第5話 用語解説

品質管理部なら知っていて当然な単語を解説



・なぜなぜ分析


 トヨタが作った不具合の分析手法。

 なぜを5回繰り返して真因にたどり着くようにするのがよいとされるが、必ずしも5回とはならなくてもよい。

 1つ目の何故が次に続くようにする必要があり、繋がりが悪いと上司や顧客の品質管理部に対策書を提出した時に指摘される。

 真因が経営陣にたどり着くこともしばしばあり、顧客に泣きながら相談すると落とし所を提示してくれたりする。

 著者は「真因を潰すためには社長の首を摂らなければなりません。オーナー企業なので、私が解雇される可能性がありますので、御社で雇用してくれる約束があれば、真因の対策を社内にて提案しますが?」と言って、そこまでは求めませんと言われたこともある。

 殆どの企業の対策書には製造原因と流出原因を分析するようなフォーマットがあり、発生源と流出源の対策が求められる。

 作品中の例で説明するなら、スターレットがロープを持たなかったのが製造要因であり、ロープを持たないまま冒険に出たのが流出源となる。

 なぜなぜ分析をするのであれば、


 ロープを忘れた>所持品を確認しなかった>確認するルールがなかった


 となる。

 これを真因から戻って文章がつながれば、なぜなぜ分析としては正解になる。


 確認するルールがなかったから所持品を確認しなかった。

 所持品を確認しなかったからロープを忘れた。


 ここで何故ルールがなかったのかを分析すると、ルールを必要と判断できる人材がいなかったなど、面倒な要因が出てきてしまうので、なるべく触れないようにしたい。

 また、普段は持っていくのに、今回に限って忘れた場合は、4M変化点の確認と分析が要求される。

 4Mとは、人(MAN)、物(MATERIAL)、機械(MASCHINE)、方法(METHOD)であり、この4Mに変化があると不具合が出やすいとされている。

 スターレットは初心者であるならば、人が新人であり、ベテランによるダブルチェックが必要だったのではないかとなるわけだ。



・FTA


 フォルトツリー解析、FAULT TREE ANALYSIS。

 トップ事象に対して、対策が取られているかどうかを解析する手法。

 スターレットのロープを忘れたことを例に取れば、


 ロープがない  ――買い忘れ

         ――落とした

         ――持っていかなかった


 となり、更にその下位の事象が出てきて、それら全てが対策されているのかを確認させられる。

 はっきり言って、不具合を出したら金を払うので許して欲しいレベルでめんどくさい。

 FTAからのなぜなぜ分析を要求してくる奴は大体くそ。

 実際には全て対策すると、今の金額ではとてもじゃないが受注できないという矛盾が生じる。

 これが出来ても社内じゃ評価されないので、不具合対策書に書ける奴が殆どいない。


・FMEA


 故障モードと影響の解析、FAILURE MODE AND EFFECT ANALYSIS。

 工程設定時の最大の敵。

 工程FMEAと設計FMEAがあるが、設計者は大体無視する。

 工程FMEAを真面目にやったら、コストに合わないと却下され、量産が開始されると懸念された不具合が発生し、結局客の信頼を失って、同額のコストが掛かるという不思議な解析手法。

 影響の厳しさ・頻度・検出可能性を点数付けして、掛け算した数値が100以上なら工程設定を見直しする必要があるが、大体100以下になるように点数が下げられる。

 0.1ミリの寸法差がある製品を目視検査するという工程が、30点だったときには、この会社もうダメだと思いました。

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