第112話 異世界チート品質管理4

 翌日、隊列は俺が先頭となった。

 エチュード曰く


「一番強いから」


 だそうだ。

 一応斥候のスキルが使えることも確認してくれたので、無茶ぶりというわけでもない。

 そこそこ強い敵は出てくるが、そんなものはものともせずに進む。

 作業標準書通りに作業をしていれば何の問題もない。

 そうしてついに地下56階層まで到達した。


「あれは……」



 俺が敵に気づく。

 オーガにしては体が大きい。


「オーガロードだな」


 エチュードが教えてくれる。


「オーガロードが現れた」


 流石にオーガロードと聞いて驚く。


「どうしたの?恐れるなら私がやるわ」


 とシルビア。

 ん?

 どこかで聞いたようなフレーズだな。


「目を凝らし、見つめてみろ」


 エチュードから指示があったので、俺はオーガロードをじっとみた。


「オーガロードが揺れ動く」


 そう、見ていたら揺れ動いている。

 なんの前触れだろうか?


「どうやって倒したらいい?」


 俺はシルビアに訊いてみた。


「肉を切らせてとどめを刺す」

「いや、それ以上は色々なところから怒られそうなので勘弁してください」


 これ以上は危険だと判断して、さっさとオーガロードを倒した。

 今の俺の敵ではない。

 #執事__バトラー__#とか#狙撃手__シュート__#とか出てきたら流石に言い訳ができないからな。

 危ない、危ない。


「やってきました地下60階層」


 そう、オーガロード以外にも色々と危険な敵が出てきたがそれを乗り越えて目的地まで来た。

 どれくらい危険だったかというと、ニコニコしていた人がぷんぷん怒るような感じのトレントが襲ってきたりしたね。

 思わず#ポロリ__・__#もあるかと思いました。

 トレントっていうか、樫の木のおじさんでしたね。

 僕は幼女のドライアードがよかったです。

 あらあら、おやおや、それからどんどこしょーと場面転換ですよ。

 危なすぎて具体的にはお伝え出来ないのが残念です。

 トレントは木のモンスターなので、塩水噴霧試験のスキルで塩水をかけてみたけど、思っていた即死効果はなかったので、燃やして倒した。

 塩水かけて樹木を枯らすのって時間がかかるんですね。


「フロアボスってどんな奴なのかしらね」


 プリオラがそういうと、それに答える声が地の底から響く。


「こんな奴です」


 出てきたのは黒い馬だった。


「馬?」

「よく間違われますが、ナイトメアという悪魔です」


 ナイトメアと名乗る馬っぽいのはそう自己紹介してくれた。

 さて、自己紹介も終わったことだし、ここで安らかに眠ってもらおうか。

 R.P.Nだ。

 R.I.Pだったかな?


「さて、フロアボスだというのなら、ここでおとなしく討伐されてもらおうか。迷宮から出てきて街を襲うつもりなんだろう」

「ちょっと待って。どうして街を襲うのか聞きたくない?」

「別に」


 じ、時事ネタじゃないんだからね。


「そうよ、それが聞きたかったのよ」

「それを聞かねばなるまい」


 シルビアとエチュードがナイトメアの話に乗る。

 君ら付き合いがいいね。


「よくぞ聞いてくれた。私は他人の悪夢を糧とする悪魔。しかし、ここまでやってくる冒険者がいない。仕方がないのでモンスター達の悪夢をいただいていたのだが、奴らが俺に悪夢を食われて死ぬくらいなら、街を襲って人間を連れてきますと泣きつくので、その計画を了承したのだ。フロアボスだからこのフロアを離れるわけにはいかないからな」


