3.神父と噂

 家で待っていた妻は、見送りから帰らない神父を心配していた。最初こそすぐに帰って来るだろうと悠長に構えていた。それもそのはずで、神父はこの日になるといつも買い物をしていて遅くなる。だから気にする必要はないと思った。

 しかし、さすがに丸一日帰らないとなると話は違う。妻は子供を抱えながら、近隣の家をかけまわったが、結局見つかることはなかった。

 

 どうして、神父が姿をくらましたのかは、妻を含み誰にもわからなかったが、息子の刻印が関係しているのではないかと噂になった。

 しかし、神父のことを慕っていた街の人達は、神父がそんなに薄情者ではないことを知っている。それに、漁師達の証言からも神隠しにあったのではないかと結論づけた。

 それからというもの、行方不明になった神父の話は有名になった。最後に神父と話した漁師の頭は自分のことを責め続け、いつも神父の妻と子供に世話を焼いている。

 

  それから、月日はながれた。神父がいなくなってからというもの、行方不明が増え始めたのだ。その原因はわからないが、神隠しが噂されている。

 なんでも、この街には存在するはずもない路地が稀に現れる。その路地は心に余裕がない者の前に現れ、いつも形は違うらしい。

 ただ、1つだけ同じ部分がある。それは最後に繋がっているところは同じところだということであった。

 この噂は、街の住民を恐怖に陥れた。別の街から来た青年が流した噂ではあったが、街の人達の証言からも信憑性は高いからだ。それからというもの、街で見たことのない路地をみた者は、絶対に入らないようになったという。

 

 結局、噂は噂である。いつの間にかなかったかのように誰も話さなくなった。しかし、神父のことだけはいつまでも忘れられることはなかった。

 

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