかったことだ。


当時「夢」の頻度は毎日だった。

睡眠すると即座に「夢」が始まる。僕は「俺」になり様々な冒険を繰り広げる。

「夢」は毎回内容が違った。舞台、服装、仲間、道具、乗り物、任務、敵・・・。

でも、共通していることは二つあった。


一つは「俺」。

もう一つは「結末」だ。


結末は、幾つか任務をこなした後「俺」が銃口を頭に当て撃ち自殺するというもの。例外は一度もない全て同じ。

「夢の体験」は全て僕の経験になっている。身体もその時の事を覚えているし、知識にも加わっている。場面場面の感情をダイレクトに思い出せる。

勿論結末の痛みも。


つまり「夢」のせいで、僕の身体も心も休息をしていない。

気分は最悪だ。24時間年中無休でFPSゲームをし続けながら、映画を見て、ネットサーフィンもしながらランニングマシーンに乗っていて、最後には銃弾で終える。

そんな気分と言えば想像しやすいだろうか?

「夢」が毎日になってから僕は常に頭痛がし、肩は重く、腕は挙がらないし、足取りは重りを繋がれてるのかと思うほど一歩一歩がしんどかった。

他人から見れば、目に生気が無く、目下には深いクマが出来て、頬骨が浮き出てきていたらしい。肌色も悪く常に独り言を喋り、明後日の方向を見ていたとか。

こんな自分の状態を確かめられないほど僕はまいっていた。

人に話しかけられたらイライラしたし、アパートで隣部屋の雑音に嫌気がさして怒鳴りこんだこともある。教授からは単位はとれてるのだから休めと言われた気もする。

兎に角酷い毎日だった。


その原因の「夢」が気づいたら現れなくなった。


1日目は、「夢の俺」にならなかったので久々に睡眠出来たと感じた。

2日目は、その日も無くてホッとした。

3日目、ここまでくると体調もよくなってきて冷静な思考を持つ事が出来るようになった。

4日目以降は、いつ「夢」が来るかと不安になったが実生活は落ち着きを取り戻していった。

5日目、6日目、1週間、8、9・・・・

そして今は30日目。人生始まって以来の絶好調だ。

知人からは「人が変わったようだ」とのこと。

確かにそうかもしれん。「夢」を見なくなってから以前にもまして積極的になった気がする。

運動をこなすようになり筋力がついた。ストレッチを習慣にして柔軟力が上がった。今まで読まなかったタイプの本を読むようになり知識を得た。物の視点を変えることで新たな発見を得た。好奇心が増えチャレンジをするようになった。

趣味嗜好も似てきてる気がする。


「夢の俺」に・・・・



あれっ?


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