第9話 用語解説2

品質管理部なら知っていて当然な単語を解説



・作業標準書


 標準作業が書いてある書類。

 パソコンが普及する前は全て手書きで作成していた。

 改定するのがとても大変だったので、ビル・ゲイツにみんなが感謝したとかしないとか。

 内容は作業を細かく分解し、解説をしているものである。

 写真と文章がセットになっているが、文字の比率が多くなると大体読まなくなる。

 というか、文字が少なくても読まない。

 誰も読まないのに、何故必要なのかが判らない。

 量産開始時にあればよいだけのイニシエーションとなっているが、不具合が発生すると改定をさせられる不思議ちゃん。

 作る労力と、その効果が不釣り合いで、どうして必要なのか判らない。

 生産工学の偉い教授に、日本の工場の現状を見てもらいたい。

 ネットサービスの利用規約並に、読まない物をどうしてみんなありがたがるのか判らない。

 でも、客先にはそんなことを口が裂けても言えないので、やめる時にうっかりメールを転送ミスして暴露しようとしている品質管理部員多数。

 会社と上司は気をつけたほうがいい。

 今気がついたけど、もはや作業標準書の説明ではなかった。


 気を取り直してここから少し真面目に解説。

 作業標準書とは誰がやっても同じものができるのを目的とした教育用資料である。

 これにより、新人作業者でもベテラン作業者との作業の速度・品質のばらつきがなくなり、安定した品質を維持できるというすぐれものだ。

 書式は会社によってノウハウがあり様々である。

 作業標準書は各工程ごとに準備されるのが望ましく、作業方法と作業や品質の急所、過去のトラブルと謂ったものが記載されているのが普通である。

 その他にも設定タクトや、保護具などの記載があるものもあり、それを見れば新人でもその日から作業ができる(という建前)。

 最近では日本国内に於いても外国人労働者の比率が高まっており、作業者の母国語で書かれたものが必要であると謂れ、作業標準書の作成担当者の頭を悩ませている。

 作品の都合上主人公が品質管理の能力として、作業標準書を作成しているが、会社によって作成部署は様々であり、製造部・品質管理部・生産技術部・製造技術部など、作者の知る限りでもこれだけの部署が担当している。

 細かく書きすぎると文章が多くなり、活用されなくなるが、省略しすぎると重要な事が伝わらないので、常に文章量については揺れ動いている。

 チョコ停などの異常が慢性化しているラインに於いては、作業標準書や異常処置が無視されるようになり、結果として不良品が流出してしまうので、やはり一定の効果はあるのだと思う。

 是非ともすべての作業者が作業標準書を遵守して欲しい。

 因みに、不具合品流出時の対策書で、なぜなぜ分析に作業標準書に記載が無かったと謂うのを多用しすぎたため、最近では作業標準書の改定だけで対策完結とはいかなくなっている。



・ILU力量評価


 力量評価結果表示に於いて、同一の用紙をそのまま使用できる評価方法。

 初心者をIランクとし、一般レベルになるとLランクになる。

 最初はIが紙に書いてあるだけだが、Lランクにランクアップした時に、横棒を追加してLの文字にする。

 更に、指導ができるレベルになるとUランクとされ、今度は右側に縦棒を追加する。

 最近ではOランクというのが追加されて、ILUOという評価をしているところもある。

 選別作業はLランク以上の作業者、手直しはUランク以上の作業者など、異常作業に従事する作業者の妥当性を示しているが、選別手直し作業の為にランクアップさせているのが現状。

 それでも十年以上Iランクの作業者も稀に存在し、客先監査時に指摘を受けたりするのだが、誰にでも作業ができると謂っても、「3σしぐまから外れた作業者をどうしろっていうのですか」と説得できたり、出来なかったり。

 なお、3σというのは工程能力を計算する際に出てくる数値である。

 標準偏差とかの話が長くなるので、異常値だと思って下さい。

 ILO力量評価はあまり一般的ではなく、一部メーカーで使われているくらいで、他所の会社の監査時にはILOの説明から始まるのが常である。

 それぞれのランクに応じた作業観察シートがあり、観察シートの点数が基準値を超えればそのランクにランクアップするようになっている。

 解説していて気がついたけど、結局客観的な評価ではなく、兎に角ランクアップありきで評価していますね。

 親は資格がないのに完成車両の検査をしているので、子もそんな感じになります。

 この物語はフィクションで、実在する人物・団体は関係ありません。

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