泡を飛ばす凡人
千木束 文万
第1話 凡人
仄暗い四畳半の部屋に、平凡な頭で平凡なことを考える凡人が一人。畳の目に、ただぼんやりと横たわっている凡人。瞳は虚ろで、口からは何も紡がれてきません。
かといって、何もしていないわけではありません。
彼は、考えているのです。日常を過ごすうちに浮かんだ疑問を、人知れず頭の中で吟味して、時に解を得て満足し、時に落胆する。
実に凡人らしい答えに落ち着くこともあれば、ふと良いアイデアを思いついたりすることもある、のかもしれません。
では今、彼は何を考えているのでしょう。
小説においては、モブの考え事などに興味を示す読者はいなさそうなものだが、それは多くの作者がモブを注視せず、ガヤやヤジという役割に充てているからだろう。
というか、モブに焦点を合わせてしまったら、そいつは最早モブではなくなってしまうだろう。モブと定義されてしまった時点で、小説の中でそいつに焦点があてられることはなさそうだ。
でも、凡人の考え事ならば、まだ焦点があてられる可能性はある。「凡人」は人物設定になりうるからだ。
しかし、人物設定が「凡人」だけの者は、いるのだろうか。まぁ、いなくはないだろう。が、おそらく主人公にはなりえないだろう。だって、明らかにつまらなさそうだし。
世界観をどうにかこうにかすることで、凡人を主人公たり得る人物に仕立て上げるのも、簡単ではなさそうだ。
・・・いや、でも、凡人の考えをそれとなくいい感じに書くことによってなら、凡人は主人公たり得るかもしれない。それとなくいい感じって何だ・・・。うーん、もう何でもいいか。
テキトーなことをテキトーに書いてれば、案外成り立つなんてこともあるかもだ。
それで成り立つんだったら、お気楽なもんだとは思うけども。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます