第110話 異世界チート品質管理2
フロアボス討伐の募集を出して暫く経ち、受付が締め切られた。
討伐隊に参加する冒険者がステラの冒険者ギルドに集まり顔合わせとなる。
依頼が依頼だけに、参加するのは銀等級以上の冒険者だ。
俺以外はな。
参加するのは全部で26人となるので、全員が一堂に会することのできる広さのある訓練所に集まった。
「フロアボス討伐するには人数が少ない気がするんだけど」
「なんでも南の海でなんとかリーフっていう邪神が復活したとかで、ベテラン冒険者がそっちに駆り出されているらしいわよ。今回白金等級が参加できないのはそのせいね」
なんだその電気自動車みたいな名前の邪神は。
そんなわけで集まったのは金等級20人、銀等級5人、木等級の俺である。
銀等級にはシルビアとプリオラが含まれている。
勿論、23人は固定のパーティーであり、
・魂の
・赤い流星 金等級7人、銀等級1人
・迷宮の黒狼 金等級6人、銀等級2人
という構成である。
討伐隊のリーダーは、魂の輪舞のリーダーでもあるエチュード。
渋いおっさん剣士だ。
迷宮にはいってから揉めないように、事前の取り決めがなされる。
①倒したモンスターはそれぞれのパーティーのもの
②経費は各パーティー持ち
と決まった。
経費については、討伐隊全体としてしまうと、不要なものまで買い込んでしまう者がでる可能性があるかららしい。
あとは出たとこ勝負だ。
みんなベテランなのでその辺はわかっているそうなので心配ない。
話し合いも終わって、明日の出発に備えて解散して準備でもと思ったら、険しい顔をしたエチュードがこちらにあるって来た。
「なによ、出発する前から喧嘩しようっていうの?」
シルビアがエチュードを睨む。
「いや、喧嘩ではない。実力差からして喧嘩にすらならんだろう」
といって、エチュードが俺を指さす。
「俺?」
「ああ。今回は単なる冒険じゃない。フロアボス討伐だ。どんなに強い敵が出てくるかわからないというのに、木等級の初心者をお守りする余裕なんてない。なんでお前が参加するんだ、迷惑だ」
俺も好きで参加するわけじゃないんだけどなー。
どう反論しようかと思っていたら、シルビアが余計な一言を言った。
「あんたよりもアルトは強いわよ」
「何!!」
金等級よりも木等級の方が強いといわれ、エチュードの顔色が変わった。
「じゃあ、その強さとやらを見せてもらおうか」
「いや、暴力は良くないですよ」
俺は遠慮した。
しかし、シルビアがそれを許してくれない。
「アルト、あんたの実力を見せてあげなさいよ」
魂の輪舞のパーティーメンバーも集まってきて、どうにも引けない雰囲気となってしまった。
こうなっては仕方がない。
「丁度訓練場ですし、少しだけなら」
そう条件を付けて、エチュードと模擬戦をすることになった。
他のメンバーには下がってもらい、俺とエチュードが訓練場中央に向かい合って立つ。
「開始の合図はなしだ。そちらが仕掛けてきたら開始でいい」
エチュードは俺に先手をくれるようだ。
そこはハンデということだろう。
金等級が木等級の冒険者とハンデなしで戦うわけにはいかないと思ったらしい。
まあ、致命的なミスだな。
「わかりました」
そういって俺は無詠唱で自分に支援魔法を掛ける。
身体強化一万倍だ。
エチュードは俺が身体強化をしたことに気が付いていない。
そして、俺は一気にエチュードとの間合いをつめる。
当然一万倍のスピードなので、エチュードは反応できない。
エチュードの足に俺の足をかけて、胸のあたりを軽く押す。
本気で押したら死んじゃうからね。
それだけでエチュードはバランスを崩してしりもちをついた。
「っっ?!?!」
何が起こったかわからないで固まるエチュード。
それは他のメンバーも一緒だ。
誰一人として声が出ない。
「これでいいですか?」
俺がそう声をかけたことで、やっと我に返るエチュード。
「何をされたか全くわからなかったんだが」
「間合いを詰めて、足を引っかけて転ばせただけですよ」
「そうか、道理で足と胸に何かが当たった感触があったわけだ」
俺の解説でようやく何をされたか理解できたらしい。
「自分の身は自分で守りますのでご心配なく」
「そうだな。君の実力は十分理解できたよ」
エチュードは納得してくれた。
こうしてやっと顔合わせが終わって、明日の準備となった。
俺は冒険者ギルドの厨房にお願いして、温かい食事を用意してもらう。
何故か。
それは収納魔法が使えるようになったからだ。
運搬人で収納魔法が使える人に教えてもらい作業標準書を作成した。
収納魔法の容量は魔力量に比例するらしいのだが、俺の作業標準書(改)でスキルを改造してある。
収納容量は無限大で、時間停止もできるようにしてあるので、温かい食事を収納すればいつでも温かいまま食べられるというわけだ。
本来は白金等級で使えるようなスキルだという。
「みんなも作業標準書を守るだけで、最上級者と同じことができるんだ。守ろう作業標準書」
「誰に言っているのよ」
思わず居もしないライン作業者に語り掛けてしまったのをシルビアにつっこまれた。
いかんな。
その後水とかお湯とかテントとか色々詰め込んで準備が完了した。
いよいよ明日は迷宮だ。
※作者の独り言
作業標準書に書いてあることは誰でもできる。
つまり、なんでもやりたいことを作業標準書に書いてしまえばいいのです!(錯乱)
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