永劫回帰のレヴェレーション

真白 悟

始まり

モノローグ

 いつの頃だったか、手の甲に謎の印を持って生まれるものが現れた。

 彼らはみんな不思議な力を持って生まれる。

 あるものは火を操り、またあるものは常人とは思えない怪力を持っていた。彼らは人とは違う能力を持っていたため、悪魔や魔女と罵られることが多かった。それ故に、彼らとその家族は迫害され、村から追い出されることもあった。

 しかし、その力に目をつけた者達がいる。その者達こそが、各国の王達だった。

 王達は彼らの力を借り、戦争を行った。戦争を行う代わりに、功をあげた者にはそれなりの地位を与えた。

 彼らが戦争に出ることによって、大量の兵と武器が必要なくなる算段で、その目論見は成功した。だが、彼らは世界中で活躍したため、戦争の長期化が進むこととなる。

 

 それから、何年もの時が流れ、謎の印を持つものはそのほとんどが戦争屋として活躍していた。

 そんな時、信者が最も多い宗教に新たな経典が見つかった。その経典は後に、『悪魔の黙示録』と名付けられることとなる。

 経典の内容は今までの神の教えを冒涜するもので、経典として認めその内容を公開するかで論争となった。

 論争は熾烈を極めた。その大きな理由として、神への冒涜である永劫回帰を認めるような内容だったことがある。なにより、永劫回帰する対象やその理由がまずかった。

 経典に書かれた永劫回帰とは、神が人へ与える罰だったのだ。

 神が人に罰を与える理由としては、アダムとイヴが犯した罪を思い浮かべるだろう。しかし、そうではない。人が犯した罪で最も大きなものは、神へと反逆する力のことだ。

 その力こそが、彼らのもつ特殊な力、それも悪魔によりもたらされたものだった。

 悪魔は常に人を誘惑し続ける。それは7つの大罪だけではなく、もう1つの罪、それは傲慢にも憤怒にもつながる圧倒的な力を得る貪欲さ。

 力とは悪魔より授かる穢れそのものなのだ。

 その力を得るために3つ誘惑にのり、悪魔を受け入れる。それこそが8つ目の罪、『黙示録の罪』だった。その罪を犯した者の手の甲には、獣の刻印が刻まれる。

 刻印を刻まれた者達は、否応なく永劫回帰の罰が与えられた。

 永劫回帰とは、全く同じ生を繰り返すこと、それすなわち、同じ罪を永遠に繰り返すということだ。

 神は彼らを許すことは永遠にないと言っているも同然で、赦しが存在しない。

 そのことが、印の持ち主達に知れることは非常にまずかった。もし知られたならば、獣の刻印を持つ者達は教会に牙を剥くだろう。

 なにより、神への冒涜とされてきた永劫回帰を認めることは、民による神への信仰が揺るぎかねない。それだけは絶対に避けなければならなかった。

 秘密を隠すことほど難しいことはない。特に秘密の保持者に恨みを持つ者がいた場合は隠す何度は跳ね上がる。

以前から教会に不信感を抱いていた刻印を持つ者がいた。彼は戦争を嫌い、静かに本を読んで暮らしていた青年だった。

 

 名前を『ダンダリオン』といった。

 

 ダンダリオンは常に本を読んでおり、小綺麗な格好で端正な顔立ちだが、全く感情を表さないことから皆に気味悪がられていた。

 そんな彼は誰も知らない秘密があった。人の心を少しだけ読めるということだ。彼はその力を使って、教会が黙示録を隠していることを知った。

 彼は黙示録を明るみに出すつもりなど一切なかった。ただ、黙示録そのものに興味が出ただけだった。

 最初こそは理性によって保っていたが、ついには耐えきれなくなり『悪魔の黙示録』を盗み出してしまった。もちろんだが、彼が盗み出したことは誰も知らない。

 ただ、盗まれたために世界中にその存在が明るみになってしまった。

 

 それからは悲惨だった。

 獣の印を持つものの一部は、自分が知らぬ間に大きな罪を犯しており、それが決して許されることがないと知ると、枷が外れたかのように暴れ出した。

 暴動者の数は年々増え、教会だけでは抑えきれなくなった。

 だが、獣の刻印を持つ者の中には教会に味方する者もいた。

 その者達は力を持たぬ民達に聖者と呼ばれ、親しまれ、いつの間にか刻印が変貌し神の御使いとして扱われた。反対に暴動者達は民達により悪魔と呼ばれるようになった。だがしかしそこには本来は一切の隔たりはなかったが、全ての真実はたった一人によってもてあそばれた。

 それから半世紀以上の時が流れ、生まれつき聖者の者、生まれつき獣の刻印を持つものでわかれるようになり、善い行いをして聖者へと変貌した刻印もちがいたことは、たった2人の心に沈められたのだった。

 

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