上原さんはチョークスリーパーに沈む

黒巻雷鳴

上原さんはテクニシャン

 百合カップルと書いて〝人類の宝〟と読む──


 昔の偉い人の格言らしいけど(えっ? そんな人はいないって? そこのキミ、おくちミッフィーだゾ☆)、あたしはその金言を心の支えに、きょうまでの約16年間のうち、ざっくり2時間半くらい生きてきた。


上原うえはらさん、やめなさい」


 なぜかみんな、あたしのことを上原と呼ぶ。きっと苗字が上原だからに違いない。

 たまに同級生や下級生から〝エロ神さま〟って呼ばれるけれど、正確には〝女神さま〟なのでここで訂正させてください。


「……上原さん、やめなさい。聞こえてるんでしょ? 何度も言わせないでちょうだい」


 さっきから日本語っぽい言葉で話しかけてくる眼鏡をかけた超絶セクシー・ナイスバディ・フェロモンむんむん美女は、あたしのクラスの担任でもある大日向おおひなたのぞむ先生(32)だ。


「上原さん! 授業中なのよ!? いいかげんにわたしの胸を背後から揉むのをやめてちょうだい!」


 たしかに、黒板に向かって難しい数式を書く先生の美乳を授業中に白いブラウスの上から揉みまくっている変質者はあたしだ。


 だって、しかたないでしょ?


 そこにオッパイがあるんだから──


「ウフフフ……ごきげんよう、ひなむー先生(※1)」


 怒りに震えている背中から離れるのと同時に、きょうもあたしはブラジャーのホックを慣れた手つきで華麗に外す(※2)。


 と、次の瞬間──


 その場できびすを返したひなむー先生は、左右のエルボー連打からの強烈なローリングエルボーであたしを完全KOしていた。




※1……大日向 望(32)の愛称。本人非公式である。

※2……オフィスラブ定番の挨拶。マンネリ化するふたりの関係に刺激をあたえる意味もある。


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