第74話 溶接スキルがみつかりました

いつも以上に専門用語が多い気がする。

わからない単語はググレカス。

それでは本編いってみましょう。



 今日はデボネアが俺に相談があるといって、冒険者ギルドにやって来た。

 今さら技術的な相談と謂う訳でもなかろうに、何の相談が在ると謂うのだろうか。


「俺に相談って?」


 単刀直入に聞いてみた。


「こいつの事なんだが」


 そういって紹介されたのはホーマーという若いドワーフの男性だった。

 デボネアと一緒に居たので、何となくそんな彼のことだろうとは思っていた。

 そして、いつも通り若いといっても、ドワーフなのでよくわからんが。


「ホーマーのジョブについて知っていたら相談に乗って欲しい」

「知っていたら?」

「溶接工と謂うんじゃが」

「溶接工!!」


 まさか、溶接工のジョブが存在するとはな。


「その様子じゃと知っとるようじゃの」

「まあね。実演して見せる訳にはいかないけど」

「いやかまわんよ。ホーマーにあった仕事を見つけてくれるならな」

「溶接工なら引く手あまただろうに」

「それが、ホーマー本人も溶接がよくわかっとらんのじゃよ」

「あー」


 文明レベルからして、ここにはロウ付けと鋳掛けくらいしか溶接が無い。

 一般的な溶接のイメージはアークやスポットだから、スキルもおおかたそんなところだろう。

 誰も見たことの無い溶接技法で何ができるかなんて、神様もとんだジョブを設定したもんだ。

 俺や水島がこの世界にいることを考えたら、なんとかなると思ったのかも知れないけど。


「心当たりが沢山ありすぎるので、今からでも話をしたいのですが、時間はありますかね?」

「もちろんじゃよ」

「はい」


 ということで、場所をギルドの食堂に移して食事をしながら相談の続きだ。

 何故かオーリスとシルビアもいる。


「まずはスキルで何が取得されているか教えて欲しい」

「抵抗溶接だけですね」


 ホーマーが答えた。

 そうか、抵抗溶接か。


「ただ、抵抗溶接がどんなものかわからないんですよ」

「それもそうだよな」


 どうやって説明したら良いものだろうか?

 一般的にはスポット溶接って言われている溶接なんだが、全く知識のない人に説明するには難しいな。

 俺は少し考えた跡で、両手を平にして重ねた。


「抵抗溶接っていうのはこういうように二枚の重なった金属の板に電極っていう棒を当てて、電気を流して金属を溶かしてくっつけるんだよ」

「電気ってなんですか?」

「そこからか……」


 電気が一般的じゃないんだよな。

 さてどうしたらいいだろうか。


「俺のスキルで金属板を作るから、後でそれを実際に溶接してみようか」

「そうね。まずは目の前の料理を片付けないとね」


 目の前に運ばれてきた料理を食べたいシルビアが、みんなをそう促す。

 同意だ。

 そんなわけで、先に食事をしてから冒険者ギルドの訓練場へと向かった。

 何故訓練場なのかというと、溶接ではスパッタという溶けた金属が飛散するから、燃えやすい物があるところだと危ないのだ。

 前世でも、何度かスパッタ飛びからの火災っていうのを聞いたな。

 火災以外は問題にならなかったな。

 人間の火傷はあまり気にされないのはどうかと思うが。


「さて、じゃあここでやってみようか」


 俺は【ブロックゲージ作成】スキルで板厚2ミリのステンレスを作り出した。


「【抵抗溶接】スキルを発動して欲しいのだが出来るかい?」

「はい」


 ホーマーがスキルを発動すると、空中に銅で出来た電極が二個出現した。

 この電極で板を挟んで電気を流せば溶接完了だ。

 しかし、入力パラメータは結構面倒だぞ。


「条件の最適化っていうのがスキルのオプションでありますが?」


 ホーマーから意外な一言が出た。

 そんなものが出来るなら、前世の時に欲しかった。

 流石は異世界だ。


「最適化してみてくれ」

「はい」


 条件には加圧力、通電時間、電流などがある。

 電極や板厚でそれらを調整して強度をだすのだ。


「いきまーす」


 ホーマーは左右の手でステンレスの板を2枚持ち、それを重ね合わせている。

 それを電極が挟み込み、ヴンという音共に電極が接触した箇所が赤く変色する。

 熱が加わった証拠だ。

 それと同時に溶けたステンレスが火花となって飛び散る。


「キャア」


 スパッタを初めて見るオーリスが悲鳴を上げた。

 あれって何度見ても怖いよね。

 靴の中にスパッタが入り込んだトラウマがあるから、スポット溶接機には近寄りたくないんだよね。


「さて、強度を確認させて欲しい」


 俺はホーマーからステンレスの板を受け取ると、それを剥がそうと引っ張ってみた。

 しかし、板は重なったままだ。


「流石に最適化しただけはあるな。全く剥がれない」


 本来であればタガネでも使って剥がして強度を確認したいところだが、最適化されているので大丈夫だろう。

 スポット溶接の強度確認はナゲット径の測定が一般的だ。

 4√t(板厚)位あれば問題ないだろう。

 条件だしでそれくらいであれば、量産時には3√tを満足できる。

 ただ、それも図面によりけりだけどね。

 当然溶け込み評価もするべきなんだが、俺は硝酸を作る能力はあるが、電気を作る事ができないため、ステンレスの溶け込みは確認できないのだ。

 ステンレスについては、硝酸に浸して電気を流すことで腐食させて溶け込み評価をする。

 その評価基準は溶け込み率は板厚の10%以上で、表面まで達してはならないというものだ。


「ま、これくらいきちんとついていれば問題ないだろう」

「これが俺のジョブの能力か」


 ホーマーは自分のスキルを初めて見て感動しているようだ。

 わかるぞ、俺もそうだった。


「これで何が出来るのよ?」


 その感動にシルビアが水を差す。

 ちょっとは空気を読もうよ。


「金属製の盾を二枚重ねできるかな。分流には注意しないとだけど」

「分流?」

「スポット溶接の不良のひとつだよ。狙ったところ以外に電気が流れて、溶接強度不足になるんだ」

「攻撃を受けた盾が剥がれちゃったら危ないわね」

「そうだろ」

「もう少し詳しく知りたいので、教育していただいても宜しいですか?」

「わかったよ」


 そんなわけで俺のホーマーへの溶接教育が始まることとなった。



品質管理レベル25

スキル

 作業標準書

 作業標準書(改)

 硬度測定

 三次元測定

 重量測定

 ノギス測定

 輪郭測定

 マクロ試験

 塩水噴霧試験

 振動試験

 引張試験

 電子顕微鏡

 温度管理

 レントゲン検査

 蛍光X線分析

 シックネスゲージ作成

 ネジゲージ作成

 ピンゲージ作成

 ブロックゲージ作成

 溶接ゲージ作成  new!

 リングゲージ作成

 ゲージR&R

 品質偽装

 リコール

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