第203話 ラグボールって流行りませんでしたよね
新型肺炎の影響なのか、最近製造現場が定時割れして暇そうです。
品質管理の自分は、新規立ち上げが何一つまともに行ってないので、残業しておりますが。
工程能力指数を綺麗に見せるために、層別してから再度工程能力の調査を実施するとか、意味のない資料を作ってはプロジェクトが順調に進んでいるように見せていたり、涙ぐましい努力をしています。
努力の方向が間違っているとか誰も突っ込まないくらいには、精神がやられていますね。
終わらないと帰れないなら、終わらせてしまえばいいんだって……
小説というていで愚痴を吐かないとやってられねーぜ。
それでは本編いってみましょう。
スタジアムは興奮の坩堝であった。
いや、闘技場なんだけどね。
漁網に坩堝と懐かしい銘柄が思い浮かぶが、これは株の話ではない。
それぞれのチームのユニフォームは、現代のサッカーと基本的には同じだ。
半袖のシャツに、太ももから下が出ているサッカーパンツ。
それを着て、脛にプロテクターをつけている。
そうした格好の選手たちがフィールドを駆け回っている。
試合は前半戦の終了間際。
ボールをもってドリブルをするシルビアに、アイテムの選手が襲い掛かるが、逆に吹っ飛ばされる。
あのサッカー漫画もかくやという勢いで吹っ飛ばされるのだ。
中途半端なモンスターとの戦いを見せられるよりも興奮もするだろう。
大歓声が沸き起こる。
そして、キーパーと一対一になったシルビアが、狙いすましたようにゴールの端にボールを蹴りこんだ。
キーパーも反応して手を伸ばすが、ボールはそれをすり抜けてゴールネットを揺らした。
先程よりも更に大きな歓声が、前半戦終了のホイッスルの音を上書きしてしまう。
「ゴールポストを使って三角飛びをすれば取れたのにな……」
俺の頭にはとあるサッカー漫画が浮かんでいた。
あの頭身があれな奴ですよ。
ええ。
晴海じゃそうとう人気がありましたね。
え?
晴海は新館二階しか行ったことないって。
そんなの知らんがな。
前半戦を終えて10分間の休憩となった。
得点は2対1でシルビアのチームが勝っている。
後半の体力が落ちてきたところでどうなるかだな。
って、試合の内容は今回は重要ではない。
ワンサイドゲームになってしまうとつまらないが、接戦でどちらが勝つのか最後までわからないならそれでいい。
元々の問題は、冒険者とモンスターの戦いにおける死亡事故対策なのだ。
前半戦を終えて大きなけがをした選手はいない。
この休憩時間にヒーラーによる回復魔法の使用もあるので、後半はまたピッチを元気に走り回るだろう。
それでいて観客はサッカーの試合を楽しんでくれている。
ゆくゆくはそれぞれの地域を代表するチーム同士で戦うリーグ戦にすれば、賭け事をしない人達も見に来てくれるのではないだろうか。
今はまだチームが他の街に行くのには時間がかかるが、鉄道網が整備されたら遠征も可能になる。
他の街で行われている闘技場の戦いも、サッカーに変えていくこともできのではないだろうか。
水平展開だな。
暫くして後半戦が始まる。
シルビアチームのパスまわしを、プリオラがカットして攻めに転じると、観客たちは湧いた。
「同点に賭けているんだから、ここで決めろー」とか「外せー」など声援なんだか、ヤジなんだかわからないものが飛び交う。
ディフェンダーに阻まれ、無理な体勢でシュートを放つも、枠を捉えられずに大きく外れてしまった。
その後は両チームとも攻め手に欠けて、後半は得点なしで終わった。
世界初のサッカーの試合のスコアは2-1という結果だ。
試合後はそれぞれのチームの選手のインタビューが行われる。
モンスターとの戦いとは違い、インタビューに応えるくらいの余裕はあるからだ。
「あと2点くらいはとれそうな場面があったのに残念です」
そうシルビアが答えたものが、風魔法によって闘技場全体に響くと、点数差を外した連中からのブーイングと、当たった連中の喝采が一際大きくなった。
負けたプリオラのインタビューでも似たようなものだが、喝采の方が多いように感じる。
賭け事としてよりも、純粋にスポーツ観戦として楽しんでくれる観客が増えてくれるとよいのだが。
そして、今回闘技場の出口では、サッカーボールとユニフォームの販売を行っている。
ちょっとした小銭稼ぎだ。
そのうち賭け事以外の純粋な観客も増えてきた、もっと売れ行きが上がるだろうな。
今後は、金のある貴族にチームのオーナになる話を持ち掛けて、地域ごとのチームを増やしていこうと思う。
なにせ、企業というものがないので、スポンサーは金持ちの貴族になる。
商人でもいいけど、今のところそんなに儲かるようなもんでもないし、利益優先では難しいだろうな。
スタジアムの入場料が入るなら別だろうけど。
そうなると、やはり貴族が妥当である。
ここだけの話、本当はラグボールが良かったのだけど、ピッチングマシーンが作れなかったから諦めた。
あれって絶対「ボールはともだち。こわくないよ」とは言えないんだよね。
ゲックは三塁への走塁の途中にボールが当たって死んじゃうし。
ロド麻薬ルートを記録したマイクロフィルムが入ったボールを場外ホームランにしてみたかったですけどね。
※作者の独り言
コロナウイルスの影響で新車開発スケジュール遅れてくれないかなー。
作者のライフはゼロよ。
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