第91話 迷宮事故対策調査班

そもそも0.1ミリを手作業で狙うことが間違っていると何故気がつかないのでしょうか。

ベースにノックピン打ってあるから、セクションを叩いて成形しないとならないのだけど、どこの伝統工芸の職人だよと。

一叩き毎に三次元測定機で測定して、変形量を見ながらとか、10時間かけて一本修正が終わるレベル。

作り直した方がよっぽど早いわ!

あかん、愚痴で小説が終わってしまう。

それでは本編いってみましょう。



「新しい仕事として、迷宮事故の調査対策をするようにしたいと思う」


 今日の冒険者ギルドの職員会議でギルド長がそう切り出した。

 場所は冒険者ギルドの会議室。

 職員たちは椅子に腰かけ、ギルド長の話を聞いている。


「新しい仕事は常設ではなく、臨時のチームで行うこととする。調査対象は死亡や冒険者として復帰不可能な傷を負ったものだけなので、そんなに多くはないはずだからだ」


 成程、前世の事故調査委員会みたいなもんか。

 大きな事故については、それなりの組織が動いて、対策を考えないとね。


「チーム名は『迷宮事故対策調査班』。迷宮事故のM、対策(Measures)のM、調査班(Reportage)のRの頭文字を採って略称は『MMR』とする」


 ギルド長がそう言ったのを聞いて、俺は椅子からずり落ちた。

 班員のコードネームは「キバヤシ」、「ナワヤ」、「タナカ」、「イケダ」なのだろうか?

 事故調査っていうよりも、アストラ・バモスの予言についての調査がメインになりそうな名前である。


「最初のメンバーはこちらで指名する」


 そして呼ばれたのは、俺とシルビアとレオーネだった。

 レオーネの視線が、俺を射抜く感じなのは好意と受け取っておこう。

 いや、多分折角シルビアと一緒に仕事が出来るのに、俺が邪魔なんだろうけど。

 仕事内容の役割分担は出来ており、受付嬢としてレオーネが重大事故を取りまとめ、俺とシルビアが現地調査を行うって事になった。

 後は、選ばれたメンバーがMMRの仕事をするときは、他の職員が通常業務をカバーするようにという通達があり、本日の職員会議は解散となった。

 俺達三人はそのまま会議室に残り、第一回目の調査対象を決める事にした。


「第一回目は何にしようかしらね」

「まずは重大事故の統計を取ろうか。パレート図にして、一番多い事例の解決をするのが効果的だと思う」

「クエストの失敗事例を調査した時にやったやつね」


 シルビアはパレート図を覚えていてくれたようだ。

 ちょっと嬉しい。


「そういうわけで、レオーネには事例を集めてもらいたいんだ」

「よろしくね」

「はい、お姉様」


 どうみてもシルビアに対してだけの返事だよね。

 まあいいか。

 あまり遡るのも大変なので、10件くらい事例を集めればいいかと思っている。

 同月内で重大事故があればその分だけ10から件数が増えるくらいだ。

 MMRなんだから、読者……じゃなかった、冒険者からのお便りで調査内容を決めればいいと思うんだけど、出来たばかりなのでお便りが来ない。

 三人で冒険者ギルドの記録を遡り、何とか重大事故を10件みつけた。

 ダジャレで重大を10大にしている訳じゃないぞ、念のため。


 内容は下記の通りだ。


・他のパーティのトレインに巻き込まれて死亡 4件

・トレインを作ってしまい、抵抗を試みるが死亡 2件

・鉄等級に上がったばかりで地下5階層にチャレンジして強敵と戦い死亡 1件

・突然噴出した毒ガスで死亡 1件

・後ろから現れた迷宮鮟鱇に後衛が倒された 1件

・罠師が仕掛けたとらばさみに気が付かず、足を切断してしまった 1件


「トレイン絡みが6件か」

「だからこそトレインには重い罰が課せられるのよね」


 これを見て気がついたのは、クエスト失敗の最大の理由は勝てない敵と当たることだったが、重大事故についてはトレインが最大の理由となっている。

 前回の調査と違うのは、聞き取り方が違うのと、時間が経っているからであり、前回の調査が間違っていると謂うわけではない。

 前衛が死亡、後衛が死亡した理由に、トレインのなすりつけがあったのだと思っている。

 言い訳終わり!


 これを見ると、トレインはやはり問題だな。

 トレインを発生させる前にいかに対処するかで、事故の発生率を減らすことができそうだ。

 特性要因図よりも、FTAでの解析の方がいいのかな?

 ということでトレインについてのFTAを実施することにした。


トレイン発生要因

 ・モンスターが多い

  ・倒しきれないうちに新手

   ・モンスターが仲間を呼んだ

    ・リンクモンスター

   ・近隣のパーティーが処理しきれずこちらに来た

    ・気づくのが遅く準備するだけの距離がなかった

    ・他のパーティと戦闘しているエリアの間隔が狭かった

   ・倒すのに時間が掛かっていたら、別のモンスターが偶々通りかかった

  ・群れでいた

   ・群れを作るモンスター

   ・誰かが故意に一か所に集めていた

 ・勝てずに逃げた

  ・追いかけられ逃げるうちに他のモンスターに見つかりトレインに


 こんなところだろうか。

 群れでいても倒せるだけの力があればよいが、自分達の実力以上の敵となると、それが原因となるのだろうな。


「っていう感じなんだけど、これらの事象について対策が出来るかってことだね」

「全部は無理ね。でも戦闘エリアの間隔が狭い事については、本人たちが注意すればどうにでもなりそうね」

「それじゃあ、次回は実際に迷宮でトレインを再現してみようか」


 レオーネも一緒に行きたがっていたが、冒険者向けのスキルがないので、シルビアが同行は許可しなかった。

 何故か俺を恨みがましく睨んでいたが、どう見ても逆恨みです。

 本当にありがとうございました。



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