君は本当に運がいい 夢幻の陥葬編

猫3☆works リスッポ

第1話結界世界

「今日15箇所目の結界ゾーン探索を始めるよ、今日はこれで最後にしよう、みんなも疲れているよね。」

「まあな。」アンジーが念を高めながら呟く。

「最後いくよ、魔力を高めて準備して。」グレアムが魔力を調律する。

「解析完了だぜ。」サーニンが吠える。

「解除もできたよ、今だけど。」マックスの魔法が何とか追いつく。

「転送いけい。」4人が声をそろえる。

「侵入、いざ!。」

グレアムは3人の真ん中に立って魔法陣をトレースする、4人の力の調整こそがグレアムの真の力、自分の、自分たちの能力以上のことをやってのける

また、それによって新たな魔法を奏でることができる


今日まで多重結界の探索は100を超えた、この地上世界ではもう探せるところがなくなり、調査の結果、時空結界に別世界が形成されていることがわかってから集中的に探し始めてもう3ヶ月が過ぎていた。

見えない世界を可視化しパズルを解くようにすり抜ける。

「結界侵入、着地成功したよ」

軽い衝撃と共に結界を抜けた感触がある。

「ok皆んな聞こえてる?。」

「やひ。」

「ぶい。」

「なは。」

相変わらずな反応だな「聞こえてる、みたいだね。」

深い呼吸に重い空気がまとわり付いた。

「うんかなり息苦しいな、魔素濃度が異常、これは星造るほどに濃いよ」

「だからか、おいらの力が不安定なのは。」


柔らかな下草の感覚が足の裏にある、出現ポイントから数センチ落ちたが足首に違和感もない痛めてはいない、少し屈伸をして辺りを見回した。


「どんな感じ?。」

「異常はないよ。」

「映像でないな。」

「魔力切れかな。」

弟たちがやかましい


「えーと目の前には不思議な光景が広がっているよ、現実の世界とも、今まで侵入した結界とも様子が違う、見た目は春みたいな気温なのと太陽もないのに強い強い日差し、色とりどりの赤や青や緑と黄色の野の花がいっぱい咲いている、ここから見える所にはやたらに太い木が1本だけだね、それに大人の胴回りより太い蔦が何本も巻きついているよ。」

何の植物なのか近寄ってみる。

「ふうん、不合理だな、木に成っている果物、季節を無視しているし、木にはパンに肉に焼いた魚などもブラさっがっているんだ。」

「俺俺が行きたい!。」

「おいよだれ出すな。」

「川の水も飲めそうだし、草からはジュースなのか?、あ、割れた木の実からは多分スープかなシチュー?が出ている、おお汚れたものは地面に吸収され埃一つなくキラキラと輝いている。」

「俺俺俺転送してよお願い。」

ゴンとゲンコツの音。

「いってー!。」

「サーニンうるさい、黙ってろ。」

「で、続き言ってよ。」

「この違和感、何だろう、そうだ綺麗事に包まれたおとぎ話の世界みたいだ。

食べ物類は触った感じは本物だ、まるで天地創造の術みたい、汚れのないのが作り物っぽくてかえって気味が悪いな。」

創生魔術は竜王にしか出来ないと聞いてる、そしてそれに必要な膨大な魔力の供給元は??。タスク様か。


「ふ〜ん、清潔好きの兄貴がそう言うのって珍しいね。」

「ねえねえゲームとかは。」

「ここに有るのは見渡す限りひたすら御花畑・かな。」

「つまんないな。」

「とにかくサクッと見てきたら。」


動物も虫さえも一匹もいないのはあまりにも不自然、その中に平原の中央にひときわ大きな木が立っていた、けれども木はこれだけしかなく、建物も無く日を避けけるものはこの木だけ、とても不自然だ、その大きな木の反対側に人影が見える。

「これから近寄って話しかけてみるよ。」

木の根元に近づくにつれ事前の予想を確認する。

驚かさないように気をつけてゆっくり声を掛ける。


「不合理な世界ですね、まやかしに近いですね。」

そこに座り込んでいる少女は予想もしない声かけに凍りついた。


「え?何で此処に子供が?。」

「お嬢さん名前は?。」

「・・わ・わたしエイミー・あんた 誰!。」


「え、エイミーって、や、やっと見つけましたよ、何考えてるんですか聖魔女様は、いったいここを維持するのにどれほどの魔力を消費しているんですか、このまま続けているとお二人ともただではすまないですよ。」


「聖魔女様発見?。」

「だけど、話しかけをしくったんじゃないの?。」

「兄貴らしくないな。」

「ああ、見た目が幼児化してたんで対応を誤ったかも。」

「にいちゃんがんばれ。」


そこには二人の人間がいた、聖魔女様と、その聖魔女様である少女の膝枕で横になっている中年の男性、多分タスク様だと思う、肖像画で見たことがある、救世の伝説のうちの一人で僕たちも尊敬はしているがまあ偉人なんてあんまり覚えていない。


声に反応して振り向く聖魔女エイミー様のその顔には恐怖と不信が現れている。

「どこから来たの、誰にも見つからないはずなのに、もう私たちに構わないで、もう失いたくないの、もう他の人なんてなんでもいいの、もう二度とタスクを失いたくないの、もう帰って!もうどっか行っちゃって!もうあんたなんか嫌いもう来ないで!。」

