第26話 用語解説3

品質管理部なら知っていて当然な単語を解説


・工程能力指数


 製品のばらつきと公差から不良品の発生率を計算する。

 6σのレンジに対して、この指数がどの程度なのかを確認し、検査頻度を決めるのに使用する。

 cpkという数値が1.33以上になることを求められているが、これは1万個に7個の不具合が発生するということであり、最近では1.67以上を求められることが多くなってきた。

 cpkが1.67だと不良品は100万個に6個であり、これなら全数検査は必要ないとされる。

 何故ならば、納入不良率はppm管理が求められているからである。

 ppmとは100万分の1であり、得意先からの要求は5ppmとか2ppmとかいわれているので、cpkが1.67以上であればその水準であるといえるのである。

 重要保安部品などではcpkが2.0以上を求められることもある。

 数値が未達であれば全数検査が必須。

 コストがかかるので、経営者に嫌われます。

 なお、cpk値の計算には一般的には30個の製品測定データが必要と言われている。

 母数が少ない場合は要求されるcpkは高くなり、母数が多ければ低くなる。

 バックデータを要求されることもあるので、30個以外では100個測定の経験しかない。

 なお、10個程度測定して、20個は嘘のデータを書くサプライヤーが多かったため、人為的な偏りを見つけるプログラムがあるという都市伝説がTier2メーカーではまことしやかに語られている。

 品質管理が厳しく言われている昨今、まさか測定データを水増しする企業があるとは思えないが、気を引き締める為にも、この噂は消えないでもらいたい。



・QCサークル


 品質のボトムアップのために作られるサークル。

 職場の仲間で自発的に集まって、小集団で品質改善を行う。

 自発的にというのがみそで、就業時間中には出来ない。

 残業時間に集まっても残業代が出ない。

 とある世界企業でもそうでしたが、裁判で業務と認定されてから流れが変わりました。

 QC七つ道具や新QC七つ道具を使い、ストーリーに沿って改善を進めていきます。

 地区大会や全国大会があり、そういうところに出場するサークルは、素晴らしい発表になるのですが、中小企業の場合はいやいややっているだけになりがち。

 そもそも教育にかける金がないので、自分で考えられない作業者しかいない。

 結果、だれとくなサークル活動になります。


・ノギス


 寸法測定の測定具。

 キャリパーとも。

 製造業ならほぼ間違いなく見かける測定具。

 落として狂った状態で測定し、多数個不良を作る人が多い。

 一年に三回はそのせいでロットアウトする。

 ロットアウトは全数廃棄ということ。

 測定時に製品に真っ直ぐ当てないと、誤判定する厄介者だ。

 それを悪用して、客の目の前で寸法を合格に見せることも出来る。

 ベテラン品質管理部員になると、1ミリくらいは余裕で誤魔化せる。

 なお、寸法公差は±0.05ミリだったりするので、当然製品としては使い物にならない。



・ハイトゲージ


 スクライバという刃物が付いた凶器。

 殴ってよし、刺してよしのハルバードみたいなやつ。

 一応寸法測定具だか、ベテラン品質管理部員になると以下略。

 罫書き線を入れるのにも使用する。



・三次元測定機


 三次元の測定を可能にした優れもの。

 これが発明されたお陰で、今まで測定不能だった箇所が測定可能になり、多くの品質管理部員を悩ませた。

 接触式と非接触式があり、前者はプローブといわれる測定子を、測りたい場所に当てる。

 後者はレーザーまたは写真によって測定する。

 昔、核開発をしたい国に密輸していたのがばれて、ニュースになった会社があったくらいに、超重要測定機。

 なお、これも人が扱うものなので、2ミリは余裕で誤魔化せるらしい。



・輪郭測定機


 その名の通り針が製品をなぞり、輪郭を測定してくれる測定機。

 針が素直に製品をトレースしてくれるので、寸法を誤魔化す事が出来ない厄介者だ。

 何度か針を手に刺して血が出た。


・表面粗さ測定機


 製品表面の粗さを測る測定機。

 粗さの規格が多数あり、JIS規格の年式によっても違いがある厄介者だ。

 未だに図面の粗さ表記を▽で書く設計者に裁きの鉄槌を!

 なお、この測定機で測定出来ない場合は、表面粗さ標準片との比較でもよいとされ、微妙なキズ深さの製品はこの標準片との比較をエビデンスとして出荷するとの知恵を授かりました。



・顕微鏡測定機


 顕微鏡に測定機能がついてる優れもの。

 コンタミと呼ばれる付着異物を見たりする。

 試料をセットするときに、自分の肌荒れを観察できる。

 レンズが高額で、落下させると後始末が大変。



・投影機


 製品に光を当てて、出来た影を測定する。

 光の量を調整すると、影だけではなく、他の箇所も見ることが出来るが、あまり知られていない。

 自分の感覚で測定しているので、その精度は信用できない。

 とある外国人作業者の測定を後ろから見ていたが、全くの出鱈目だったので、班長に報告したが、班長も測定出来ないという体たらく。

 勿論フィクションです。

 最近では投影機もデジタル化され、自動測定プログラムが活躍しているので、測定方法を間違える事は無くなった。



・蛍光X線分析機


 X線を照射して、製品に含まれる元素を分析する機械。

 ネットショッピングモールで買える。

 名前が格好いいので欲しい。



・振動試験機


 製品に振動を加えて、どれくらい耐えられるかを評価する装置。

 振動がとてもうるさいので辛い。

 あと、破断寸前の箇所は高熱になるので、迂闊に触るとやけどする。

 試験は長時間に及ぶので、ついついスマホのバッテリーが無くなる。

 俺の息抜きの為に有るような試験機だ。

 上司には内緒だぞ。



・塩水噴霧試験機


 塩水を製品にかけ続け、腐食の進行度合いを確認する装置。

 長い場合は数ヶ月連続稼働させる。

 そのため長期休暇が取れない。

 酸を加えて、腐食の無理やり加速させる方法もある。

 試験室には誰も来ないので、俺の憩いの場であるが、最近ばれてしまい監視の目が厳しい。



・引張試験機


 金属の棒を引っ張って、ちぎれる所を確認する測定器。

 鉄系の試料がちぎれる時はとてもうるさい。

 昔は大きなダイヤルがぐるぐる回るやつだったけど、今はパソコンがやってくれるようになって、かなり楽になりました。

 作中のイメージはそれです。

 引張圧縮試験機が在るのも知っていますが、それはまた別のスキルとする予定。



・硬度測定機


 ロックウェル、ブリネル、ビッカースなどの硬さを計測する測定機。

 硬さの規格を統一出来ないものか。

 一通り測定機の取り扱いを学んだけど、仕事で使っているのはビッカースだけです。

 そろそろ測定機の使用方法を忘れそう。

 金属を色々なものでひっぱたいて、その傷の具合から硬さを測定すると思って下さい。

 加工硬化という、金属を加工した際に、元々の材質よりも硬くなる現象を見たり、見なかったりしてます。

 焼入れの強度とか、材料に異材が混入していないかを見るのですが、基本的には破壊試験になるので全数は無理です。



※作者の独り言

測定は測定者の能力によってもばらつくし、意図的に望む数値を出すこともできるので、出てきた数字を鵜呑みにするとひどい目にあいますね。

提出されたデータを信用せずに、常に自分でも測定しないと安心できない。

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