第276話 黒槍騎士団

「新しい騎士団を作るのにどうして俺が必要なんだよ」


 今はオッティと一緒に、グレイス領にあるオッティが作ったプラントにいる。

 なんでも、魔王の復活に対して軍事力が弱いので、新たに騎士団を創設して、魔王軍との戦いに備えるのだとか。

 オッティに依頼があったのは、騎士団の武器を作って欲しいということらしい。

 しかし、何故?


「黒い槍が並んでいたらかっこいいですよねってエメロード姫に進言したら、それが採用されてしまったというわけだ。『勝利の女神はお前らに下着をちらつかせているんだぞ!』って言う夢が叶いそうだぞ」


 オッティの言いたいことはわかるのだが、騎士団長にオッティがなれるわけでもないだろうに。


「騎士団の名前は決まっているんだろうな」


 なんとなく想像はつくよ。


黒槍騎士団シュヴァルツランツエンリッターだ」


 胸を張って言うオッティ。


「ちょっと違うんじゃないか?」


 あれも誤訳していたけど。


「まあ、そこはそれ。これでいいんだよ。団長の武器だけはケーニヒスティーゲルって名前にしておくから」


「そこはケーニヒスティーガーじゃないのか」


 最近はティーゲルじゃなくてティーガーって呼び方ですよね?


「いいんだよ闘〇都市Ⅱのロンメルだってティーゲルって攻撃をしてきたろ」


「ごめん、うちのPC-98はEPS●Nだったから、EPS●Nチェックが入って起動しなかったんだよ。よく知らないんだ」


 オッティのその基準はどうかと思うが、闘神〇市Ⅱでそうなら仕方がない。

 確認する手段がないけど。


「それで、まさか銀河の英雄の話とか、PC-98のゲームの話で俺を呼んだわけじゃないだろ。何をすればいいんだ?」


 こんな話をするくらいで呼び出されたら流石に怒るぞ。


「話は脱線しただけなんだよ。アルトのスキルでランスみたいなテーパーゲージを作り出して欲しい。材質はA5056とオリハルコンで。オリハルコンが騎士団長用だ」


 ランスみたいなテーパーゲージは指輪のサイズを測定する奴を大きくした奴だな。

 メモリが刻まれているけどいいのかな?


「どうせ黒くメッキするから、メモリは気にしなくていいぞ」


 俺の心を読んだのか、オッティがそう言った。


「黒くメッキをするのか」


「ああ、A5056は硬質黒アルマイト、オリハルコンは無電解黒ニッケルだな」


「いや、いくら硬質アルマイトとはいえ、ランスがアルミだと軽すぎて相手を倒せないんじゃないか?」


 俺はオッティを見た。

 オッティは首を横に振った。


「馬で突撃してくる奴がアルミのランスを持っていたとしよう。お前はそれがアルミだから攻撃を受けても大丈夫だといえるのか?」


 オッティにそう言われると、確かにアルミでも攻撃されたら死ぬなとわかった。

 しかし、問題がもう一つある。


「いくら黒アルマイトと黒ニッケルとはいえ、知らない奴が見たら見分けがつかないんじゃないかな?オリハルコンのランスが団長以外の誰かの手に渡ることもあると思うぞ。質量だって似ているんだし」


 そう、黒と黒なので見間違うこともあるだろう。

 黒染めと黒塗装を見間違うことだってあるのだからな。


「そこはランスにオリハルコンって刻印しておけばいいだろ」


 オッティは対策が雑だ。

 FMEAだったら大して改善されてないと思うぞ。

 まあ、実際に類似部品に刻印を追加して見分けようってのもあるけどな。

 よく混入していたから、効果が薄いのは体験済みだ。


「それじゃダメだろ。多分混入するぞ」


 俺は再考を促した。


「大丈夫だって。オリハルコンのランスにアルミにイリダイトの処理をしたランスを混ぜても、刻印さえあれば見分けがつく」


 イリダイトっていうのは昔のやかんやおろし金の金色と言えばわかるだろうか。

 あれに似た色をつける、アルミに使う表面処理だ。

 白色の物もあるが、金色に着色するならそれもできる。

 金アルマイトよりもお値段が安かったな。

 六価クロムを使用していたと記憶しているが、やかんやおろし金に使用していたのはどうなのだろうか。

 昔だしいいよね。

 ※色の例えであって、実際に使っていた訳ではありませんでした。使っていても言える訳無いけどね。

作者が見たと勘違いしてるのだと思います。


「それでも間違うと思うぞ……」


 そこからオッティを説得するのは大変だった。

 所詮人の目視検査など、保証度が低いため何をしても無駄である。

 100%の保証をするのは無理だ。

 結果、全てのランスをオリハルコンで作ることになった。

 混入は無くなったが、やたらと対策に金がかかったな。

 俺のスキルだが、オリハルコンは購入してもらったのだ。


「ところで、オリハルコンに無電解ニッケルできるの?」


 肝心なことを聞き忘れていた。

 オリハルコンって無電解ニッケル出来るかどうかわからないぞ。

 何せ前世にはオリハルコンなんて無かったのだから。

 実績などどこにもない。

 俺の心配をよそに、オッティは涼しい顔だ。


「アルト、心配するな。無電解ニッケルならプラスチックにだってめっき処理出来るんだぞ。きっと次のJISの改訂でオリハルコンの無電解ニッケルも記述されるはずだ」


 JIS規格になるなら仕方ないな。


 団長だけ特別って訳にはいかなくなったけどね。


品質管理レベル45

スキル

 作業標準書

 作業標準書(改)

 温度測定

 荷重測定

 硬度測定

 コンタミ測定

 三次元測定

 重量測定

 照度測定

 投影機測定

 ノギス測定

 pH測定

 輪郭測定

 クロスカット試験

 塩水噴霧試験

 振動試験

 引張試験

 電子顕微鏡

 マクロ試験

 温度管理

 照度管理

 レントゲン検査

 蛍光X線分析

 粗さ標準片作成

 ガバリ作成

 軌間ゲージ作成

 検査室作成 new!

 C面ゲージ作成

 シックネスゲージ作成

 定盤作成

 姿ゲージ作成

 テーパーゲージ作成

 ネジゲージ作成

 ピンゲージ作成

 ブロックゲージ作成

 マグネットブロック作成

 溶接ゲージ作成

 リングゲージ作成

 ラディアスゲージ作成

 ゲージR&R

 断斜面補正

 品質偽装

 リコール

 リンギング


※作者の独り言

工程FMEAによる事前の対策にお金を使えるといいですよね。

客先に工程FMEAを提出したあとに、証拠が残らない形で工程FMEAの不備を伝えて、そこを指摘してもらうようにすると、偉い人たちもお金を出してくれます。

証拠が残ると大変なので、個人の携帯電話とか、WEBメールをコンプライアンスに引っかからないように使うのが大変です。

怪文章は手紙に限りますね。

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