「完全拒絶だってさ。」


「事態収拾してよ、長男でしょう。」

「もうサクッとあきらめるとか。」

「これは、深追いしないほうがよさそう、回収魔法準備してるから。」

「いいから、とにかく聖魔女様の情報送って。」

「あいよ。」


情報をざっと再確認見て推測した、この線で押してみるか、「聖魔女様は心の傷を利用されたのですね、今は聞く耳をお持ちではないようですのでしかたありません、帰りますが僕はまた来ますから、でもこのままずっと幼児では結婚してお二人のお子様を抱くこともできないんですよ、よく考えておいてくださいね。」


「わ、私奴隷だから結婚できないもん。」

きっちり睨み返してきた


「何言ってるんですか、奴隷制廃止したのは聖魔女様ですよ、もうこの国には奴隷はいないんですよ。」

なんか腹が立ってきた、僕たちが国民が皆んな苦労して、待ってるのにこんな所で何してんだよ。

「もう!大人のくせにあんまり手間掛けさせるなよ。」

思わず立場も考えないで返してしまった。


「兄貴それまずくない?。」

「えーとまあ良くないかも。」思わず頭を掻いた。


聖魔女様の表情が青ざめ険しくなった、「ここでいい、ここがいいの、何も聞こえない、聞こえないわ!」大きく口を開いた瞬間周りの音が全て消えた

「やばいよ兄貴、魔法来るよ!」

「判ってる!僕は子供の魔法程度なら、い・な・せ・る・さ」自信満々で上衣のポケットから杖を取り出した。

だが咲き乱れた花が黒く変色して吹き飛び地面に大人を飲み込めるほどの幅がある大きな暗い地割れが走り天空高く炎が噴き上がる、暖かい空が曇り雷とともにナイフのような形の大人の拳の大きさの冷たい氷が降り始めた。


杖は一瞬で黒く焦げて消し飛ぶ。


「つ、魔力暴走おまけに一人で多重発動!?、これ対魔王用の魔法じゃないか!なんで、ほんとにまた来ますから、皆んな僕を回収して!」

光の粒がパッと散る「帰還!」


「にいちゃん思念波来るよ!。」

「なっ!。」

吐きそうになる強烈な思念がえきたいのようにじったいかし体にまとわりつく[子供・・子供なんかに、子供なんかに何が分かるの、私たちの何が、何が]

つう「い、僕には意味分かんねえ。」


魔法陣の中に還り着いた、服のあちこちが切れている、氷がかすったんだ、数センチずれると危ないところだった、見境なしだな。


「兄さん大丈夫かい、あ、ひでえかっこ服がズタズタじゃん。」

「腕からチイ出てる。」

「あ、ほんとだ、かすってる、痛みは感じなかったのに。」一番下の弟が寄ってきて血止めを塗っている。

「伊達に聖魔女様じゃないね、多重発動初めて見た。」

「氷がカミソリより薄くて鋭いから神経に触らないんだ、だから痛みを感じない、ぼく昨日学校で習った。」

「もし氷が首に行ったらアッさりと。」アンジーが指で首のところをなぞる。

「おい、怖いこと・言うなよ。」


「兄貴、息が上がってるよ整えた方がいい。」

「あ・ああ見つけたんだ二人共・タスク様も・ね、とりあえずは無事だった、竜王でさえ探せなかったんだぞ凄いだろ僕たちの力は、兄弟の皆んなの協力があったから結界を探せたんだ。」


「で、いつ呼んで来るのさ、今日?。」

「いや今は行かない、さっきは皮膚表面に物理防御を掛けてたんだよ、それが全く効いてなかった、転送も飛ばされそうになったし。」

資料を見直す

「魔法抵抗まで持ってるのか、厳しいなぁ。」

「対策考えてからだね、今はいつにするか分からないよ、ちょっと面倒なことになってるんだ、たぶん、ここは大人の知恵も借りないといけないみたいだ、僕たちは大人の気持ちまでは分からないんだ。」


「えー嫌だな、あの時父上に僕たちだけでできるって大見得切ったんだ、兄弟4人揃えば結構面倒な魔法を使えるんだって、国中に自慢できるチャンスだったのに。」


右の人差し指を立てて唇に当て制止する

「今大事なのは僕たちの気持ちじゃないよ。」


アンジイは片目をつぶって答えた、「わかってるって。」

サーニンは大きく口を開けて舌を出す。

マックスも負けじと目を見開き。

グレアムは思わず吹き出して笑った。

「こ、これじゃ百面相みたいだ。」

つられて皆んな笑い出した、これからどれだけ絞られるかを忘れて。

笑いが収まると元の話に戻った。

「で、で、どんな様子なの。」

魔導映像を見ていない3人に手っ取り早く状況を説明をする

「じゃあ一緒にいたというタスク様の様子は?。」

「そう言えば横になっていた事だけしか記憶がないな、向こうにいる間は少しも動いていなかった、本当に生きているんだろうか、聖魔女様の作った影か人形なんじゃないだろうか、何でも創造出来るって聞いてるし。」

「とにかくこのままでは何もできない、明日父上に報告しよう、共和国議長に報告する義務がある。」



それは1年ほど前のこと

あの惨劇をまるであらかじめ知っていたかのように北からの侵略が始まったのだ、聖魔女様は女王を退位し共和制に移行後にハギ・エイミー卿として魔法防御の役目を負う共和国委員の職に着くはずだった、しかし水晶宮の崩壊に飲み込まれその行方が判らなくなった。

その時に僅かな時間も置かずに魔法を使う魔獣の群れが北方から攻め込んだ、人々は何とか食い止めたがその払った犠牲は大きかった。


聖魔女様を探さなければならない、もし生きているならば。

それが共和国議長の親父の思い、そして国民の総意だった。

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