 成程。

 つまりは餌が他の餌を持ってくるから食べないでと懇願したわけか。

 弱い者たちがさらに弱いものを差し出す。

 ブルースが加速しちゃいそうだな。


「まあ、こうして糧となる人間がやってきたのだ。美味しく頂かせてもらおうか」


 そう言ったナイトメアの両目が光った気がした。

 次の瞬間、俺は前世の工場にいた。


「アルトさん、市場回収品はどう見てもうちの責任ですよ。これ#最悪の事態__・__#じゃないですかね」


 そういわれる。

 最悪の事態とはリコールの隠語だ。

 市場回収品の解析が終わったが、そうかうちが悪いのか。


「水漏れしているのがうちの部品が原因だから、どうにもならないですよ」

「それに関しては車両メーカーも把握している。ただ、他の大規模な最悪の事態に合わせて裏リコールで対応と決まったよ」

「裏リコールですか」


 裏リコールとはリコールの届け出をしないで、他のリコールに合わせて部品を交換する手段だ。

 他にも、車検時に部品を交換しちゃったりもあるのだが、それだとディーラーに持ってきてくれないと交換できないので、全部に適応するのは難しい。

 当然ながらどちらも見つかると怒られる。


「しかし、裏リコールするにも、向こうのほうが先行しているから、対策部品を間に合わせるのが大変だぞ」

「徹夜しても間に合わないかもしれませんね」

「対応してくれる試作屋を探さないとな」

「役員の承認はとれているのですか?」

「ああ、ここに至っては俺の判断だけじゃ無理だ」

「一筆もらったらどうですか?」

「そんな証拠残せるわけないだろ。ばれたら俺が責任負わされて終わりだよ」

「ご愁傷様です」


 なんて嫌な会話だ。

 あれ、俺なんでこんなことやっているんだ?

 あの水漏れはばれずにうまく裏リコールで対応できたはずだよな。

 それで、その後死んじゃって異世界に転生したんじゃなかったか?


「……ルト」


 ん?

 呼ばれたか?


「アルト」


 俺が目を開けると、そこにはシルビアがいた。

 先程までの工場の会議室ではない。


「よかった。目を覚ましたみたいね」

「馬鹿な。貴様の悪夢は始まっていたのに、目を覚ますだなんてあり得ない。生まれてから一番のつらい経験を再現させた悪夢を見ながら死ぬ呪いをかけたのに、どうして目を覚ませるのだ」


 安どの表情を浮かべるシルビアと、対象的に焦るナイトメア。


「残念だったな。俺には前世の記憶がある。辛かった悪夢は前世の物だったから、呪いは完全にはかかっていなかったんだろうな」

「何だと!」

「嫌なこと思い出させやがって!!お前だけは絶対殺す!!!!」


 俺は作り出したリングゲージを手でつかんで、思いっきりナイトメアを殴りつけた。

 ローレットの模様が反転してナイトメアに刻印される。

 馬面を歪めながら結構遠くまで吹っ飛んだ。

 鼻血を流しながらナイトメアがこちらを睨む。


「人間ごときがこんな力を出せるだと?!」


 そうだ、俺の身体強化一万倍で思いっきり殴ったのだ。

 普通の人間ではあり得ない。

 あれでも死なないとは流石フロアボスだな。

 殴っても死なないなら、ピクリン酸で爆殺だ。


「#爆破__シモセ__#」


 それっぽい名前を唱えてみる。

 内容はナイトメアを中心にピクリン酸を作り出して、爆破するだけなんだけどね。


 ドゴーン


 爆音と閃光があたりを包む。

 視力と聴力が回復すると、あたりにはナイトメアを構成していた肉片が飛び散っていた。

 グロイ……


「恐ろしい敵だった。具体的には国●省の1/7くらいの恐ろしさだったな」

「よくわからないけど、その『コッ●●ショー』っていうのがフロアボスの7倍強いっていうのはわかったわ」


 どうやらシルビアにも国●省の恐ろしさが伝わったらしい。

 ちなみに、経●省はナイトメアの3倍くらい恐ろしいぞ。


 こうして俺達フロアボス討伐隊はその目的を達成して帰路に就いた。



品質管理レベル34

スキル

 作業標準書

 作業標準書(改)

 温度測定

 硬度測定

 三次元測定

 重量測定

 照度測定

 投影機測定

 ノギス測定

 pH測定

 輪郭測定

 マクロ試験

 塩水噴霧試験

 振動試験

 引張試験

 電子顕微鏡

 温度管理

 照度管理

 レントゲン検査

 蛍光X線分析

 C面ゲージ作成 new!

 シックネスゲージ作成

 定盤作成 new!

 テーパーゲージ作成 new!

 ネジゲージ作成

 ピンゲージ作成

 ブロックゲージ作成

 溶接ゲージ作成

 リングゲージ作成

 ラディアスゲージ作成 new!

 ゲージR&R

 品質偽装

 リコール


※作者の独り言

この物語はフィクションであり、実際の人物・団体とは一切関係がありません。

この物語はフィクションであり、実際の人物・団体とは一切関係がありません。

大切なことなので二回言いました。


裏リコールなんて経験したことないし、ましてや水漏れを誤魔化したこともありません。

本当にそういうことがあっても、それはただの偶然です。

裏リコールなんて経験したことないし、ましてや水漏れを誤魔化したこともありません。

本当にそういうことがあっても、それはただの偶然です。

大切なことなので二回言いました。


それと、ここに登場する国●省と経●省は異世界の話です。

実在の日本の省庁ではないので、フィクションとしてお楽しみください。

実在の日本の省庁ではないので、フィクションとしてお楽しみください。

大切なことなので二回言いました。

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