第231話 用語解説36
今日も今日とて、新規の開発がうまく行かず、偉い人からチーム全員が怒られました。
それはもうすごい勢いで、例えるなら戦闘中にガイドビーコン出しちゃった時みたいな感じ。
そして、対策として出てきたのが、「検査規格をゆるくする」という案。
今さら図面の変更はできないからって、それはないよね。
そんな交渉してこいと言われましても……
しかも今の段階でそれとか、相手も受けてくれないだろ。
違う業界の人にわかるように例えるなら、ザクでヴァル・ヴァロ取りに行かされるレベル。
伝わりましたか?
もう、納期までにコロニー落ちてくるのを祈っちゃう位に追い込まれています。
それでは用語解説いってみましょう。
・謝罪
社会人たるもの、相手に謝罪するスキルのひとつも持ってないと生きてはいけない。
必ず謝罪する場面が出てくると思うけど、地主になればそんなことはない。
地主万歳。
でも、みんなが地主になれるわけがないので、謝罪スキルを磨こう。
自分は相手が怒り疲れるまで待つ作戦です。
出来れば就業時間終了間際がいいですね。
車両メーカーになると、夜勤に引き継がれて、同じ内容で二回怒られるので、応用力が必要だぞ。
自分の見た中で最悪の謝罪は客がドン引きするくらいの勢いで、一緒に連れていった選別作業者に切れてた品質管理担当者だな。
あれが演技なら大したものだけど、本気で切れてた。
一つの方法ではあるな。
因みに、自分の修行方法は妻の怒りを受け止めることです。
客先で怒られた夜に妻に徹夜で切れられたときは、翌日気づいたら海を見てました。
偉い奴が謝罪に行けよ!
・ノックピン
位置決めするピン。
圧入するから部品が動かなくなる。
ということは、圧入しちゃうと調整が効かなくなる。
溶接治具にノックピン設計された時は泣きそうでした。
作中のように、設計が忘れると、位置の再現ができなくなるので、部品の脱着は簡単には出来なくなる。
脱着するなら測定もセットだ。
ノックピンを設定するかしないかは重要なので、治具設計には気を付けてもらいたい。
もうあんな思いはしたくないので。
・六価クロメート
六価クロムを使った鍍金。
価格に優しい、地球に厳しい。
タッチアップも出来て、とても便利でしたが、残念なことに、環境に悪いからという理由で使えなくなった。
古い図面は未だに六価クロメートの表記があるのだが、そんなものもうつくれないので他の鍍金に変える。
移行時期にどんな鍍金に変えるかで揉めた。三価クロメートだったり、無電解ニッケルだったり検討してましたね。
今さら環境に悪いといわれても困るがな。
あの時図面の改訂を頑なに拒否した設計の気持ち、わからなくもないよ。
自分だったらやりたくないから。
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