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「……なあ、小林」


「なんですか、隊長?」


 二人の目の前には、「もんじゅ」の建物本体の無事な姿があった。しかし、周辺の煙突やクレーンなどはさすがに爆風で折れ曲がったり倒壊したりしていた。彼らの87AWも、砲塔後部のレーダーは見事にひしゃげており、無線アンテナもどこかに吹き飛んでいた。


「アレ、途中で明らかに動きが鈍くなったよな。何が起きたと思う?」


「自分が思うに……燃料切れですね」


「燃料切れぇ?」天田二尉が拍子抜けしたように聞き返す。


「そうです。ヤツもそれは分かってて、だから衝突のリスクを冒してまでもF-16を墜として無理やり包囲を突破したんでしょう。AIもエネルギーがなければただの鉄くずですからね。だけど……これはやはり、米軍の手柄じゃないですかね。連中が寄ってたかってヤツをさんざん追い回したせいで、ヤツも予想以上に燃料を消費したんだと思います」


「そうだな。これは俺たちだけの勝利じゃない。ヤツと戦った人間みんなの勝利だ」天田二尉が朗らかな笑顔になる。


「そうですね」小林一曹も笑みを作ってみせるが、それはすぐにその顔から消えてしまう。


 今日、人類は初めてAIとの本格的な実戦を経験し、勝つことができた。しかしそれはまさに薄氷の勝利だった。X-47Bの、無人機ならではの圧倒的なパフォーマンスを目の当たりにした彼は打ちのめされていた。


 人間は空を舞台とした戦闘の主役を、いずれAIに明け渡すことになるのかもしれない。


 暗澹あんたんたる思いで、小林一曹はいま一度、青空を見上げた。

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