ペット
アール
ペット
「やあ、これは可愛らしいお猿さんですね」
とある研究所の一室。
所長である博士に招待された友人の男は、そこで見せられた一頭の猿を見てそう呟いた。
首輪がちゃんと付けてあり、一応逃げられないようにしっかりと対策はなされているらしかった。
「そうでしょう?
しかしね、ただ可愛いだけじゃないんですよ。
よく見てて下さい。
……おい、お客さんに挨拶しろ」
そう言って博士は、猿に向かって指を鳴らした。
その合図と共に、猿は口を開く。
「コンニチハ、オキャクサン」
その様子を見て、男は目を丸くした。
「こ、こいつは驚いたな。
猿が口を聞くなんて。
一体これはどういうことです?」
驚く男の様子を見て満足した博士は答えた。
「少し猿の遺伝子をいじって作ったんですよ。
素晴らしいでしょう?
この種の猿を作り上げるのに、10年もの歳月をかけたのですから」
「なんと。この猿は博士が苦心して作り上げた産物だったのですね。
ちなみに、知能はどれほどのものなのですか」
「こいつの遺伝子の中に、私の遺伝子も混ぜておきましたからね。
ほぼ私と同等、もしくはそれ以上の知能を持っているかと思われます。
これからもっともっとこの猿は知識を吸収し、賢くなっていくでしょう。
本当に成長が楽しみです」
「それはすごい。つまりこの子は、私よりも賢いということになりますね。
見た目は普通の猿なのになぁ……」
男は感心しながら、家へ帰った。
しかし羨ましがっているわけではなかった。
自分より賢い猿なんてものが近くにいては、なんだか気持ちが落ち着かないだろうからだ。
だがペットというものに憧れを抱いた男は、早速ペットショップへと向かい、可愛い犬を購入した。
そしてある日の早朝。
その犬を早速散歩させていると、偶然あの博士と道ですれ違った。
「やあ、貴方もペットを購入したのですか。
やはり、ペットとする散歩は楽しいですね。
…………それでは、私たちはこれで。
ほら、いくぞ。 早くきなさい」
そう言ってまた歩き出した彼らを、男は黙って見送った。
言葉を失ってしまっていたのだ。
何故なら首輪をつけられた博士を、猿が散歩させていたのだから。
ペット アール @m0120
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